■3人の元総理大臣が集結
太平洋に面する千葉県の匝瑳市。人口は4万人ほどで、大豆や麦の豊かの農地が広がっている。3日、この地に不釣り合いな黒塗りの車が多数集まった。現れたのは、小泉純一郎氏、細川護煕氏、菅直人氏。3人の元総理大臣は、新たな太陽光発電所『匝瑳メガソーラーシェアリング 第一発電所』の落成式に出席した。
3人はこれまでも原発推進政策に異を唱え、自然エネルギーの推進を主張してきた。
挨拶に立った小泉元総理は「これは全国のソーラーシェアリングの先駆けとなるのではないか。手本となるように、是非とも頑張っていただきたい」と激励。細川元総理は「これが日本のこれからの農業にとっても、エネルギーにとっても、本当に第一歩になるように皆様に頑張っていただきたい」、菅元総理も「原発などなくても、ソーラーシェアリングだけ供給量は十分だということを意味している。それだけ大きなポテンシャルを持っている」とそれぞれ話した。
「ソーラーシェアリング」とは、農地にソーラーパネルを設置し、農業を行いながら発電を同時に行う仕組みだ。これにより、農業と発電の両方で収入を得ることができる。3.2ヘクタール(東京ドームの3分の2ほど)の土地にソーラーパネル約1万枚を設置すると、およそ300世帯の一般家庭の電力1年分をまかなえるという。全国に2000件ほどあるソーラーシェアリングの中で匝瑳市のものは最大規模。年間で4700万円の収入が見込まれている。この農地では、大豆と麦を生産しながら発電を行う予定だ。
ソーラーシェアリングの生みの親・長島彬氏は「今までの農業では、自分の息子を後継者にするのは嫌だったわけです。儲からない、辛い。でも、ソーラーシェアリングをすることによって、農業では10万円儲かって、ソーラーパネルでは100万円儲かるような畑になる。そういった時代が来る」と話す。
■普及が進まない地域も
神奈川県小田原市でソーラーシェアリング企業「小田原かなごてファーム」を立ち上げた地元農家の川久保和美氏は「農地として価値のないところでこういうものをやる分にはいいかなと思って。ある程度、里の保全ができればいいのかなというのも考えています」と話す。同社では約300万円でソーラーシェアリングを設置でき、年間で約40万円の売電収入が見込まれるという。
一方では課題も存在する。すでに千葉では100例以上、静岡では80例以上のソーラーシェアリングが稼働する中、神奈川県では6例と、まだ少ない。"農地は農地として守るべきである"と考える農家が多く、川久保氏も他の農家に耕作放棄地の活用方法を呼びかけているが、消極的なようだ。
同社の小山田大和氏は「2号機、3号機、4号機…って増えてくるのかなと思ったんですけど、農家さんがなかなか取り組もうという感じもしていないですし、特に神奈川県の場合はソーラーシェアリングを認めたがらない風潮がちょっとありますので、普及が現状難しい」と説明した。
■国と農家、それぞれの不信感を取り除くことが重要
匝瑳市での落成式にも参加、「時代が変わってきたなと感じた」と話すのは、環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏。
飯田氏は農家が消極的な理由について、「国には『ソーラーシェアリングで儲けてしまったら、農業を辞めてしまうのではないか?』という懸念がある。だから、ソーラーシェアリングの収入の8割くらいの農業生産を維持することをルールとして農家に課している。また3年ごとのチェックも求めている」と説明する。農業を辞める場合は、ソーラーシェアリングも辞めなければならないということだ。
飯田氏は「農業をやめてしまうのではないか?という国の不信感によって、多くの制約や煩雑な手続きを生んでいる。農家にとっても不自由さに不信感がある。お互いの不信感を取り払うことが普及にとって重要」と指摘。また「発電した電力を乗せる送電線を、原発を持っている大手電力会社が握っていることも課題」とした。(AbemaTV/AbemaPrimeより)