北朝鮮が14日に発射した新型の弾道ミサイル「火星(ファソン)12」。韓国メディアは、これが通常の角度で発射された場合、アメリカのグアムなどが射程距離に入る5000kmまで飛ぶ可能性があると報じており、アメリカ本土の攻撃が可能なICBM=大陸間弾道ミサイルの実現にまた一歩近づいたとの見方が出ている。
今回の新型ミサイル発射について東京財団研究員の小原凡司氏は「従来の中距離弾道ミサイル、ムスダンの改良でグアムまで射程に収めることはできる」「今回のミサイルを安定的に飛ばすためには、まだまだ実験が必要なレベル」としながらも、いずれアメリカ東海岸まで撃てるようになるということを見せつける意図があるのではないかと指摘する。
さらに「北朝鮮は去年の早い段階で核の小型化の成功も発表している。北朝鮮にとって、弾頭ミサイルを大気圏に再突入させるための技術開発が今後の課題だが、何らかの取り組みを始めていることは間違いない」とし、「やはり北朝鮮が核兵器の開発を止めることはない」との見方を示した。
そんな北朝鮮は先週、ノルウェーのオスロでアメリカ側と非公式協議を行っている。
小原氏は「当初アメリカは米朝首脳会談の実施に向けては"核開発をやめること"を条件としていたのが、"適切な条件"というように表現を変えてきている。オスロでは、その"適切な条件"をどこに落とし込むのかが話し合われたのではないか」と、アメリカ側の態度の軟化について指摘する。
しかし、ここまではアメリカの"計画通り"だという。「普段は位置を秘匿している潜水艦を浮上させ、入港するところまで見せた。しかもそのデッキには特殊部隊NAVY Sealsを敵地に送り込むためのシステムが搭載されていた。いま朝鮮半島周辺にいる兵力だけでは不十分ということもあるので、軍事力を見せつけ、圧力をかけて対話のプロセスに乗せる、ということをやってきた。これに失敗した時は軍事的解決ということになる」(小原氏)。
一方、北朝鮮の"後ろ盾"としての立場から、核実験の実施をひとまず止めさせることに成功したとみられている中国だが、今回のミサイル発射は、北京で「一帯一路」サミットが開幕した当日のこと。習近平国家主席としては、顔に泥を塗られた格好だ。
15日、中国外務省の華春瑩報道官は「中国側は北朝鮮が国連安保理の決議に違反し、弾道ミサイルを発射する行為に反対する」と、北朝鮮をはっきり非難している。
小原氏は「オスロでの非公式協議をお膳立てしたのは中国だと言われている。そんな中国に対し"お前たちも見ておけ、北朝鮮は思い通りにならない"というメッセージを送ったのではないか」と推測する。
経済的には中国を頼らざるを得ない北朝鮮だが、当の中国も「本音で言えば、金正恩でなくても困らない。北朝鮮には静かに、ただそこに緩衝地帯としていてくれればいい。米軍の軍事力が自国の周辺に来るのは困る」(小原氏)という立場だという。
大国2国を相手に挑発をやめようとしない北朝鮮。しびれを切らした両国の"リミット"は迫っているのだろうか。
小原氏は「アメリカが"もうこれ以上我慢できない"となってしまう時間が迫ってきている。アメリカが北朝鮮を攻撃したら、日本にはどういった被害が出るのか、そろそろ本気で考えなければならない。また、日本はアメリカ・中国のような大国ではないので、北朝鮮に直接的な影響を行使するのは難しいが、良好な関係を築いている東南アジアの国々を通じた働きかけはできるのではないか」と話した。(AbemaTV/AbemaPrimeより)