
熊本地震で震度6強の揺れに見舞われた熊本県南阿蘇村。多くの建物が倒壊し、阿蘇大橋が崩落するなど壊滅的な被害を受け、27人の命が奪われた。橋は今もないが、営業を再開する商店もあり、復興の兆しが出てきている。

南阿蘇村で最も復興が遅れ、苦しんでいると言われるのが"地獄温泉"だ。140年以上の歴史を持ち、人気を集めていた温泉旅館、清風荘。地震の際には道路が寸断され、宿泊客・従業員51名が孤立し、2日後に自衛隊のヘリコプターで救助された。


あれからおよそ1年。地獄温泉の今を、ジャーナリストの堀潤氏が取材した。
代表取締役社長の河津誠さんの協力で現地に入ると、そこにはいまだ舗装されていない道路が目につく。明治時代に建てられた清風荘の建物は家具などが倒れ、ライフラインが使えなくなるなどの被害を受けた。しかし、さらなる悲劇が待っていた。熊本地震発生から2カ月後の6月、豪雨による土石流でさらなる被害を受け、建物内は壊滅的な状況に陥った。土石流は撤去できずに敷地内に残ったままだ。



河津さんは「ため息だけですよね。地震でゼロになっていたから、掛け算をしてみてゼロに何をかけてもゼロだと。だから大丈夫みたいな考え方をしました。それ以外にやりようがないので」と毅然と語る。再建には億単位の費用がかかるという。


震災前、南阿蘇村の観光客は年間700万人を超えていたが、震災から夏まではほぼゼロ。それから少しは回復したものの震災前のおよそ6割と苦しい状況が続く。「"南阿蘇村では土砂崩れの危険性がある"、という風評被害の影響も大きい」と村役場の担当者は話す。
現時点で、再建へ向けた目処は立っていないというが、河津さんには希望があるという。清風荘の露天風呂が、奇跡的に地震前の形を残しているのだ。「希望ですよね。僕らが生きていく上での希望です。エネルギーを感じるでしょ、ボコボコと湧いている」と笑顔を見せた。


そんな河津さんの心配事は雨だという。今年も梅雨の季節が近づいてくる。豪雨になった場合、道路や建物への被害拡大は必至だ。「急げとも言えないし、できるだけ早くということで動いてもらっているが、間に合わないのではないか。運次第でしょうね」。
河津さんは継続的にFacebookで情報を発信、安全を最優先しながら、露天風呂の見学会なども企画しているという。「全国の方々に、南阿蘇村のことをしっかりと見て欲しい。正しい情報を知ってもらって、判断してもらいたい。南阿蘇村にはほとんど地震の影響もないエリアもある」と訴えた。
取材を終え「熊本の中でも、復旧復興の進み具合には格差があると感じた」という堀潤氏。河津さんの温泉に浸かる日を楽しみにしていると話した。(AbemaTV/AbemaPrimeより)



