「あと5日後には社会人になるんだという気持ちで準備を進めていましたし、そういう思いでいたので…この先どうしたらいいの、って…。先が見えない状態で、どうしたらいいのか分からない気持ちでいっぱいでした」。
経営破綻した格安旅行会社「てるみくらぶ」が27日、入社予定だった約50人の内定者を本社の近くに集め説明会を開いた。今回の経緯を説明するとともに、全員の内定取り消しを通告。しかし、内定者の中には、すでに地方から東京に引っ越しており、家賃を払えない可能性がある人もいるという。
そんな中、28日、宿泊業(旅館業)の業界団体、財団法人「宿泊施設活性化機構(JALF)」がFacebookに「社会貢献の一環として「とりあえず引っ越してしまって困っている」方々も含め、選考を行わず内定を出します」という異例のメッセージを投稿、注目を集めている。
救いの手を差し伸べた宿泊施設活性化機構は、業界に関係する法令の改善を国に提言する政官広報や、収益向上のノウハウを業界内でシェア、労働生産性と収益を上げていくことが主な業務。理事には建築家の隈研吾氏、星野リゾート代表取締役社長の星野佳路氏、放送作家の小山薫堂氏、東京都議の塩村文夏氏など著名人も数多く名を連ねている。「レベニューマネジメント賞」という、高収益性を含む合理性を実現した宿泊施設を対象にした賞を設けており、昨年はAPAホテルに授賞した。現在、業務委託も含め、15名前後の人が働いており、昨年は新卒採用を実施したが、今年の採用はなかったという。
■「観光業界全体として責任を取らなければいけないという思いがある」
「観光業界の中枢にある宿泊業界の広報団体として活動していて、困っている人に手を差し伸べるのも一環かなと思っています。去年の熊本地震の時には、被災された方々を宿泊施設に無償で収容するという仕事もやっていて、困った時に宿泊業界として働くというのは当然のことかなと思っています」。
事務局長の伊藤泰斗氏はそう話し、「2週間くらい猶予あればせめて、と思いますが、本当になす術がないと思う。自分だったら本当に辛いだろうなと。我々ならなんとか処理できるかなと思った。3月31日の23時59分までに意思を表示していただけたら、4月1日の0時0分から正社員として雇用、というプロセスをとろうと思っています。ここまで取り上げられるとは…」と、発案した理由を説明する。
伊藤氏によると「てるみくらぶは比較的高めの給与を提示していたので、それよりは低い水準なってしまう」というが、29日夕方時点で、内定取り消しになった8人から問い合わせが来ており、中には鹿児島から引っ越してきて、来月の家賃の目処が立たず困っていた人もいるという。
■理事企業や会員企業に受け入れていただくということもできるのでは
人生の中の大きな決断である就職で、理不尽にもその内定を取り消されたショックは計り知れない。救いを求めた内定取り消し者たちが、また同じ気持ちを味わってしまう、という可能性はないのだろうか。
「相性が良いかどうかはお仕事を一緒にしてから決定するものかなと。とにかくこの場を凌ぐ、"一時的に傘を貸したい"という思い。次のステップを、ということで離職するのも良いでしょうし、一生いたいという方にはいていただいて」(伊藤氏)。
「てるみくらぶの内定取り消し者だけに限るのは合理性に欠くかなと思い、それ以外の困った方にも…」と伊藤氏は言うが、もし「てるみくらぶ」の内定取り消し者全員、またそれ以外の企業の内定取り消し者たちが応募してきた場合、団体に受け皿としての余裕はあるのだろうか。
「全員が来たら一致団結すると思いますし、それはそれで組織論としては面白いと思っています。ただ、現段階ではオフィスも足りないし、資金的にもなかなか難しい。今応募してきている8人がやっとというのが実態です。ただ、JALFは業界のネットワークが強み。業界全体でお招きして、理事企業や会員企業に受け入れていただく、ということもできるのではないか」と伊藤氏は説明した。
現在、JALF以外にも、弁護士法人アディーレ法律事務所、警備会社のJSSも受け入れに名乗りを上げている。内定取り消し者たちにとって、一筋の光になりそうだ。(AbemaTV/AbemaPrimeより)