一昨年、AK-69の“A Hundred Bottles REMIX”にDJ TY-KOH、KOWICHI、SIMONと並んで客演したのに続き、暮れには同じ名古屋のトップDJ、DJ RYOWが設立したレーベルDREAM TEAM MUSIC(以下DTM)の第一弾アーティストとしてアルバム「NEVER DREAM THIS MAN」をリリース。
さらに昨年は、新たにDTMのアーティストとなったDJ NONKEY、STEALERとのミックスCDリリースをはじめ、DJ RYOWプロデュースのCBCテレビ開局60周年ソングでのJASMINEとの共演に、同じくDJ RYOWのアルバムでのJinmenusagi、十影との楽曲等々、レーベルの動きとともに活躍の場をさらに広げるラッパー・SOCKS。先頃発表されたYUKSTA-ILLのアルバム「NEO TOKAI ON THE LINE」での好演も記憶に新しい彼が、DTMから2作目となるアルバム「JAPANESE THAN PARADISE」をリリースした。遠くのパラダイスより日々のあれこれ——時にシニカル、時にユーモラスなリリックのセンスを身近な生活の場へと持ちこみ、アルバムはよりストレートなカタチでも届くものとなった。
——「KUTABARE」には般若さんが参加してますね。
SOCKS:RYOWさんがあるタイミングで「『くたばれ』って曲作りたいんだよね」ってポロッと言って、「なんかあったんだなRYOWさん」と思いながら「それいただきます」って言って(笑)。そのタイミングで、Ava1anche君がドンピシャに日本感満載のトラックを2曲持ってきてくれて、すげえよかったんで、これで行こうっていう。
——般若さんとの曲作りはどうでした?
SOCKS:般若さんのヴァースもらった時はムチャクチャくらいましたね、最初から〈裸でソックス履いたまんまセックスする〉(っていう歌詞)だったんで「ありがとうございます。いただきました」って感じで(笑)。
——はは。じゃあ曲の締めの〈SOCKSと聞いた君がセックスを連想するまで頑張る〉っていうリリックも……。
SOCKS:般若さんのヴァースもらった後にあえて入れたいなと思って。だって悔しいじゃないですか、今までそれで韻踏んでこなかったんで。般若さんがここしかねえってセンタリング上げてくれたんで、最後オウンゴールっすけどちょっとヘディング行っときてえなみたいな(笑)。あれも結局最初に書いたやつを踏まえて般若さんが書いてくれたのに対してまた書いて、それが3ヴァース目に行って、でまた最終的に1ヴァース目書いてって感じで、鬼のラップ地獄で、くたばりましたね。楽しみ切りました。
——先ほど話があった現実というつながりでいえば、なじみのホームセンターについて「Kahma Home Center With Me」や、午前中から起き出す日々の生活を歌った「Days Of Our Lives」など、より身近なトピックを取りこんでますね。
SOCKS:そうですね。「Nobunaga Order」(織田信長がモチーフとなった曲)も、「信長の野望」を全作持ってるぐらい好きなんで、日常の一つとして書いたのもありますし。逆にすごく広くなったところはあるっすね、題材的にいろんなものがありすぎて。「Kahma Home Center With Me」もカーマ(注・DCMカーマ。東海・北陸を中心に展開するホームセンター・チェーン)に行くタイミングで「あ、カーマの曲作ろう」とか。
——アルバムでは映画好きな一面がふとしたリリックで随所に表れてますが、YOUNGEST IN CHARGEでも活動を共にしたCITY-ACEさん、NATOさんとの「Rental Video Lovers」はそれが全編で形になった一曲で。
SOCKS:NATO君が持ってきてくれたトラックのサンプリング元がM.O.S.A.D.のAKIRAさんとAKさんの曲(AKIRA feat.Kalassy Nikoff a.k.a. AK-69の「Casanova」)だったんで、フックは今回AKさんのとこ(Flying B ntertainment)に入ったCITY-ACEがいいなって自然な流れで。これはRECの一週間前まで曲のアイディアが浮かばなかったんですけど、レンタルビデオ屋に「カサノバ」ってどういう映画なのか勉強しに行こうと思って、いろいろパッケージの裏のあらすじ見たりこうやってディグしてる間が楽しいなと思って、曲にしたっすね。CITY-ACEが「これどう思う?」みたいなこと嫁さんに言ったらしんですけど、「なんであのビートでレンタルビデオなの?」って最高の褒め言葉が聞けたっていう(笑)。
——この曲は〈ラインナップ確認すると5本中3本がトム・ハンクス〉なんてラインも耳を引きました。
SOCKS:それ実際の話で、無意識に借りてたら結局「キャストアウェイ」やら「プライベートライアン」やらって。それがエディ・マーフィの時もあったんですけど、ハマりがトム・ハンクスの方がよかったんで。
——はは。そして何より映画ネタの極めつけが今回のアルバムタイトルですよね。これはジム・ジャームッシュ監督の「ストレンジャー・ザン・パラダイス」からつけたものだそうで。
SOCKS:「ストレンジャー・ザン・パラダイス」が’84年の映画で自分も’84年生まれでグッときましたし、ジム・ジャームッシュの映画が全般的に好きなんですよね。なんつうんすか、観終ったら何にも考えないんすけどまた観たいなって思う映画ってすごいなと思って。「ゴーストドッグ」とかも何回観たかなあっていうぐらい観て、サントラまで買ったり。
——ずばりこのアルバム・タイトルの意味は?
SOCKS:世界的に見て日本人ってちょっとストレンジャーだなって思ってて、ジャケでも使ってる兜だったり盆栽の文化だったりすごいアヴァンギャルドじゃないですか。日本語っていう特別な言葉使ってなおかつこんだけの文化作れるってすごいことだなとも思ったし、遠くにあるパラダイスよりも日々の方が飽きさせてくれないんで。そういう意味でつけたとこはあります。
——アルバムタイトルとともに、「Than Paradise」も「ストレンジャー・ザン・パラダイス」を踏まえた内容の曲で。
SOCKS:映画観て思ったことだったり、自分なりの言葉も入れたつもりです。
——この曲で歌われる〈悲劇的でもシニカルでもなくどこか笑えればいい〉ってラインは、SOCKSさんの音楽に対する考えにも思えるし、このアルバムもまさにそういう一面があるかなあと。ジャケ一つにしてもそうだし。
SOCKS:そうですね、まさしくそうだと思います。どこかしらで笑ってくれれば思惑通りっすね。ただ、それは狙うってことじゃなくて。今回は「KAHMA~」にみんな反応してくれるっすけど、これも狙って笑わせようっていうよりも逆に真面目にやった方が絶対面白いなってのがあったんで。
——「KAHMA~」は曲が始まってるのに、中々店内に入らないし(笑)。
SOCKS:(笑)曲終わっても結局買い物が済んでないっていう(笑)。
TEXT:一ノ木裕之
PHOTO:小原啓樹
“JAPANESE THAN PARADISE”
1. Japanese
2. KUTABARE feat. 般若
3. Nobunaga Order
4. Kahma Home Center With Me
5. ALL下衆OUT feat. 呂布カルマ
6. OMOU
7. Rental Video Lovers feat. CITY-ACE
8. Stranger In The Kitchen feat. STEALER & THREE-A
9. KIMAMA MA feat. J-REXXX
10. Nice & Swoosh
11. Yuyake feat. E.R.I
12. Days Of Our Lives 13. Than Paradise