"テレビ界のアカデミー賞"とも言われるエミー賞を受賞した、「Born This Way」というアメリカのテレビシリーズがある。カリフォルニアの支援施設に集ったダウン症の7人の若者が友情、恋愛を通じて成長し、夢を叶えていく姿を追った作品。登場する人々がダウン症を"ひとつの個性""違い"と捉えていることが印象的だ。
タイトルは日本語で「これが私の生きる道」。3月21日から日本でも放送が始まった。ちなみに、この「3月21日」にも意味がある。ダウン症の原因が、21番目の染色体が3本(通常は2本)であることにちなんだ、「世界ダウン症の日」なのだ。
この作品のもう1つのテーマが"家族からの惜しみない愛情"だ。登場人物・メーガンの母親は「私は娘が生まれて以来"メーガンの母親"という存在です。娘に命をささげると決心して生きてきました。娘に最高の人生を送らせるのは私の責任です」と語る。
もう一人、作品に登場するアッシュモア・英玲奈さんは、日本生まれの30歳。日本人の母親とオーストラリア人の父親を持ち、世界ダウン症の日に国連でスピーチを行い注目を集めた。英玲奈さんの将来の夢は歌手。他にもオープンカーに乗ってボーイフレンドを迎えに行く、焼菓子職人になるという夢を語り、「自分の能力を世の中に示していきたい」と話した。
英玲奈さんの母親は日本での公開について「30年たってやっとこの日が来たのかなという気持ちがしています」と喜びを語る。さらに、ダウン症に対する日米での感覚の違いについて「アメリカでは普通に社会の中でお会いすることも多いですし、キリスト教社会だからなのか、社会全体で守っていきましょうという感じ。私自身、障害を持った子どもを産んだことを隠すような(気持ちがあった)。社会が認めていないというよりも、その方が強かったかもしれない」と当時のことを振り返った。
■龍円愛梨さん「日本でも見方が変わってきた」
「日本でも見方が変わってきたと思います。笑顔で返してくれる人が増えてきた」。
元テレビ朝日アナウンサーの龍円愛梨さんも、ダウン症の息子を育てるママだ。3歳になるニコ君を伴ってパレードやイベントに参加するなど、社会におけるダウン症への理解を促進すべく、積極的に活動している。
龍円さんは日米の違いについて「日本では違うことに対して壁を設けるような、区別するようなところがある気がします。アメリカは違うということに対して受け入れて、さらに社会の一部として生かしていこうというところがあります」と話す。また、ダウン症に対しても「障害があることを単にかわいそうなことだと思っている人が多いのでは。Born This Wayの登場人物たちも、葛藤を抱えてはいると思いますが、本当に楽しい若者たち。人生を豊かに生きていることを知ってもらいたいと思います」と訴える。
■個性を見極め、対応するアメリカの公教育
そんなアメリカには、「IDEA法」(個別障害者教育法)という法律がある。0歳から21歳までの発達に遅れがある子どもに対し、ほぼ無償で教育の提供を保証する法律だ。「IEP」と呼ばれる個別の教育計画を立てることが定められているのも特徴で、学校職員やスクールカウンセラーなどの専門家が会議を開き、一人ひとりの計画を作る。そこには両親も加わり、子どもの現状を把握しながら、次の目標を決めて達成までサポートしていく。
これらの制度は、落ちこぼれさせないことを目的として、一律に対応するのではなく一人ひとりの個性を見極めた計画が立てられ、学べる環境が可能な限り整えられていくもので、実にアメリカの公立学校に通う12.9%がこの恩恵を受けているという。龍円さんによると、医学的な診断が付くようなもの以外にも、言葉や算数など、何かの分野で発達の遅れや問題がみられる子どもをサポートしているのだという。
「私の息子もIDEA法の恩恵にあずかりました。0歳から早期療育というのが始まります。言葉の発達を促したり、運動面の発達、認知面でのサポートなどがきめ細やかに与えられます。グループ療育では、他のご両親とコミュニケーションをすることで、親も心の面ですごく安定して育児ができます」(龍円さん)
■「統合保育」がもたらす効果とは
文京区にある「ひよこ教室」では、ダウン症など障害のある子どもと、そうでない子どもを一緒に保育する「統合保育」を行っており、1歳半から就学前までの、およそ14人が通っている。
「ひよこ教室」の相川洋子さんは「障害のある子どもだけではなくて、健常の子どもからも良い刺激をもらいたい」と話す。
実際、ダウン症の子どもの母親は「家ではずっと私の手を持って、2人で(スプーンを持って)食べてしまいますが、ここだと不思議なことに1人で食べています」と話す。他にも、マネをすることで着替えができるようになった、色々な遊び方ができるようになった、という声もあった。
障害のない子の母親からは「逆に気付かされたというか、助ける・助けないではなく、区別なく一緒に遊べるのだなと。そういう風に、学校でも色々な子と一緒に学んでいけたらいいなと思います」と話す。
龍円さんも、「障害のある子どもとない子どもが一緒に育つことによって、受け入れて、どうやって手を貸してあげるかを学んで社会に出ることが重要だ」と話している。(AbemaTV/AbemaPrime)