またしてもKO勝利だ。それも圧巻の1R決着。5月20日のRISE後楽園ホール大会、超満員の観客が見つめる中、ISKAオリエンタルルール世界バンタム級タイトル防衛戦に臨んだ“神童”那須川天心は、挑戦者の“アベンジャー”ライアン・シェーハンに1ラウンドKO勝利を収めた。
「隙があったら開始10秒でも倒しにいく」という言葉通りの速攻だった。ボディブローをヒットさせ、「相手が嫌がってるのが表情で分かりましたね」という那須川は、スピーディーな右のジャブから左のボディストレート。いつもはボディへのフックが多いのだが、今回はストレートを集中的に練習してきた。それはライアンがムエタイスタイルで、ガードを開き気味にして正面を向いて闘ってくるからだという。
昨年からKO、一本での勝利が続く那須川。「教科書に載る」という野望も口にした
戦前の分析と練習、それを試合で完璧に出しての会心の勝利だったというわけだ。「貫通させるイメージ」のパンチは「今までより効いてる」感触があったという。
これで立ち技19戦、MMA3戦全勝。6連続KO・一本勝利でもある。ムエタイ王者など対戦相手もレベルアップしているが、那須川の成長と勢いはそれ以上ということだろう。大会パンフレットの戦績欄にはKO・一本を表す「◎」がずらりと並び「これが学校の成績だったら凄いのに」と笑わせる場面も。
今後やりたいこととして、タイトルや対戦相手ではなく「教科書に載るようなことをやりたい」という。「教科書って誰でも読むものじゃないですか。イチロー選手が載ってるのを見て凄いなと。そういうことを、昔から授業中に考えてたんですよね」。“神童”は野望のスケールも大きい。しかし今の那須川がどんな目標を掲げても「それは無理だよ」と笑う者はいないだろう。
文・橋本宗洋