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 今、にわかに脚光を浴びている「教育勅語」。渋谷の若者17人に聞いたところ、中身まで正確に知っていたのは0人で、中には「教育勅語」そのものが読めない人もいた。

 「大辞林」第三版(三省堂)によると、教育勅語とは、教育の基本方針に関する明治天皇の言葉(勅語)のこと。

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 明治天皇の命により、当時の法制局長官・井上毅らによって起草、1890年10月30日に発布された。大日本帝国下の学校教育の基本方針や道徳心の基本理念を明治天皇の言葉としてうたったものだ。「12の徳目」を中心とするその内容は、親孝行や夫婦円満、兄弟仲良く、友達を信じ、勉強して職に就き、知識を養い才能を伸ばそうなど至極真っ当な内容が続くが、11番目には「法令を守り国の秩序に従いましょう」、そして12番目には「国に危機が迫ったら力を尽くし、それによって永遠の皇国を支えましょう」という一文がある。日本が戦争に突入していく中、忠君愛国が国民道徳として強調され、子ども達に教えこむために利用されてきたという側面もある。

 戦後、天皇主権と神話に基づく国家観は主権者である国民の人権を損なうとされ、日本民族中心の教育の誤りを徹底的に払拭が目指された。教育勅語も軍国主義を彷彿させるものとみなされ、1948年の国会で排除・失効確認の決議がされて以降、公の場で目にすることはなくなっていった。

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 森友学園との関係を追及されている稲田防衛大臣は国会答弁で教育勅語について「日本が道義国家を目指すという、その精神は今も取り戻すべきだというふうに考えております」と発言。公明党の井上幹事長は「誤解を招かないように」と苦言を呈している。

 森友学園騒動で、およそ70年ぶりにクローズアップされた教育勅語は、今の道徳教育に必要なのだろうか。

 森友学園系列の「塚本幼稚園」で、園児たちが教育勅語を暗唱していることについて東京家政大学の走井洋一教授(教育学)は「かなり特殊な事例であることは間違いない。現場でああいうこをしている所はほとんどない」と話す。

 コラムニストの河崎環氏も「子どもに暗唱させているのは気持ちが悪いと思う。児童を真っ直ぐに整列させて話を聞かせるため、児童を統制するために使っていた。まさに当時の軍国主義的なもの。明治天皇を頂点に置いて、末端の下々の者まで統制を行き渡らせるという明治政府の意図があった」と厳しく批判。

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 さらに「多くの人は、さらっと現代語訳で読んで"普通に良いことを言っている"と思っている。確かに1から11までは現代語訳で読むともっともなことを言っています。しかし、皆さん本当に原典にあたっているのか。そしてそこにちりばめられているとんでもない、軍国主義的なフレーバーをきちんと感じ取っていらっしゃるのかな、というところは疑問に思います」とした。

 これに対し明治天皇の玄孫で作家の竹田恒泰氏は「原典を読んでいますか、という言葉はそのままお返ししたい。読み解くには高度な文語の知識が必要で、作られた時代背景も考えないといけない。辞書的に翻訳しても意味は取れない。相当日本の歴史に精通した知識がないと意味を理解するところまでいかない」「仁徳天皇は国民が不幸になったら全て天皇の責任だとおっしゃった。天皇は国民の幸せを祈る、国民はみんなで力を合せて国を支えようというのが日本の国体であって、天皇一人のために一億人が死ねばいいということを言ってるわけではない」と指摘。

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 そして「12の徳目のなかで最も重要なのは1番目で、親孝行なんですね。"人間として親孝行は必ずやりなさい"というところから始まっている。12番目の"国に尽くせ"というところばかりが注目されがちですけれど、いざ国が危機に瀕したら国のためにみんなで力を出そうよ、なんて世界中で当たり前の事。憲法に国防の義務を書いている国なんていっぱいありますから。これが世界の標準ですよ」と反論、「教育勅語は道徳の根本規範。精神統一ではない。戦訓や国家総動員法と勘違いしている」「今、道徳教育の重要性が高まってきている。教育勅語を廃止決議して、教育現場から追い出したツケがここに出てきている」。

 現在、小中学校における道徳教育はどのようになっているのだろうか。昭和33年に始まった道徳。最新の教材は平成26年度から使われているものだ。小学1,2年生で学ぶのは、規則正しい生活。お友達と仲良く、命を大切に、さらに人の気持ちを考えて、してはいけないことを学ぶ。高学年になると節度、節制や自立と責任、自他の生命の尊重など、社会で生きる一員としての役割や意識を学習する。中学校では「この学級に正義はあるか」というテーマでいじめについて議論。日本の伝統や文化を知り、日本人としての自覚を持つことを学ぶ。なお、文部科学省は道徳の授業で愛国心を評価することはせず、特定の考えを押し付けないと定めている。

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 走井教授は「教育勅語のなかに書いてあること全てが間違っているとは思っていない。ただ、どのように使われてきたのかという話が重要だと思う。森友学園では暗唱させていたが、道徳教育というのは覚えたものをそのまま再生するという知識教育とは少し違う。虐待されている子どもに親孝行しなさいと言っても、なかなかそれは受け入れにくいと思う。つまり、社会全体で共有されている価値としては言えるが、それを覚えたから道徳性が高まるとは言いにくい。教育勅語には良い面も確かにあり、戦前の修身教育が良くできていたと評価する研究者もいる。ただ、今の道徳の教育のトレンドからいうと、特定の価値観を子ども達に覚えさせて満足するという使い方はなかなか難しいのではないか」とコメント。

 これについては竹田氏も「暗唱するかどうかはさして問題ではなくて、ここに書かれているようなことを子どもたちにちゃんと教えられるかどうか」とした。(AbemaTV/AbemaTIMES)

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