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 今、アメリカで注目を集めている内部告発サイト「セキュアドロップ(SecureDrop)」。

 天才プログラマー、アーロン・シュワルツ氏が開発したこのサイトは、告発者が登録されたメディアの中からタレ込み先を指定して書き込むことができるシステム。送信されたメディアのジャーナリストが追加取材を行う。自分以外の人がアクセスしているように見せかけることで、告発者は痕跡を残すことなく、匿名性が保たれるのだという。

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 2015年、刑務所の電話システムを請け負っていた会社が、収監者と弁護士が交わした通話1万4千件あまりを不正に記録していたことがセキュアドロップを通じた告発で発覚。大きな社会問題になった。

 現在、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなど、アメリカ主要メディアでこのシステムの利用が増えているほか、イギリスのガーディアンやカナダのラジオカナダ、グローブアンドメール等、30社以上が利用しているが、日本の大手メディアによる利用はまだない。

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 イギリスのガーディアンはセキュアドロップの導入について「情報源の保護が困難になってきている。ガーディアンの記者に対して情報源が安心して語ってもらうためにできることは何でもする。そのために最良の技術が用いられることを嬉しく思う」と説明。元NSA内部告発者のエドワード・スノーデン氏の情報漏洩に触れ、ガーディアンは情報源の保護が大切だと考えているという。

 2015年に日本初の本格的な匿名告発サイト「Whistleblowing.jp」を開設した駿河台大学准教授の八田真行氏によると「日本では2ちゃんねる等、匿名の掲示板のようなものはあるが、それでも書き込み元のIPアドレスが分かってしまうので完全な匿名性がない」という。

 また「私は情報を受け付けることはできますが、それを追加調査をしてくれるジャーナリスト、マスメディアというのはなかなかいないというのが現実です。使い方を間違えるととても危険なのですが、日本の新聞社には、そうしたコンピュータの技術的知識を持った人が少ないですね」と話す。

 日本でも2000年に起きた三菱自動車によるリコール隠しや、2002年に起きた牛肉偽装事件などの内部告発で明るみに出た犯罪は数多い。しかし、告発者の素性が明るみに出る可能性も否定できない。

 トランプ大統領が「FBIは、国家安全保障に関する情報の『漏えい者』を全く止められていない」「内部の情報漏えい者さえ見つけられない。機密情報がメディアに渡っており、アメリカに壊滅的な影響をもたらし得る。今すぐ見つけろ」と指摘するように、安全保障などに関わる国家機密の漏えいとも紙一重だ。

 ハフポスト日本版編集長の竹下隆一郎氏は「公益性というキーワードが大事で、告発された人や組織、国家は一時的にダメージを負うことになるが、自分の組織の正義を越えた正義、日本の正義を越えた世界の正義といった具合に考えることができるか」と話す。

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 ジャーナリストの堀潤氏も「日本社会は内部告発者に対して厳しい。例えば、2010年の尖閣諸島中国漁船衝突事件で、映像を流出させた海上保安官に対し、社会はどれだけサポートができたのか?罪に問われた彼を応援する人たちもいたが、"ムラの掟を破った"という論調も強かった。一方で、Wikileaksのエドワード・スノーデン氏は、国家反逆罪に問われながらも、彼を守ろうと、絶え間ない市民運動が後押ししている」と指摘する。

 また、八田氏は「セキュアドロップは、政府など、本当に敵に回すと自分の身が危うくなるような問題に対し、告発者の素性を守れるようにしたいということでやっている。また『Tor』という、匿名性を実現する技術を使っているが、日本ではこれが犯罪に使われたことがあり、後ろめたいイメージがついていて、根付きにくいのかもしれない」と、アメリカと日本の違いを説明した。

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 内部告発サイトの実際の運用について清水勉弁護士は、匿名かつ機密性が高い場合は真偽の判別が難しく、報道するにあたってはさらに独自の裏取りが必要だと指摘。特に安全保障や国家機密に関する内部情報は作業に困難が伴うと指摘する。

 八田氏も「セキュアドロップにも、実際にガセネタが多く寄せられているといいますし、情報戦に悪用されることも考えられる。調査する側に判断力が必要だと感じる。さらに情報を持つ記者が狙われ、ウイルスを仕込まれるといった危険性もある。お金がかかる調査報道は、経営が苦しくなってきている新聞社にとっては手を出しづらいかもしれない」と指摘、「日本でも、アメリカのように寄付やインターネットを利用した"准マスメディア"のようなものが出てくると良いのだが」と話した。 (AbemaTV/AbemaPrimeより)

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