2年連続で1月4日の後楽園ホール大会を成功させた東京女子プロレスの特徴の一つ、独自の“アイドル路線”に、ここにきてターボがかかっている。もともと大会後にチェキ撮影会を行うなどアイドルライブ同様のサービスを導入し、選手もアイドル的な人気がある東京女子。
そこに福岡を拠点とする本物のアイドルグループ・LinQのメンバーである伊藤麻希がプロレスデビューを果たし、参戦してきたことでさらにアイドル色が強まった。とはいえ、この伊藤はそもそも普通のアイドルではなかった。「業界一顔がデカいアイドル」と呼ばれる伊藤は、リング上でも無闇な気の強さを発揮している。
試合に負けても「顔は伊藤のほうが可愛いから引き分け」とまったくへこたれず、AKB48グループのメンバーがプロレスラーを演じるドラマ「豆腐プロレス」放送開始日には「アイドルがプロレスやるのに先輩の伊藤に挨拶がない!」と松井珠理奈に向け怒りのアピール。結果、ドラマの宣伝になってしまうという好プレーを見せている。
(瑞希に渾身の逆エビ固めを仕掛けるLinQ伊藤。もはやアイドルの表情を大幅に逸脱している)
そんな伊藤は、東京女子が初挑戦する年間2度目の後楽園大会(8月26日)の宣伝部長にも就任。4月8日の成増アクトホール大会では、勝手に作った「伊藤応援シート」を販売し、特典として自主制作ポスターも用意。ちなみにLinQも現在「解体」と「再開発」をかけたプロジェクトが進行中で、5月に福岡市民会館、中野サンプラザという大会場でのライブを控えている。
このライブの宣伝部長でもある伊藤は、LinQ、東京女子プロレスとも500枚のチケット販売を自身に課しており、リングだけでなくグッズ売り場でも壮絶な闘いが進行中だ。またこの日、伊藤は女子プロレス界で屈指のアイドル的人気を誇る“みずぴょん”こと瑞希と対戦。試合には敗れたが、言葉巧みな勧誘で瑞希を「伊藤リスペクト軍団」に加入させ、勢力を拡大している。
東京女子プロレスに定期参戦しているフリーレスラーの才木玲佳は、アイドルユニットCheer1のメンバーで、“筋肉アイドル”としてテレビ、CM出演も話題。鍛え上げた筋肉を活かしたパワフルな闘いぶりで知られる才木は、3月には東京女子プロレスの「TOKYOプリンセス・オブ・プリンセス」王座に挑戦し、激闘を展開している。
4.8成増大会ではタッグマッチに登場し、身長170cm近いド迫力ボディのまなせゆうなをタワーブリッジ(アルゼンチンバックブリーカー)で担ぎ上げ、中島翔子の勝利をアシストしている。才木と闘ったまなせもグラビアタレントとして活動し、ミス東スポ2017特別賞を受賞。いわば芸能人同士の闘いなのだが、そこでなんとなくそれっぽい動きを見せるだけではなく、本格的なバトルを見せるからこそ観客から支持されるのだ。
(メインの王座戦では滝川が大健闘。王者・優宇に食い下がった)
アイドル以外にも個性的すぎる選手が揃っているのも、東京女子プロレスの魅力。4.8成増大会のメインでは、優宇が持つ王座に滝川あずさが挑戦した。優宇はデビュー以来無敗、柔道と総合格闘技をベースに持つ本格派だ。対する滝川は女子アナを目指してプロレスラーになったという経歴からして謎の選手。最近では、のの子と「婚勝軍」を結成、婚活のパワーをプロレスに持ち込もうという、これまた謎のユニットで話題を呼んでいる。なお、婚勝軍は「聖書」である結婚情報誌ゼクシィを凶器として使っていたが、編集部からのクレームにより自粛中だ。
この滝川、デビュー以来いまだ勝利なし。それでも「いつかいつかと言っていたらチャンピオンになれないし結婚もできない」と王座挑戦をアピール。優宇もこれを受け入れた。試合は完全に優宇が圧倒。しかし滝川は試合中にもかかわらずマイクを握り、自身の窮地をアナウンサーとして実況することで観客を味方につけてしまう。想像以上の粘りを見せた滝川は、胸に凄まじいアザを作りながら、優宇とチョップ合戦も展開。「私と逆水平を打ち合った選手は初めてです」とチャンピオンを驚かせていた。
最後は優宇の片羽絞めで敗れた滝川だが、ギブアップではなくレフェリーストップ裁定。その健闘は誰もが認めるところで、真っ向勝負で観客を沸かせたことは大きな自信になったはずだ。
黒音まほとのユニット「どらごんぼんば~ず」を率いる辰巳リカもそうだったが、東京女子プロレスの選手はタイトルマッチを経験することで飛躍することがある。その成長ぶりを見るのもファンの楽しみの一つだ。そんな中、滝川は「この健気な闘いぶりで、明日から事務所に求婚の電話がたくさんくるはず」と婚活的にも手応えがあった模様。
この成増大会も超満員の大盛況、試合後のチェキ撮影会にも長蛇の列ができるなど、今の東京女子プロレスは確実に勢いを感じさせる。このままいけば、8.26後楽園大会はかなりの注目を浴びそうだ。
文・橋本宗洋