やはり世界のMMAの世界でも「ウェルター級現役最強」の一人という呼び声はだてではなかった。5月19日にロンドンで開催されたアメリカの総合格闘技団体「ベラトール179」で、ランキング3位のポール・デイリーに2R1分45秒、リアネイキッドチョークによる鮮やかな一本で完全勝利した。
選手の質も量も充実し「猛追するナンバー2」という印象のベラトールに、あえて移籍した旬のUFCファイターとして注目を集めてきたマクドナルド。その初陣、ウェルター級階級3位のポール・デイリーに何もさせずに勝利した。
母国イギリスでの勝利を誓うデイリーに対し眼光鋭く相手を睨みつけるマクドナルド。ゴングと共にマクドナルドの左右のパンチがかいくぐるようにデイリーにヒット、間髪入れずに右足めがけて鋭いタックル。
バランスを崩しながらケージ際でこらえるデイリーに対して、掴んだ足を上下左右に揺さぶりながらケージから中央へと引きずり回す、左足でバランスを取りながら抵抗し耐えるデイリーだがあっさりテイクダウン。トップを取りピッタリと頭を付けながら、腰を上げ潜り込むようにパウンドを放つ、デイリーもケージを使って脱出を狙う素振りを見せるが、素早く察知したマクドナルドが身体を180度回転させ可能性を摘み取り、さらに密着したまま強烈なパウンドを打ち込む。さらにサイド気味に組んだ場面でもボディへ肘などを打ち込む抜け目ない攻撃と、打撃、体重のかけ方なども完璧。一瞬、身体が離れそうな場面でも、ワンテンポおいて強いパウンドと全ての攻撃に無駄の無いマクドナルド。ラウンド後半も体を密着し上になった体勢からデイリーを完全に押さえ込んだ。
2Rは、前のラウンドとはやや違う入りに。デイリーが飛び蹴りを見せると、マクドナルドが右ハイ、右前蹴りをみせ、今度は両足から左足へと速いタックルで再びテイクダウン成功。サイドポジションから、肘が鈍い音を立てる、トップからバックと自由に体制を換え、最後は鮮やかにからリアネイキッドチョークで一本。
UFC時代の1Rで顔面を破壊されてから不屈の精神で試合をひっくり返す、もしくは最後まで相手を苦しめる泥臭くて感動を呼ぶファイトスタイルで人気を博したマクドナルドだが、この試合では終始クールに、「MMAの教科書」というべきリスクを取らない戦い方で完璧な勝利を掴んだ。
この1~2年キャリアの晩年を迎えたファイターだけでなく、UFCのトップランカーがUFCからこのアメリカ第2の格闘団体の門を叩いてきたが、やはり今回のローリー・マクドナルドは格が違い過ぎる印象だった。当然ながら3位にここまでの大きな差を見せつけ、上をみるとチャンピオンのドゥグラス・リマとアンドレイ・コレシュコフという状況で、彼がベラトールのウェルター級タイトル戦線において早ければ次戦にも名乗りをあげるのは確実だろう。
今回の大会にもケガで欠場とピリッとしないものの、その爆発力と実力に定評のある「MVP」ことマイケル・ペイジや、新たにUFCから加わったロレンズ・ラーキンなど、気がつけば人材の宝庫となりつつあるベラトールのリング。ローリー・マクドナルドのベラトール移籍をトリガーに、この「第2勢力」のウェルター級がトップといわれて来たUFCにぐっと近づいているのはまぎれもない事実である。