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 春夏合わせて甲子園出場37回、7度の優勝をほこる名門のPL学園野球部が3月で高校野球連盟から脱退することが決まった。

 OBにはKKコンビと呼ばれ巨人でも活躍した桑田真澄選手や清原和博選手、米大リーグ・ドジャースで活躍する前田健太選手などがいるが、野球部内での暴力など不祥事が続いたことなどから2年前から新たな部員の募集を停止しており、野球未経験の校長が監督登録でベンチ入りするなど実質的に監督不在の状態が続いていた。

 去年夏の全国高校野球大阪大会で初戦敗退し、この試合を最後に部員がいなくなり休部。現時点で部員募集を再開する予定はなく休部の状態が続くため、高校野球連盟に今年度末での脱退届を提出し29日受理された。

 PL学園野球部は輝かしい栄光の裏で様々な不祥事で世間を騒がせてきた。2013年に暴行事件を起こし半年間の対外試合禁止の処分を受けたのは記憶に新しいが、1986年には野球部員が学校の池で溺れ亡くなった事件が起きた。当初は事故だと思われていたが、後に部活内のいじめを苦にした自殺であると判明。1997年には上級生が下級生を暴行、2001年にもバットで頭を殴るなどの暴行事件が起きていた。さらに2008年には監督が暴力沙汰を起こし、2011年には部員の喫煙で一カ月の対外試合禁止処分を受けていた。

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 OBとして1978年夏の甲子園で優勝し、現在は四国アイランドリーグplusの香川オリーブガイナーズで監督を務めている西田真二氏は不祥事の背景に全寮制があると指摘。伝統的な付き人制度や、行き過ぎた上下関係が暴行事件を引き起こしたと分析している。ただ「不祥事を起こしたのは一部。一部が引き起こしたことが連帯責任になってしまうのが高校野球」として、目標を持って真摯に野球に打ち込んでいた部員の方が多いことを強調した。また「廃部で寂しいのは当然だが、メンバーが少ない中戦った去年の野球部員がかわいそうだなと思う」と思いやった。

 そもそもPL学園はPL教団(パーフェクト・リバティー教団)の下に運営されている。「『人生は芸術である』という真理に基づいて幸せをもたらす道を示す。世界平和の実現に貢献すること」を教えとする宗教団体だが、野球部員も入信が義務付けられているとされる。

 選手たちも大事な局面で胸のお守りを握っていたといい西田氏は「人間は1人じゃ弱い。お守りを握って初心に帰るというか、集中できるというか。支えてもらっていた」と振り返った。PL学園が初優勝を果たした際には教団の会員数も急増。野球部が信者の求心力になっていたという。

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■暴力事件で野球部がお荷物になっていった

 野球部の最後を追った『永遠のPL学園 60年目のゲームセット』を出版したノンフィクションライター・柳川悠二氏は「これまでPL教団のネットワークを通じて全国の有望選手の情報を入手し選手を集めて野球部の強化が図られてきたが、教団の支援が受けられなくなり廃部を招いた」と分析する。そして「PL教団は世界平和を掲げている団体なので、その世界平和と対極にある暴力事件を繰り返す野球部というものがお荷物になっていった」と話した。

 またPL教団の信者数は1983年の265万人から2015年の90万人と減少。PL学園の生徒数も1学年50人ほどで経営自体も非常に危うくなっているいい柳川氏は「野球部にかまっていられない状況」とした。OB会は野球部存続の署名活動を行い、その署名を学校の校長宛に送っていたが、すべての実権は教団が握っておりPL学園の校長は決定権を持っていないと言われている。

「OB会も校長に決定権がないのは重々承知していたが越権行為が出来ないということで校長に署名を提出した。それが間違っていたと思う。PL野球部のファンだったり実際の信者の声を集めて教団に持っていき、教団が動かざるを得ない状況を作り出すのがベストだったと思う」と柳川氏は持論を展開した。

 教団の広告塔の役割を果たしていた野球部はなくなったが「復活はない」と柳川氏。甲子園を彩った名門野球部だが、再起の道は極めて厳しいようだ。(AbemaTV/AbemaPrimeより)

(C)AbemaTV

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