「B-Boy Park」や「UMB」など数々のMCバトル/ライブバトルで残した実績や、映画『SRサイタマノラッパ― ロードサイドの逃亡者』への出演などが知られるHI-KING TAKASEが、RHYMESTER擁するstarplayers RECORDSから新作『NEWタカセ』をリリースした。かねてからRHYMESTERへの敬意を公言してきた彼にとって、今回のリリースはアルバム収録曲のタイトルそのままに、願ってもない「待ちわびた風」。不確かな明日にひるむことなく、自分のペースとスタイルで〈遅れてきたルーキー〉(「走って掴んだマイクで上げる」)たる新たな一歩をここに踏み出す。
――以前強かったライミングのこだわりを解いて、日常と地続きな世界観と思いが前面に出たなと。
HI-KING TAKASE:普通の歌とかすっと入ってくるじゃないですか。ラップはパンチというか、ずっとアクセントみたいな感じがいいんすけど、世界観は弱くなるかなあって思ったりしたんで、そういうのはちょっと考えましたね。
――曲作りの上で大事にしたことはありますか?
HI-KING TAKASE:全部が全部そうじゃないですけど、初めて聴いてパッと何がテーマの曲かわかるっていうことはないとあかんかなって。その中でいろんな音やテーマでやったつもりなんですけど、出来上がってみたら今回は心機一転っていう一貫した方向性やったかなと思います。わりとユルいトラックをチョイスして、リリックの中でも言ってるんですけど若者には出せへんもんが出来たかなと思うけど、かと言って大御所でもないし自由なポジションなんで、何かに縛られてるみたいなもん全然ないんですよ。ある意味模索中で、もっとハマる音あるんちゃうかとか、面白いのあるんちゃうかとか思ったりはしますし。
――その意味でも、アルバムタイトルで言うように〈NEW〉なんですね。
HI-KING TAKASE:元々ラッパーとしてイキってるだけの時期が〈OLDタカセ〉やとしたら、何年もかけて〈NEWタカセ〉になった感覚があって、「急に明るなったなあ」って言われた時期があったんですよ。奈良から大阪に移って、自分から交流を持とうという興味がどんどん出てきて(笑)。
――大阪に移ったのはいつ頃なんですか?
HI-KING TAKASE:それが2010年ぐらいですかね。極端に言ったらホンマに奈良にいてる時とかはラップがイケてたらええやろみたいに思ってたんですけど。単純に友達が少なかったんでしょうね(笑)。
――はは。そうして交流が広がっていくことで自分の音楽について考えることも多かったんじゃないかと思いますが。
HI-KING TAKASE:奈良に住んでて「レペゼン奈良」ってずっと言うような曲調やったりライヴパフォーマンスやったんですけど、大阪に住んだ時にじゃあ俺「レペゼン大阪」って言うんかなって思ったらそれは違うなと思って。で、レペゼンって何なんやろうと考えたら要は自分がやってきたことを表すことが一番レペゼンっていうことなんやなって解釈して、こんな人もいるんや、あんな人もいるんやとか、もっと気ぃ合う人いっぱいいてるやんとか、もっとカッコいい音楽いっぱいあるやんとか、人と直接会わんと体感出来ひん感覚があったんかな。
――引いてはそうした意識が今回のアルバムにつながっていると。一人じゃアルバムもできないわけだし。
HI-KING TAKASE:だいぶつながってますね。たぶん〈OLDタカセ〉のままやったら出せてへんのちゃうかなっていうぐらい。
――その中で、度々出場したバトルはどういう位置を占めるものなんですか?
HI-KING TAKASE:それも〈OLDタカセ〉と〈NEWタカセ〉では全然違くて、一時期その真ん中の〈MIDDLEタカセ〉ん時は「バトルなんかもう出えへん」ってなって見にも行かへんぐらいのメンタリティの時もあったんですけど、〈NEWタカセ〉のメンタリティになりだして、できること全部やった方がラッパーとしていいなと思って。ラッパーってそういうもんなんやろうしそうなりたいなと思いだしたんですよ。バトルは勝ち負けを決めるもので勝つべきやし、勝たなダメなんですけど、負けてもあいつイケてたなとかおもろいなとか、あの人の曲聴いてみたいなって思わせたらその方が勝ちやなと思って。あとは時系列が無茶苦茶になるけど、〈MIDDLEタカセ〉ぐらいの時期に(サイプレス)上野君が僕からしたらすげえいい動きしていいポジションにいてんにも関わらずバトルガンガン出てるからカッコいいなと思って、それにも刺激をだいぶもらったし。
―—なるほど。話をアルバムに戻すと、トラックメイカーとのやりとりはどうでした?
