5月18日、DDT屈指の人気選手にして世界最高のゲイレスラーとも言われる男色ディーノが、40歳の誕生日を迎えた。対戦相手の股間と唇を執拗に狙うファイトスタイルのみならず、抜群のコメント力やコラム連載などでも注目され、“文化系プロレス”を牽引してきたディーノも、いよいよ不惑である。
翌日には、DDT事務所にて、異例の「誕生日一夜明け会見」を実施。ディーノは「40歳になるという自覚がなかった。信じられない。夢のような気持ちです」、「もっと練習して40歳の価値を高めたい」と、節目を迎えたという意味ではタイトル獲得同様の思いでいるようだ。
ちなみに40歳を迎えたということで厄年も間近。40歳になったとたん、「ものもらい」もできてしまったという。それだけに「体力は落ちていくので、それ以外の部分で補わないと」と、ベテランっぽいコメントも。
(ディーノのパートナーであるアイザックスは、お尻の力で相手の腕を折る秘技「ミラクル・アス」の使い手だが、大石は攻略法を開発したとか…)
5月28日のDDT後楽園ホール大会では、石井慧介、ロイズ・アイザックスと組んでNωA(大石真翔&勝俣瞬馬&MAO)が持つKO-D6人タッグ王座に挑戦するディーノ。リング上での活躍ぶりは、40代になっても変わることがなさそうだ。
だが、ディーノにはリング外でのもう一つの闘いもある。以前から折に触れて語られてきた“実家からのプレッシャー”との闘いだ。これは都会で一人暮らしをするほとんどの人間が体験する、非常にシビアな闘い。すなわち「結婚はまだか」、「将来どうするのか」というプレッシャーをいかにかわし、はねのけるかである。
「40歳になって最初に話したのは母親です。夜中の1時から1時間半ほど。母親が仕事をやめる、やめないという話で、お前はどうなんだと」
誕生日を迎えながらも話がヘビーな方向に向かったディーノだが、「両親には体の面など心配をかけてしまうけど、まだまだ頑張っていきたい。同世代の人たちに勇気を与えられるお仕事だと思うので」と気持ちは前向きだ。
ゲイレスラーという特殊すぎる職業に就いているディーノ。しかし“対実家・両親”に関しては、大きな共感を呼ぶのではないだろうか。
(王者・竹下はタイトル防衛に「僕が高校生の時点で1度、勝っているので」と絶対的な自信を見せている)
また5.28後楽園大会では、ヤス・ウラノが竹下幸之介のKO-D無差別級タイトルに挑戦することも決定。ウラノは41歳、この試合がDDT所属としてのラストマッチになり、今後はフリーとして活動していく。
「この1試合で経験とテクニックをすべて吸収したい」という王者・竹下に対し、ウラノは「チャンピオンになったら(両国国技館大会のある)8月20日までオファーを断ろうかな。フリーだからそれでもいいんですよね。そうすれば両国のメインに立てる」と心理的揺さぶりとも取れるコメントを残している。
不惑のゲイレスラー・ディーノと41歳で独立を決意したウラノ。若い世代のファンに支持されていると言われる現在のプロレス人気だが、この大会はアラフォー世代の声援が大きくなるかもしれない。
文・橋本宗洋