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 21日、"テロ等準備罪"を新設、"共謀罪"法案とも言われる組織犯罪処罰法改正案が閣議決定され、政府はただちに国会に提出する。

 東京オリンピック・パラリンピックを3年後に控え、政府・与党は「国際組織犯罪防止条約」の締結のため、今回の法案整備を急いできた。"共謀罪"法案は、小泉政権時代に3度国会に提出されるも、野党の反対ですべて廃案になった経緯があり、今回も捜査当局の判断次第で一般の人が処罰される恐れがあると批判されてきた。

 安倍総理はオウム真理教を例に挙げ、「例えばオウム真理教が、当初は宗教法人として認められた団体でありましたが、犯罪集団に一変した段階で、その人たちは一般人なんですか。一般人であるわけないじゃないですか。犯罪集団に一変したものである以上、それは対象となる」と反論、あのような"化学薬品テロ"に対し、現行法で対応できるのか、ということも争点の一つとなっている。

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 法案に詳しい倉持麟太郎弁護士は、「ものすごく簡単に言うと、今までは物を取るとか、刺すといった"行為"、あるいは道具を買うといった"準備"がないと処罰できなかった。今回は、その一番手前の"合意"の時点で罰則が与えられるようにするというもの」と説明、「その合意、共謀をどうやって検挙するかといったら、LINEグループやメーリングリストなどを監視しなければならなくなり、警察の目や耳が社会により入ってくる監視社会化が進むというデメリットがある」と指摘。ジャーナリストの堀潤氏も「すでにアメリカではテロ対策のためならということで、インターネット企業が当局へのログなどの提供も始まっている」も話す。

 ちょうど22年前に起きた、オウム真理教による地下鉄サリン事件。実際に当該車両に乗車、被害に遭った経験から、サリン事件についてのドキュメンタリーを撮影している作家・映画監督のさかはらあつし氏は事件発生時をこう振り返る。

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 「六本木から電車に乗ると、すぐ左側に新聞に包まれたビニール袋があって、そこからシンナーみたいなものが延びていた。疲れていたし気にしない方なので、そのまま座ろうかなとも思ったんですが、他の乗客が見てくるので、1両目と2両目の連結部分のところに行って、前日夜にオウムの幹部が逮捕されたという記事を読み始めた。その記事と、少し前に読んだ松本サリン事件の河野さんが冤罪だったという週刊誌の記事の記憶と、ビニール袋が一瞬繋がった。それで念のために二両目に移ると後ろから来たピンク色のマタニティドレスを来た女性が脂汗をかいていて、痙攣している人もいた。次の神谷町の電車が止まると、1両目の方たちが痙攣した人たちをホームに運んでいた。停車時間が長いなと思っていると、"築地で爆発事故"というアナウンスがあったので急がなければと思い、タクシーに乗ろうと改札を出ようとしたあたりで、視界がだんだん暗くなりだした」。

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 被害者の救護に当たり、自身も被害に遭ったという医師の勝俣範之氏。「八丁堀駅のプラットフォームに人だかりが出来ていて、駅内のアナウンスで、お医者さんいませんか、とのことだったので、助けに行ったところ、50代くらいの女性が泡を吹いて倒れていた。そこで私は人工呼吸をし、心臓マッサージしたあと、周りの人たちと救急車に乗せた。すると周りの人たちが続々と倒れていった。おかしいなと思っていたら、自分も目の前が暗くなってきて、手足が痺れてきて、歩行もできない状態になった。おそらく女性の衣服についていたサリンに触れたせいではないか」と生々しく証言した。

 そんな生死に関わる体験をした二人だが、両手を挙げて共謀罪法案について賛成、というわけではないようだ。

 さかはら氏はアレフを取材した経験から「日本を平和に維持するためには必要かもしれない。しかし重要なことは、もっと根本的なところにあると思う」と話す。勝俣氏も「監視を強めるだけではテロは無くならないと思う。なぜテロリストを生んだのかも突き詰めてほしい。地下鉄サリン事件の犯人には、優秀な慶応大学のお医者さんもいたんですよ。すごく真面目な先生で、患者さんを救いたいと取り組んでいたが、いつしか社会が悪いんなら、それを治そう、良くしようとああいうものにはまっていってしまった。そういう人たちを孤立させない。テロリストになろうと思って生まれてきた人はいないはずだ」と訴えた。

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 ジャーナリストの山路徹氏は「共謀罪では冤罪のリスクが高まるという批判もあるが、根本的にテロ対策の基本は、疑わしくない人間を疑うこと。無実の人のプライバシーも侵害されるもの。テロを未然に防ぐためということで、熱心なイスラム教徒でモスクに通っている人を監視していく中で何か端緒がつかめるんじゃないかという風になっていく」と指摘する。

 そして「情報収集の能力、地域社会との密接なつながりなどが重要で、共謀罪がなかったオウム真理教事件の時でも、きちんと情報収集をしてオウムと向かい合っていたら摘発できたと思う。そもそも、今回批准しようとしている国際組織犯罪防止条約はテロを想定していないが、テロや安全、セキュリティという言葉が使われれば国民は納得してしまう。何か目指す社会があるのではないか」と話した。

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 堀潤氏も「"堀はいつか共謀罪で逮捕されるかもな"とのコメントが寄せられた。今は笑えるけど、言われた方はどこか怖くなる。その怖さの連鎖がいつのまにか沈黙を生む」と話し、森友学園や豊洲の問題にばかりクローズアップしがちなメディアに対し、共謀罪の問題にももっと関心を向けるべきだとした。(AbemaTV/AbemaPrimeより)

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