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 1年前の熊本地震の際、「近くの動物園からライオンが逃げた」というデマツイートが拡散、投稿した男性がその後逮捕されるという事件が起こった。いまや全人口の約7割がスマホを所有。多くの若本にとってスマホ、インターネットが情報収集の手段となっている。一方で総務省が発表した「メディアの信頼度」では、新聞やテレビが6割を超えたのに対し、インターネットは3割を切っている。背景には、フェイクニュースやデマが世界中で拡散されているという現状がある。

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 フェイクニュースがとりわけ注目を集めたのは去年11月のアメリカ大統領選だろう。トランプ氏を厳しく批判していたローマ法皇が最後にはトランプ支持を表明するという情報や、オノ・ヨーコ氏が1970年代にヒラリー・クリントン氏と性的関係があったというフェイクニュースが拡散してしまった。

 日本でも、DeNAが運営していたまとめサイト医療系サイト「WELQ」をはじめとする"まとめサイト"で、不正確な情報が記載されていたことが問題になっている。

■インターネットを規制をすべきなのか?

 では、ネット情報の信頼度を上げるためにはどうすれば良いのか。「法規制」という方法は、ネットの世界においてはサーバーが海外にあるケースもあり、国境との問題も横たわる。またネット本来の魅力である「自由な空間」が失われる可能性も高い。慶応大学特任准教授の若新雄純氏は「2ちゃんねるの『名無し」の書き込みをはじめ、新しい創作がネットのカオスの中から生まれてきた。規制が強化されることで、そうした独自の文化の発展が妨げられる」と指摘する。

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 さらに若新氏は「新聞を手にとって読む場合は安心して読むし、雑誌を読むときはある程度、信頼性を疑いながら読む部分があると思う。それがネットだと新聞の記事も個人が発信した情報も、同じな画面で同じように見えてしまう。「2ちゃんねる」は、サイトもなんとなくいい加減なイメージがあるが、WELQはちゃんとしたデザインで、信頼できそうなイメージがあった。信頼できるサイトとあまり信頼できないサイトがすぐに見てわかるようにすることはできないだろうか」と提言した。

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 元朝日新聞記者で、J-CASTニュースやニコニコニュースの編集に携わってきた亀松太郎氏も、「できるだけ規制をすることなく、リテラシーを高めていくことで解決できるる可能性はある。ネットがバーチャルではなく、もうリアルになりつつあるという状況の中において、信用できる記事もある一方、信用できないサイトもあるよ、ということをまず学校で教えていくことが重要ではないか」と話した。

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 一般社団法人リディラバ代表の安部敏樹氏は、インターネットが身近な環境で成長した若者のネットリテラシーは実は比較的高く、むしろこれからスマホを使い始める高齢世代の方がフェイクニュースの被害に遭ってしまう可能性は高いとも指摘した。

■大統領選がフェイクニュースで揺れたアメリカの状況は

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 日本の数年先をいっていると言われるアメリカの現状はどうなっているのだろうか。元テレビ朝日記者で、現在はハーバード大学院生の大倉瑶子氏によると、「右寄りの人には同じような記事、リベラルな好みの人にはリベラル的な記事と、似た思想の記事が出てくる。さらにその中にウソの記事も紛れている」という状況が、アメリカ大統領選後、大きな問題になっているという。本来様々な情報・意見にアクセスできるインターネットだったはずが、検索履歴や個人の属性などから、趣味趣向にあったものばかりが提示されてしまう「echo chamber(反響室)」現象に対する議論が盛んだという。

 日本でもこうした状況は現れつつあるが、もともとアメリカはメディアが中立ではなく、政治的な立場を明確にすることも背景にはあるのではないかと大倉氏は話す。同氏が学ぶハーバードの場合、リベラル志向の人が多く、「教授も民主党をサポートしてきた人が多く、触れている情報もリベラルなメディアや似た思想の人たちのものが多かったので、ある意味で偏っていた。それだけに、トランプが当選したときはかなりショックを受けていた。最近では、あえて共和党やトランプ支持者の話を聞くなどしている」のだという。

■大手メディアより早かった「ロボットジャーナリズム」

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 そんな中、「ロボットジャーナリズム」という画期的なシステムが注目を集めている。

 例えば「データマイナー」という会社と「Twitter」が公式パートナーシップを結んで提供しているシステムでは、1日あたり4億以上のTweetを解析し、記事を作成するシステムだ。

 アメリカではすでに主要メディアのロサンゼルスタイムズやロイター、AFP通信などでの速報記事や簡単なニュースはこうしたロボットが記事を書いていて、その数は1日に250本にものぼるのだという。

 ロボットジャーナリズムが大きく活躍した例もすでにあり、2015年ドイツの大手自動車メーカー・フォルクスワーゲンが起こした排ガス不正問題を暴いたのはロボットジャーナリズムだった。ディーゼルエンジン搭載車の一部で排ガス規制をくぐり抜けるため不正のソフトウェアが搭載されていたとロボットジャーナリズムが情報発信したのは、大手メディアが報道する3日前のことだった。データマイナーの顧客のうち、フォルクスワーゲンの株主だった人たちはすぐに株を売却し、株価の下落による損失を免れたという。

 一方で、ロボットジャーナリズムは、蓄積されたデータを基にした記事しか書けない。亀松氏は「日本でもロボットの記事執筆は技術的には可能。あとはメディアがどのように使っていくかどうかの段階」だと指摘する。

 フェイクニュースやロボットジャーナリズムにより、ますます書き手や読者のリテラシーの重要性は増していきそうだ。(AbemaTV/AbemaPrimeより)

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