HI-KING TAKASE:わりと普段から交流さしてもらってる人が多いんで、ひょっとしたら自然と、やっとタカセタイミング掴もうとしよったな、ぬるま湯から抜け出そうとしとるなっていうのを感じてくれたと思いましたね。結構無理なスケジュールでお願いしたトラックメイカーもすごい速さで返してくれたりとかあったんで、そこはホンマに一緒に走ってもらったっていう感謝しかないです。
――中でも「DEMO No.1」はDJ JINさんのトラックでラップした曲だけに思い入れも強いんじゃないかと。
HI-KING TAKASE:もちろんトラックもイケてたんですけど、JINさんとやらしてもらったんは思い入れありすぎて。これは初めて作ったデモを持ってイベント行って配ろうぜみたいなところから始まる曲なんですけど、自分がやり始めた時の感覚、思いが自然と出たし、嬉しかったっすね。
――改めてアルバムとしての手ごたえを聞かせてください。
HI-KING TAKASE:いい感触ももちろんありますし、やっと来たぜって感覚もあるし、何よりこれを売らなあかんなってのが一番。歌詞も読んでもらいたいし、ジャケットのデザインも味わってもらいたいんで、是非CDで買ってくださいって気持ちです。
――アルバム最後の「Movin’」に「自分らしくいれれば一番」っていう歌詞がありますけど、『NEWタカセ』を肩肘張らずに作品にできたことである意味その目的は果たせたとも言えますよね。アーティストとしてはこの先にどんな目標とか夢がありますか?
HI-KING TAKASE:これはたぶん怒られると思うんですけど、一人RHYMESTERになりたいです、というのはデカすぎる目標なんで置いといて、もちろん技術磨くとかこういうふうにした方がいいっていうのは日々あります、それは今の自分に出来ることやるしかないじゃないですか。だからそれを見てもらえるようなとこにまで持って行けたらいい。日々精進ですよね。
――アルバムを聴く人達にさらに伝えたいことがあれば。
HI-KING TAKASE:ライヴも5月、6月とちょっとずつ増えるんで是非見てもらいたいです。それぞれ違う場所で違う味のライヴになると思うんですけど、こうやってベラベラ喋って僕がちゃんと着地できるかみたいなとこもご期待していただきたいですね。それがまさにライヴやと思ってるんで。
TEXT:Hiroyuki Ichinoki
PHOTO:Yoshihito KOBA
アルバム『NEW タカセ』 (発売中)
【TRACK LIST】
M.01: 走って掴んだマイクで上げる Lyrics by HI-KING TAKASE Produced by 法斎Beats
M.02: 待ちわびた風 Lyrics by HI-KING TAKASE Produced by WATT a.k.a. ヨッテルブッテル Scratch by DJ MU
M.03: 猫 Lyrics by HI-KING TAKASE Produced by 法斎Beats
M.04: ママチャリ Lyrics by HI-KING TAKASE Produced by 法斎Beats
M.05: I Believe Lyrics by HI-KING TAKASE Produced by maruhiproject
M.06: One Mic feat. RAM HEAD Lyrics by HI-KING TAKASE Produced by Cosaqu
M.07: …けど I don't know Lyrics by HI-KING TAKASE Produced by TAKU a.k.a. K-City Prince (韻シスト)
M.08: The Memories Lyrics by HI-KING TAKASE Produced by maruhiproject
M.09: DEMO No. 1 Lyrics by HI-KING TAKASE Produced by DJ JIN (RHYMESTER)
M.10: COOK Lyrics by HI-KING TAKASE Produced by WATT a.k.a. ヨッテルブッテル
M.11: Movin' Lyrics by HI-KING TAKASE Produced by gon-zae Scratch by DJ 5-ISLAND