“4人のおっさん”が立ち塞がった。5月3日に行われたチャンピオンズリーグ(CL)準決勝1stレグ。ユベントスを率いるマッシミリアーノ・アッレグリ監督は、ASモナコを相手に3バックを採用する。CB陣はジョルジョ・キエッリーニ、レオナルド・ボヌッチ、アンドレア・バルザーリ。そしてGKはジャンルイジ・ブッフォンだ。
今季は12月頃から4バックを採用し始めたアッレグリ。必然的にCLでも[4-2-3-1]の布陣を敷いて、ラウンド16ではFCポルトを、準々決勝ではFCバルセロナを、それぞれ2戦とも無失点でシャットアウトしている。セリエAに限っても、1月下旬のラツィオ戦から、モナコ戦の直前の4月28日ベルガモ戦まで(4月23日のジェノア戦は3バックを採用)、一貫して4枚のDFを後方に置いてきた。その流れを断ち切るかのように、モナコ戦でイタリア人の指揮官は3バックを選択する。そもそも4バックへの移行は、昨年11月にバルザーリが負傷したこともあったのだろう。今月8日に36歳になるイタリア代表DFが戻ってきていることで、アッレグリが再び3バックに舵を取ったとしても不思議ではなかった。
しかしモナコの布陣が[4-4-2]だったことが、ユベントスのCBが3枚となった最大の理由だろう。ラダメル・ファルカオとキリヤン・ムバッペの2トップを特徴とするモナコ。そのプレッシングとショートカウンターは迫力があるが、チームとして柔軟性に欠け、試合展開に応じた[4-4-2]の布陣変更は得意ではないようだ。20歳前後の若い選手が多く、個々の力任せのところもあるモナコ。そんな敵の素直な[4-4-2]は、ユベントスからすれば、思いのほか守りやすかったのではないか。
2トップに3バックで数的優位を保てるのはもちろん、DFラインに両ウイングバックのアレックス・サンドロ、ダニ・アウヴェスも下がり、FWのマリオ・マンジュキッチも献身的に戻る。先制して前半を折り返して後半に入ってからは、よりゴール前を固めるようになった。イタリア伝統のカテナチオ。何よりその中心は、前述したキエッリー二、ボヌッチ、バルザーリの3人だ。モナコ戦の時点で、それぞれ32歳、30歳、35歳。39歳のGKブッフォンも加えれば、平均年齢は優に30を超える、おっさんたちの守備陣。
年齢だけを考えれば、果たして18歳の怪物ムバッペを抑えることができるか、不安を抱かずにはいられない。しかしアントニオ・コンテ前監督の時代から、苦楽を共にしてきた4人。昨年のEUROでもそのままイタリア代表の守備を支え、ベルギー代表やスペイン代表の撃破に貢献。まるで華のないアズーリをベスト8に導いた。EUROで代表を指揮したのはコンテだったこともあるが、クラブと代表の両チームで主軸を担った4人は、世界広しと言えどキエッリーニ、ボヌッチ、バルザーリ、そしてブッフォンの他にいないのではないか。モナコ戦でも熟練の連動性を発揮して、超新星のムバッペも、ベテランのファルカオも無得点に抑えた。長い月日が築き上げた信頼関係に基づく鉄壁の守備。59分にイグアインが追加点を挙げてからは、より強固なものとなった。付け入る隙は見当たらない。
“4人のおっさん”の支えで、1stレグを2-0で勝利したユベントス。決勝トーナメントを通して無失点のままで、ファイナル進出も見えてきた。老兵は死なず、そしてなかなか消え入りそうにない。
文・本田千尋