■テクノをBGMに、極彩色に照らされる仏像
福井県の浄土真宗本願寺派「照恩寺」で始まった新たな法要の形、"テクノ法要"が話題を呼んでいる。考案したのは、17代目住職の朝倉行宣氏。「作品として見てもらいたい訳ではなく、仏様の教えに触れるきっかけにして欲しい」と話す。
テクノを使う理由は「YMOを最初に聞いた時に、この音はこの世のものではない、すばらしい、かっこいいと思ったから」。実は朝倉氏、20代の頃はDJとして活躍しており、その時の経験を活かして音も映像も自身で制作。照明器具は手作り。線香の煙でスモーク効果を演出、Perfumeのファンで、舞台装置を参考にしているという。
「昔から極楽浄土の光を表現するため、金箔や彫刻の技術を使っていた。テクノ法要はそれをちょっと今の機械を使って"アップデート"したにすぎない」(朝倉氏)。
ただ、「自分がやろうとしていることが受け入れられるのか、拒否されるか。実際にやってみないと分からなかった」と、始める前は悩んだという朝倉氏。実施を決意したのは、5年前、尿管ガンになったのがきっかけだったという。ステージ0で転移もなかったが、病を得て、人間の理を強く意識したのだという。
「私も死ぬ存在であることは、教科書的には理解していた。あらためて“自分の死”というものを考えた時に、お浄土を思う気持ちが自然にわいてきた」。
さらに「とにかく何かやりなさいよ」という、妻・和代さんの一言も後押しになった。
「何かしないと始まらないかなという思いがあった。私が背中を押したとは思っていなかったので、聞いてびっくり」(和代さん)
「仏教に注目してもらうには良いイベント」(長男・証宣さん)
「お経の声が聞きづらいという話があり、僕もそこが1番気になる」(次男・信さん)
朝倉氏の心配をよそに、家族も見守る中、昨年の法要は大盛況だった。
照恩寺の門徒である酒井英之さんは「今まで見たことがない色々な人がいて、思っていた以上にみんなが受け入れていた」と振り返る。瀧英晃さんは「素直に良かったと思います。仏様をこんなにずっと見ながら、お経を聞くことは今までなかったので」。
曹洞宗の僧侶・石田芳道氏も「かっこよかった。お袈裟にヘッドセッド、渋いですね。お坊さんの後ろ姿だけ見ながら1時間耐えろというのは酷な話なので、興味を持ってもらうために色々な装飾も見てもらうのはすばらしいことだと思う」と評価。「どのお寺もテクノ法要をやれば人が来るというわけではなく、朝倉さんの過去があったから、こういう立派なものができている。自分の人生を出している感じですばらしい。それで人が集まってくるのは住職さんの力だと思う」と話した。
■「お坊さんの仕事は"仏様の宣伝マン"」
大分県の真言宗「金剛宝寺」では、お墓参りや法事をインターネットで生中継するサービスを3月27日から始める。仕事で忙しい、子どもの世話、体調の問題などでなかなかお墓参りに行けない人向けだ。
「今まで熱心に来て頂いていた方々の高齢化が進み、亡くなり、(寺に来る人が)増えてこない現状を目の当たりにした」と、"宗教離れ"を感じていたという朝倉氏。
統計数理研究所「日本人の国民性調査」によると、"宗教を信じると答えた人"は今から60年ほど前が35%に上っていたのに対し、一昨年の調査では28%に現象。NHK文化研究所「日本人の意識」調査でも、宗教行動として礼拝・布教を行っている割合は、1973年に15.4%、2013年に11.4%と減少している。墓地数も減少しており、厚生労働省「衛生行政報告例」によると、1913年には100万4000カ所だったが2013年には86万2000カ所になっている。
石田氏も「皆さんが思っている以上に、若い人はお寺に興味がない。お寺と神社の違いが分からない人の方が多い。"坊主バー"にもたくさんの人が来てくださるが、御朱印を集めているという人でも"明治神宮ってお寺ですか、神社ですか"と言う」「檀家さんが途絶えてしまうお寺もある。特に地方は厳しい。私のお寺も今年の正月三が日は(参拝に来たのが)トータルで4人という絶望的な数だった。何か発信していかないと。待っていたら来るという時代は終わった」と話す。
BuzzFeed Japanの古田大輔編集長は「アメリカなどには"メガチャーチ"がある。何千人も入るホールで、ロックやダンスミュージックを流しまくって、新しいキリスト教として人気を得た。人気の音楽を舞台装置にして、新しい信者の方を集めるというのは、世界的に見ても普通のことだと思う」とコメント。
石田氏は「お坊さんたちがファッションショーをしたりもしている。イケメン僧侶を扱った『美坊主図鑑』という本も出た」と紹介、石田氏自身もお坊さん仲間と"坊主バンド"を組んでいて、お釈迦様の誕生日である4月8日にワンマンライブを企画しているという。
朝倉氏がクラウドファンディングでテクノ法要充実のための支援を募ったところ、ネット上で話題になった。「お坊さんの仕事は"仏様の宣伝マン"。アップデートはコンピューターのソフトウェアと同じで、尽きることがないのでその感覚をずっと持ち続けたい」(朝倉氏)
(AbemaTV/AbemaPrimeより)
(C)AbemaTV