■アメリカは近いうちに攻撃に出る?
日本を訪れているアメリカのペンス副大統領がきのう、アメリカ海軍横須賀基地に配備されている原子力空母ロナルド・レーガンを視察。「北朝鮮はアジア太平洋地域の安全保障にとって最も危険で差し迫った脅威だ。戦略的忍耐の時代は終わった。アメリカは同盟国と共に敵に立ち向かう」「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」と演説し、北朝鮮に対し強い姿勢で臨むことを改めて強調した。
そんなアメリカ国内では現時点で"先制攻撃はない"という見方が支配的で、北朝鮮問題がトップニュースで扱われることも無いようだ。
北朝鮮問題に詳しい聖学院大学の宮本悟教授も「今はまだ空母もカール・ビンソン1隻だけ。北朝鮮をすぐに攻撃できるというような態勢ではない。ニミッツが日本近海に向かい始めた場合には状況が変わるが、北朝鮮側もそれほど深刻に受け取っていない」と話す。
一方、「アメリカ側からすると、このまま北朝鮮が核ミサイルの開発を続けた結果、ワシントンやニューヨークを攻撃できるほどのものが出て来るということは何としても避けたい。その前に叩いてしまえという意見が出るのは当然で、アメリカは近いうちに攻撃するという動きに出るだろう。そうなると北朝鮮はさらに核ミサイルを開発しなければいけないが…」とした。
■「北朝鮮指導部は危機感を持っていないのではないか」
緊迫した状態が続く中、北朝鮮では、豊渓里の核実験場の施設外で関係者がバレーボールをしている様子を確認したと、16日に撮影した衛星画像を解析した北朝鮮研究グループ「38ノース」が明らかにした。同グループはこの動きについて、「施設はスタンバイの状態に入っているのかもしれないし、彼らは我々が見ていることを知っているので、惑わそうとしているのかもしれない」と推測している。
ロイター通信は、北朝鮮の国営・朝鮮中央通信社は故・金日成主席の誕生を祝う公演の様子を放送。舞台上では今年2月に行われたミサイル発射実験の映像を合成したものを放映。複数の弾道ミサイルが太平洋を越えてアメリカ本土で爆発、炎上するという挑発的な内容だったという。また、6段階に分けられている「非常事態」の分類の中で、現在は最高レベルの「戦時状態」の次の「準戦時状態」の状態にあるとの報道もある。
宮本氏はこの「準戦時状態」報道について「誤報ではないか」と指摘。「人民軍最高司令官・金正恩の指示による宣言があったわけではない。また、基準も頻繁に変わっており、しっかりしたものではない」と話す。
「準戦時状態」とは、北朝鮮軍最高司令官の名義で国内全域に通達される非常事態の作戦命令のこと。過去には、1968年、76年など数回発令されている。「準戦時状態」になると前線地帯の住民たちは軍事訓練に参加、軍や組織は陣地で24時間体制に入るのだという。直近で発令されたのは、2015年に韓国軍兵士が非武装地帯で地雷により負傷、拡声器を使った宣伝放送を開始、砲撃戦が行われた際のことだ。
「1994年には、クリントン政権下でいつ戦争が起こるかもしれないという状態になり、全土をあげて動員体制に入った。その時と比べると、金正恩は表にも出てきているし、最高指導部の人間も一緒に集まってパレードを見たり、最高人民会議に出席したりしているので、そんなに危機感を持っていないのではないか。あるいは、国民に安心感を与えるために、このような態度をとっているかだ。また当時との最大の違いは、自分たちが核兵器を持っているということ。そもそもアメリカは北朝鮮を攻撃できないと思っているのかもしれない」(宮本氏)
■北朝鮮国内では求心力低下も?
他国からこれだけの圧力け受ける中、北朝鮮国民は一体どういう思いで日常を過ごしているのだろうか。
「アメリカが攻撃を仕掛けてくるかもしれないということは知っているが、メディアがそれほど怖がっていないという報道をしているので、国民もそれほど恐れていないのではないか?」と宮本氏。「街頭でインタビューをしても正直に気持ちを明かしてくれることはないので、おそらく"絶対大丈夫"という声が返ってくるだろう。ただ、金正恩に対して、金日成や金正日の時代のような忠誠心はないはずだ2000年代から市場経済になっており、自分のおカネでモノが買えるような状況にもなっている。配給制の時代のように"逆らえば物資が入って来ない"というような状況ではなくなっているので、少しずつ緩んできてはいる」と話した。(AbemaTV/AbemaTIMESより)