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 東京築地の国立がんセンター、今や100万人といわれる日本のがん患者たちは一体どのような思いで、病院の出口を後にするのだろうか。その心境に触れようと待っていると、一人の女性と出会った。

 「最初は、駅までの道を泣きながら歩いた」。乳がんステージ4、余命宣告まで受けていた。

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 「医師の言葉が強すぎて、受け止めるのが精一杯で。会計が終わってからホッとした瞬間にどっと涙が出た。治療法がないとハッキリ言われた」。

 彼女の職業はプロレスラー、リングネームは亜利弥’、43歳。

 1996年のデビュー以来、デスマッチから格闘技路線まで大活躍。しかし、2年前の2月に乳がんを宣告された。多発性転移(ステージ4)だった。「朝、手足が硬直して、痺れる。ベットから降りる時、激痛がはしる。毎朝"あー!"と叫んでいる。でも声が出るだけまだ大丈夫と思っている」と笑う。

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 しかし亜利弥’は、レスラーとしての使命感から、抗がん剤での治療を拒否した。その最大の使命とは、4月7日に行われる、自身の引退試合だ。「今戦っている相手は最強の相手、その名はがんです」と、引退試合に向けた記者会見で公表、「お医者様をはじめ多くの方々に反対されていますが、この興行を通じて私と同じように病気と戦っている人達に勇気と元気を送りたいと思っています。どうか皆様、力を貸して下さい」と頭を下げた。

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 実は骨にも転移しており、些細なダメージでも骨折のおそれがある。位置によっては命にかかわる問題だ。

 「主治医の先生に試合の話をしたら、こっぴどく怒られ、みすみす命を捨てに行くようなものだと説教をたくさん頂いた。けど自分は曲げない、全部の責任は自分でとる。"リングの上で死にたいんでしょ?"と言われるが、そんな事をしたら皆が嫌な思いをするだけ。プロレスが大好きだから、ちゃんと礼儀を尽くしてリングを降りたい」と熱く語る。

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 後楽園ホールの出口、自ら一人チケット販売をする亜利弥’。なんでも屋でアルバイトし、生活費も治療費もそして引退試合のための費用もすべて自分で稼ぐ。

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 亜利弥’にとって生きるために必要なのは、薬ではなく、レスラーであり続けることだ。レスラーである以上、強くありたい。だから弱音は見せない。そして、がんという最強の敵との戦いにレスラーとしての人間力で挑んでいく。

 "プロレスラーであることの証を刻みたい"ー。

 「がんステージ4の人がプロレス引退試合するというのは女性では前例がないです。今は転移の骨とかリンパとか肺とか7ヶ所になっているので、薬を使いながら上手く付き合っていけたらいいなと思っています」。

 改めて、がん宣告を受けた時の気持ちについて尋ねると、「がんと言われて救われた部分があった、本当にしんどかったので、がんと言われて"やっぱり"という理由づけができた」と振り返る。

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 怖くなったりする時はないのだろうか。「毎朝、目が覚めるのか?と言うところで、寝る前に1回恐怖があります。でもなんの根拠もないけど、20年間プロレスをやって来たから、試合が決まっているのに死ぬ訳がないという気持ちだけで」。

 自らの引退試合については「師匠のジャガー横田さんと組みたい」と目を輝かせる。

 最後に、「がんだからって、あきらめない事が一番大切。ドクターからたくさん言われるけれど、まず自分が楽しい事を精一杯やる事」とがん患者たちへエールを送った。

 今夜の引退試合、「プロレスラー亜利弥’」はどんな試合を見せるのか。(AbemaTV/『勝手に出口調査』より)

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感謝・感激・雨・亜利弥'☆彡
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乳がんステージIVの日常と、セミリタイア中のプロレスやら。
aliya2008.blog.fc2.com
勝手に出口調査 | AbemaTV
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