麻雀業界で最も有名な弁護士がいる。プロ団体「最高位戦日本プロ麻雀協会」に所属する現役プロでもある津田岳宏氏(37)だ。学生のころから麻雀に親しみ、今では関連企業の顧問を務めつつプロとして対局にも参加。さらに自ら大会も開催している。「将来の夢は麻雀界のボビー・ジョーンズになることです」と語る“麻雀弁護士”に、麻雀との関わり方について聞いた。
津田氏が麻雀に触れたのは中学生のころ。友人宅にあった牌に触れたことがきっかけだった。「それ以来、麻雀をしなかった空白の期間はないですね。仲間内でも強かったので。運と実力のバランスが絶妙で、他の遊びより断トツにおもしろかった」と、当時からすっかり虜になった。
高校を奈良県の名門・東大寺学園、大学は京都大学へと進学し、後に司法試験に合格。法の道を選んだ。「勉強にとても役立ちました。ペーパーテストはかなり戦略性が問われる。合格というゴールを麻雀のアガリだとすれば、そこにどう近づいていくか。勉強もやればいいというものでもない。法律は範囲が広いので、どこを重点的に勉強していくか」と振り返った。「受験生全体のレベルが、麻雀の場の状況だとすれば、自分の能力が手牌というところでしょうか」。個々の能力が異なる点は、同条件から始まる将棋・囲碁ではなく、麻雀の方が近いという。
裁判も麻雀に置き換えられる。証拠がそろっている事件、そろっていない事件。これもランダムに並ぶ手牌と同じだ。「もらった材料に合わせてどう戦うかは、麻雀も裁判も一緒。どちらも強い人は不利な状況でも最後まで粘るし、勝機がある時は絶対に取りこぼさない。勝てる時は確実に勝ちますね」と、強者にも共通点がある。
今では自ら事務所を構える立場だが、若手弁護士時代の1冊の著書が「麻雀を仕事」にするきっかけとなった。「弁護士になって2年目のころ、麻雀に関する本を出したら、業界の方の目に留まって。そこからいろいろとお仕事をいただくようになりました。その後、関連して賭博罪を勉強して詳しくなったら、他の業界のお仕事も増えるようになって。これもすべて麻雀のおかげですね」とはにかんだ。
業界関係者に誘われ、2年前にプロになった。「1人の競技者になって、新たな魅力に出会えました。やっぱり真剣勝負の度合いが、趣味でやるのとは違いますね」と、強者との対決を満喫している。「結局、自分は学生時代から法律と麻雀を行き来している気がしますよ」と笑った。「業界の方々は、麻雀が強い人の話じゃないと、ちゃんと聞いてくれない雰囲気もある」ため、多くの人が見る放送対局ではさらに気合が入る。
理想に掲げるのは、「球聖」と呼ばれた伝説のゴルファー、ボビー・ジョーンズだ。ジョーンズはアマチュアながら全英オープンをはじめ、メジャー選手権で7度も優勝。さらに引退後は弁護士としての能力を発揮し、マスターズの創設やオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブのコース設計、競技規定の整備などにも尽力すると、没後に設立された世界ゴルフ殿堂で、最初に殿堂入りした1人となった。「あの人はゴルフ界の黎明期に、選手としても活躍して、スキーム作りにも力を発揮した。麻雀界のジョーンズになるのが、壮大な夢ですね」と語った。
そのためには、プロ団体でも一目置かれるために、タイトル獲得が眼前の目標となる。「ジョーンズになるためには、タイトルを取らないとね」。取材に応じた日は、所属する団体のタイトル保持者を表彰する記念のパーティー。まずは表彰のステージに立つのが、津田氏の目標だ。
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