■専門家たちも戸惑うほどの前代未聞の大地震

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 熊本地震から1年。後に「前震」とされた、昨年4月14日午後9時26分に起った地震では、気象庁がこれを「本震」と認識、強い余震に警戒するとしながらも、基本的には収束していくとの見方を示していた。しかし、16日未明、「本震」とされた14日の地震よりも強い揺れが熊本地方を襲った。気象庁はこの地震こそが「本震」で、14日の地震は「前震」であったと発表、気象庁の担当者はこの事態に「非常に難しい問題であり、地震が起こったその場で次にさらに大きな地震が起こるかどうかを予測するのは地震学上困難」と答えた。

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 また、気象庁は震源の北東方向にある大分でも地震活動の高まりが記録されているとも発表。実際に本震では大分でも震度6弱が観測、その後、大分や阿蘇地方で頻繁に揺れが観測されるようになった。気象庁の担当者は「このように広範囲で地震が観測されるのは近代的な観測を始めて以降初めてで、過去の地震との類似性も思い浮かばない」と、困惑を隠せない状態だった。

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 東京大学地震研究所の古村孝志教授は「大分も熊本も活断層がたくさんある場所。熊本で地震が起きた際に、その影響で北の断層で誘発地震が起きた。その後も多くの活断層で連鎖的に地震が起きたことで、全体的に地震活動が大きくなった」と分析する。

 専門家たちも戸惑うほどの前代未聞の大地震。住民たちに命を守るための情報はきちんと届いていたのだろうか。

■進まない被害自治体からの「学び」

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 震度6弱を観測した大分県由布市の職員に当時の話を聞いたところ、「発生した当初は、自らの身を守るのが最優先だった。由布市には防災ラジオというものがあり、『まず身を低くして頭を守ってください』など基本的なことを流していたのだが、それがうまく伝わらなかった。パニックにならずに落ち着いた行動をとってほしいというのをしっかり伝えなければいけないなと思いました」と振り返った。

 さらなる大きな余震があるかもしれないという気象庁の会見については「それは聞き漏らしたかもしれない。何しろ市民への対応で報道やラジオを見る機会が無かった。たくさんの人が避難していたということもあり、その対応で情報収集に手が回らなかった。やはりマンパワーが必要。避難民の対応をする職員、情報収集をする職員等を分けて対応することが大切だと感じた。由布市の地域防災計画の見直し、事業継続計画の作成をしっかりしたい」と話した。

 災害時の情報伝達を社会心理学の観点から研究している、関谷直也・東京大学特任准教授は「水害の場合は気象庁からホットライン的に各自治体に連絡をする場合もあるが、これだけの地震では被害も広域で、気象台や本庁が全ての自治体に連絡をするのは難しいと思う」と指摘。

 「九州の自治体の方々は、台風や豪雨災害に対しては、事前に情報収集して避難勧告を出すといったことに慣れていると思うが、地震直後にできることは限られているし、しかも余震の予測も難しい。やるべきことが多く、しかも普段の行政とは違うことをするので、なかなか対応できないのが現実で、目の前の対応に必死になってしまうのはやむを得ないこと。普段から訓練を行い、被害を経験した自治体に学ぶことが必要だが、それがなかなかうまくいっていないのが現状」(関谷准教授)。

■スマホが使えないような時の対応こそが本来の危機管理

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 6000人の学生のうち、3000人が外国人留学生だという立命館アジア太平洋大学(大分県別府市)を取材した日経ビジネスの柳瀬博一氏によると、同大学では全ての学生とネット経由で連絡がつく体制になっており、地震発生時もスマートフォンによる情報の伝達と連携のおかげで避難がうまくいったという。また、災害時にTwitter等で被害の状況等を知ることができる「DISAANA」というアプリもある。

 関谷准教授は「一見有用そうに見えるが、やはり重要なのはスマートフォンのような機器に頼らない危機管理を考えること」と指摘。甚大な被害で停電してしまい、スマートフォン等の機器がうまく使えない。そんな時の対応こそが本来の危機管理。東京がもし地震に襲われた場合どのような状況になるかわからない。心構えだけではなく実際に何を出来るかが重要だ」と警鐘を鳴らす。

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 被害が"大きい"現場ほど、人の出入りも困難なことから、現地の情報量が少ないケースも多いといい、「熊本地震の際にはスマートフォンで情報を得ることが出来たが、本当に重要なのは、そういう機器がない地域や電波が届かない地域で起きている事態や、そこにいる人々のことをどう把握するか」(関谷准教授)だと訴えた。

 自然災害の多い日本。自治体、住民双方で、もしもの時への心構えをしておくことが肝要だろう。(AbemaTV/AbemaTimesより)

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