2017年前半の新日本プロレスは、オカダ・カズチカの安定政権を軸に展開していった印象だ。年明けの東京ドームでもはや「2017年のベストバウト確定」というケニー・オメガ戦、続く戻ってきた鈴木軍、鈴木みのる戦、ケニー戦とまた違った意味で命を削る戰いとなった柴田勝頼戦と「名勝負製造機」となりつつあるオカダの「個の魅力」がクローズアップされることが多かった印象だが、2017年3分の1が終了した時点での、新日本プロレスで活躍する5つのユニットを勢力図とともに採点してみたい。
MVP:新日本隊(タグチジャパン)
ここ数年徐々に存在感を失いつつある本隊、年初の東京ドームでの試合結果は悲惨なものだった。エース棚橋が内藤に完敗、引導を渡され、長年Jrの王だったKUSHIDAが、高橋ヒロムに敗れタイトルから陥落。その後も3月、4月の本間朋晃や柴田勝頼が長期離脱と負のスパイラルという雰囲気だが、ドーム大会でNEVER6人タッグ王者となった田口隆祐、棚橋弘至、中西学という「寄せ集め感」しかなかったチームから、田口が監督をつとめ代表メンバーを選抜するサッカー方式のチーム「タグチジャパン」が誕生。
最初こそ成り行き任せのグダグダ感も漂っていたが、「田口監督」というギミックで選手たちの活き活きとしたファイトを引き出すことになる。ものまねや、連携で魅せる流れるような攻撃、田口監督のお約束の「ケツ」など、かつての全日本プロレスの明るく楽しく激しいプロレスの新日版的な路線も、会場でもファンの一定の支持を受けるようになっている。
現状は内藤哲也率いるロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンとの抗争というのがメインテーマだが、裏テーマ、むしろそちらが本質といえる育成と選手の再生には目を見張るものがある。
「タグチジャパンが育てた」という意味で成長著しいジュース・ロビンソン、そして敗戦続きでタイトル戦線から距離を置くことが目立っていた棚橋弘至が、4月の後楽園ホール大会あたりから、エアギターパフォーマンスなどかつての輝きを取り戻すような元気なパフォーマンスを見せたりと復活のフラグた立ちはじめている。スーパーJrに向けて福岡で復活する「KUSHIDAの再生」もタグチジャパンが担う重要テーマになりそうだ。
次点:ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン
昨年旋風を巻き起こしたロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン。タイトル戦線など、メインキャストからやや外れた感は否めないが、ファンからの支持、グッズの売上など人気の面では、全ユニットの中でトップの状況は変わらない。
今年前半戦は、タグチジャパンとの抗争に終始したが、EVILが棚橋、内藤がジュース・ロビンソン、KUSHIDAを完膚無きまで叩きのめした高橋ヒロムがリコシェとそれぞれのターゲットを定め、ユニット間&個々の抗争と明確な戰いを提供している。
BUSHIとSANADAとスポット参戦のメキシコ本国組で編成されて来たロスインゴだが、今後新たなパレハ(仲間)の補充があるのか気になるところ。固定化されたメンバーの中で、やや精彩を欠きつつある実力者SANADAの存在がやや気がかりである。
3位:鈴木軍
新日本プロレスに帰ってきた鈴木みのる率いる鈴木軍。鈴木みのるが、オカダを苦しめ後藤洋央紀からNEVERのタイトルの強奪・・・と徐々に勢いを増している。先日の広島大会で王座陥落したものの、タイチと金丸義信のJrタッグチームも含め、ロスインゴよりもねちっこく卑怯な介入も持さないファイトスタイルなど、観客からのブーイングも日増しに大きくなっている。本来はレスリングの職人ともいえるスキルの高い集団だけに、より狡猾なセコンド介入とのコンビネーションでリングを席巻するポテンシャルはある。
なお、殆ど絡みがないロスインゴとの抗争が勃発した場合の両者の反則と介入の応酬といった「混ぜたらキケン」なマッチアップも残されている。
4位:BULLET CLUB
イッテンヨンのオカダ対ケニー・オメガの凄まじい名勝負が未だに記憶に刻まれているが、BULLET CLUBに関しては、ヤングバックスのJrタッグ、ゲリラズ・オブ・デスティニーのタッグ王座と次々と失い、翌月はメンバー全員が欠場と、いいところが全くなかった。唯一4月シリーズからバッドラック・ファレとオカダの抗争という話題が浮上、ファレが一連の戰いの中で“化け物”感を増している中、さらに大化けする可能性に期待したいところだ。
正直なところ昨年のG1制覇から、最高のキャリアを経験して来たケニー・オメガのやや燃え尽き状況からチーム全体が立ち直っていない感がある。ケニーの完全復活でユニットとしても奮起し、それぞれがタイトル戦線に復帰することが重要だ。
5位:CHAOS
オカダの凄まじい戰いぶりを見て、この評価はやや酷な印象ではあるが、快進撃の裏で今「CHAOS」というユニットはアイデンティティを失いつつある印象だ。本来ヒールユニットと正統派のミックス集団ゆえに「混沌」なるネーミングだったことを忘れている人もいると思うし、次々と登場した新種の悪い軍団の中で、どちらともつかない立ち位置のままここまで来ている。
敢えて「ヒール」を感じる場面を挙げるとしたら、オカダの常勝路線に対する観客の反発的な雰囲気を会場に行くとひしひしと感じられることだろうか。4月の両国での柴田戦は過半数、ひょっとすると8割位は柴田への声援が飛んでいた。
彼らがヒールユニットという体であれば、これは「名誉」なことであるが「強すぎて憎たらしいオカダ」だけであればもはやユニットではなく、オカダと仲間たちである。
新しい血を入れるというのは手っ取り早い選択肢だが、タグチジャパンのような既存メンバーによる再建方法も一つの選択肢。まずは本格的なリーダー選抜、タイトル面ではROPPONGI VICEの2人がJrタッグで唯一気を吐いている状況なので、この流れをユニット全体で取り込めるかが今後の課題といえるだろう。
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