アクシデントが起こったのは、アメリカ・フィラデルフィアで開催された新日本プロレスとROHの合同興行でのことだった。ここに出場していた棚橋弘至が右上腕二頭筋を断裂する負傷。その結果、日本での大会を欠場することに。
棚橋の復帰は6月9日を予定。6月11日のビッグマッチ・大阪城ホール大会には出場できるという。この大阪城ホールでは内藤哲也のIWGPインターコンチネンタル王座に挑戦することになっているから、そこに間に合うのは不幸中の幸いか。
昨年も棚橋は負傷欠場しており、あらためてプロレスの、とりわけ新日本トップ戦線のハードさが浮き彫りになるできごとだった。同時に、欠場によって棚橋という選手の存在感の大きさを感じたファンも多いのではないだろうか。
現在、新日本プロレスは『BEST OF THE SUPER Jr.』シリーズが開催中。Jr.ヘビー級の試合がメインだが、棚橋も『タグチジャパン』のメンバーとしてマッチメイクに欠かせない選手だった。
棚橋の欠場により、急きょ小島聡が出場することに。その一戦目を終えたところで、小島はツイッターに「私では、棚橋弘至の代わりになればかったと思う。タナは、新日本でも特別な存在だから」と記している。
おそらく誰であろうと、棚橋の“代わり”はできないだろう(逆に言えば小島には小島のよさがあるのだが)。棚橋ほどのオールラウンダーは、プロレス界全体を見渡しても珍しいはずだ。
IWGP王者としてのイメージが強い棚橋だが、中邑真輔や内藤とはインターコンチ王座戦も。そうかと思えばタグチジャパンでの“楽しいプロレス”もハマっている。またタイトルマッチでは、挑戦者として必死に闘う姿が似合う一方で。王者としてどっしり構える闘い方もできる。
相手選手に声援が集まった場合はヒールとしての振る舞いも辞さず、足攻めなど一点集中攻撃の的確さは時に憎らしいほどだ。そして試合に勝てば、エアギターで大会全体を締めくくり、誰のファンであっても観客を確実に満足させてみせる。
あらゆるシチュエーションの試合で、どんなポジションであっても棚橋弘至の存在感を残し、プロレス醍醐味を伝える。そんな芸当ができるのは、やはり棚橋だけだろう。その闘いを振り返る時には、幅の広さにも注目してもらいたい。
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