先週に続き、今年8回目のミサイル発射を行った北朝鮮。今回の中距離弾道ミサイル「北極星2」は、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の射程を伸ばすため、地上型に改良された新型だと発表されており、発射に成功したのは2月に続いて2回目となる。
今回の発射の意味、そしてアメリカの対応について、笹川平和財団特任研究員の渡部恒雄氏に話を聞いた。
■"まあしょうがないかな"という認識なのではないか
渡部氏は、アメリカがこれまでも圧力をかけてきたものの、"レッドラインは示さない"と言ってきたと指摘。現状では"恐らくミサイルくらいだったらいいかな""まあしょうがないかな"という認識なのではないかとし、アメリカが本当に深刻な事態だと捉えるのは「核実験をした時、アメリカに届くSLBMが成功した時、大気圏再突入技術を確立させ、核弾頭が機能するようになった時だ」と話す。
米朝は1994年に"核実験をレッドライン"と設定していたにも関わらず、その後の北朝鮮による核実験実施の際には、結局武力行使には至らなかった。このことから渡部氏は「レッドラインがなし崩しになるのは北朝鮮も分かっている」とし、「一応圧力をかけることで北朝鮮が抑制的になり、最終的には交渉の場に出てくればいいなと思っているのでは」とアメリカの意図を分析した。
実際に、韓国の文大統領に対する「現段階で軍事行動を考えていない」というティラーソン国務長官の発言、「核などの実験中止前提に北と対話の準備」というヘイリー大使の発言などに見られるように、トランプ政権の中枢からは、トーンダウンしたかのようにも見える発言が漏れ始めている。
■「トランプは何をするかわからない」
実は先月の米中首脳会談の際に、中国の習国家主席がトランプ大統領に対し、北朝鮮に対して具体的な行動をとるまでの猶予期間として「100日間」を求め、アメリカ側もそれを受け入れたという。
「中国はアメリカに対し、武力は使わず平和的にやってくださいと言ってきた。猶予を求めた意図はわかる。アメリカも、北朝鮮に核放棄をさせることが簡単なことではないとわかっている。ただ、もはや説得だけでは効果がない。北朝鮮と取引をしているような国や会社や人物に経済制裁を与えて取引できなくする『二次制裁』という手段もある。中国がそうした本気の経済制裁をするかどうか、アメリカは見ているのだろう」(渡部氏)。
アメリカの外交政策は今後どうなっていくのか。渡部氏は「100日間経ったら軍事行動を起こしてもいいというわけでもない。また、どちらかというと今の優先順位はIS対策。これまでのアメリカ外交から見れば、北朝鮮が核兵器を作ってしまったとしても、その使用について抑止が効いていれば"仕方ないかな"という感じになるのではないか。ただ、トランプは何をするかわからない。そこだけが読めない」と、不測の事態が起こる可能性も決してゼロではないと示唆した。(AbemaTV/AbemaPrime)