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 23日のフランス大統領選第1回投票で接戦を制して決選投票に進んだのは、いずれも既成政党には属さない、国民戦線のマリーヌ・ルペン党首と、エマニュエル・マクロン前経済相の2人だった。

 「ナショナリストに怯えるすべてのフランス国民のため、すべての愛国者のための大統領になりたい」と語ったマクロン候補。これまでの報道ではルペン候補に注目が集まっていたことから、マクロン候補について多くを知っている日本人は少ないのではないだろうか。

 現在39歳、"若きエリート"と評されるエマニュエル・マクロン候補。妻はなんと25歳年上で、高校時代の担任教師だった女性なのだという。

 元在フランス公使で東京外国語大学の山田文比古教授は「優秀で、若くて、国民から好感を持たれている人。高級官僚を養成するフランス国立行政学院(ENA)を卒業後、財務省の財政監察官として数年間働いた後、投資銀行に転職、役員クラスとして巨額の報酬を得ていた。もともと左派的な志向を持っていたことから、社会党に引っ張られ、若くしてオランド大統領の大統領補佐官に転身。35歳で閣僚になった。その間、色々な改革を行ったが、オランド大統領と意見が食い違うようになり、反旗を翻して離脱。無所属として左派でも右派でもない、『前進』という中道の政治運動を始めた。それが去年くらいから民衆の心を掴むようになった」と話す。

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 非常にクリーンで、完璧なエリートに見えるマクロン候補。欠点はないのだろうか。

 ヨーロッパの情勢に詳しい法政大学大学院教授の真壁昭夫氏はマクロン候補の政治経験がまだ4年程度という点を指摘、「投資銀行ではM&Aで辣腕を振るい、とても優秀な成績を収めたというが、政治家としての経験がほとんどないので、その手腕としては未知数。政治は銀行とは違うので、やってみないと分からない」と話す。

 また「お隣のドイツは工業国で、EUの中では一人勝ち状態になっている。それに対し、フランスは農業国で成長率は見劣りし、お給料も上がらない状態が続いている。これまで共和党と社会党の二大政党が政治を独占してきたが、何も変わらなかったじゃないかという反省もあり、一度変えてみようという意識がある。ルペン候補率いる国民戦線がここまで支持率を伸ばしたのも、同じような背景がある」と説明した。

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 山田氏も「既成政党に対して国民は大きな不満を抱えており、政治不信が広がっている。若く経験が浅いマクロン氏だが、それでも託してみようと国民が後押した結果、社会党と共和党が負ける結果になった」と話す。

 EU残留を訴え、移民が社会に溶け込みやすくする政策を掲げてきたマクロン候補。決選投票で、脱EUや移民排斥を掲げるルペン候補を抑えることができた場合、イギリスのEU離脱やトランプ大統領の誕生など、世界中で吹き荒れる排他主義・内向き思考の台頭やポピュリズムの波に一石を投じることになると期待する人達もいる。

 オランド大統領も支持を表明、いまのところ地元メディアもマクロン候補の優勢を伝えている。

 フランスから日本に来て1年目だというマルレーンさんとハイジさんは「マクロン氏だと思う。ルペン氏は極右だと思うので、支持率としては低いのではないか」(マルレーンさん)、「多くのフランス人が迷っていると思う。大きな変化を期待できるのではないかということで、ルペン氏が当選する可能性もある」(ハイジさん)と話し、マクロン候補が絶対優勢、というわけではないようだ。

 山田氏は「フランスの選挙は、第一回は心で投票し、第二回は頭で投票すると言われている。どちらの方がフランスにとっていいのか、自分にとっていいのか、ということを考えると、マクロン候補に票が集まるのではないか。ただし、第1回投票で落選した9人の候補に投票した人たちがどうするか。どちらも嫌だという人や、どちらでもいいと思っている人が投票に行かず、投票率が落ちた場合、強い主張の候補の方が強くなる。つまり、ルペン候補が相対的に有利となる。マクロン候補がすんなり勝てるかどうかは、投票率がどれだけ伸びるかどうかにかかっている」と分析した。

 また、大統領選の勝者にはさらなるハードルも待ち受けている。次の国政選挙で自身を支持する人を多数派にできなければ、議会や首相が自身と意見の異なる"ねじれ現象"(フランスでは過去3度起きた「コアビタシオン」の状態)が発生してしまう可能性があるのだ。

 現地時間25日、パリ・シャンゼリゼ通りのテロ事件で銃撃され死亡した警察官の追悼式典が行われ、ルペン候補とマクロン候補も出席。両者とも、テロと戦う姿勢を有権者にアピールした形となった。決戦投票は、日本がゴールデンウィーク真っ最中の5月7日だ。(AbemaTV/AbemaPrimeより)

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