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 懸念されていた北朝鮮による核実験は行われなかったものの、関係各国では依然緊張状態が続いている。そんな中、ニューヨーク市場では"Xデー"とされた25日にナスダック総合指数が6000ポイントの大台に乗せ、過去最高を更新。さらに翌26日には日経平均株価が200円以上値上がりし、終値は4営業日連続の上昇で1ヶ月ぶりの水準を回復した。いずれも、北朝鮮情勢の懸念が和らいだことなどが要因の一つとみられている。

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 経済評論家の川口一晃氏は「株価は有事があれば下がるのが普通だが、最高値を更新したマーケットもあった」と振り返る。「日本市場にも、防衛機器やガスマスクなどを扱っている"戦争銘柄"の株価もここのところ上がってはいなかった」。

 川口氏は「金は"有事の金"とも呼ばれ、紛争などで上昇するもの。実際、シリア空爆の前後は上昇していたが、先週頃からは下がってきていた。一方、金よりも希少価値の高いプラチナは工業用品に多用されるため、経済が安定して工場が回っているときほど需要が高まり、価格が上昇する。ここ最近、価格が上昇していた」と指摘。

 さらに「戦争が起きた場合には航路が絶たれるので、原油価格が上昇する。シリア攻撃が起きた際には53、4ドルほどあった原油価格が今は40ドルくらいに下がっている」とし、「株価や金などの値動きから総合的に判断して、25日に北朝鮮が動く可能性はなくなったと判断していた」とコメントした。

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 このように、マーケットは世界情勢の"写し鏡"であるとも言える。

 1990年8月、イラクによるクウェート侵攻をきっかけにアメリカ市場では株価が急落、2900ドル前後で推移していたNYダウ平均株価はおよそ2ヶ月で2300ドル台まで下落した。その後、株価は一進一退が続く中、翌年1月には多国籍軍がイラクに攻撃を開始し、湾岸戦争が勃発。これにより経済危機が早期回復に向かうという見方が投資家の間で強まり、ダウ平均株価は上昇した。

 2003年には「大量破壊兵器の開発を続けるイラクとの戦争は避けられない」との見方が強まり、株価が反応。1月には8800ドル程度だったダウ平均株価は2ヶ月ほどで1000ドル以上も下落した。イラクへの最後通告を決定した2月17日から20日のイラク戦争開戦直後までは、湾岸戦争と同時に短期で終結するとの期待から株価が上昇。しかしイラク軍の予想以上の抵抗などから「戦争の長期化は避けられない」との憶測が強まり、株価は急激に下落した。

 川口氏は戦争を「最大の景気対策」と表現する。「自国が焦土にならないという条件で、戦争を行うことで経済が活性化される面がある。戦費を使うことで経済が回るし、軍事産業を中心に業績が良くなるし、失業中の若者が兵士として働くことができる」。

 しかし、今回はマーケットの動きから、世界の投資家は北朝鮮問題に対して楽観的な見方をしていたのではないかと川口氏はみている。「25日のアメリカの株価上昇はアメリカ企業の好決算に反応したところがあるし、上昇が顕著になったのはフランス大統領選挙の結果に安心感がでたという面もある」。

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 法政大学大学院の真壁昭夫教授も「朝鮮半島で有事が起きないだろうと大方の投資家が思っているということ」と話す。その一方「長いスパンで見ると、市場の予測能力が結構高いというのがわかるが、人間心理というのは『期待』と『恐怖』で動くので、初動は冷静に反応していない場合も多い。そのため市場も短期的には急激に動き、それが社会心理になって、世の中全体が動いていく」と指摘。川口氏とともに、マーケットを総合的に見ることで、情勢を判断する際の一つの参考になるのではないか、と話した。(AbemaTV/AbemaPrimeより)

AbemaPrime 北朝鮮情勢で本当にトクをしたのは?株価上昇のカラクリ | AbemaTV
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