私たちが日頃よく目にする「雑草」を研究する人がいる。静岡大学・雑草学の稲垣栄洋教授だ。
雑草というと、抜いても抜いても生えてくるような“強い”イメージを持ちがちだ。しかし、「植物学では雑草は強い植物だとは言われていない。むしろ“弱い”植物。強い植物が入ってこないような場所に生えている」と稲垣教授は話す。
そもそも雑草とは、「望まれないところに生える全ての植物」のことを指す。「雑草学」はその雑草の性質を明らかにして防除法を作っていく学問だ。明治時代からある、歴史ある学問だという。農薬などを作るため雑草の種類や生態を研究し、稲垣教授の「雑草学研究所」では、雑草の人工栽培も行っているそうだ。
稲垣教授に最初に専攻した学問を聞くと「作物学」を学んでいたという。
「稲とか麦とかを育てている時に横から変な草(雑草)が生えてきた。稲はどう育つかが分かる、教科書にも書いてある。この見たこともない草がどんな花を咲かせるのか、だんだん気になって、毎日世話している間に雑草に惹かれていった」と、雑草学へ興味が移った理由を語った。
■タンポポは森の中では生きていけない
街へ繰り出すと、様々な雑草を見つけることができる。例えば、「カタバミ」という雑草はどこにでも生えているそうだが、稲垣教授は「これは種を弾きとばすような仕組みになっていて、こういう隙間に種が飛んでいっているのかもしれない。抜いても抜いてもなくならない」とメカニズムを説明する。
このカタバミは、家が絶えないことを一番大事とする戦国武将が、家紋としてよく使ったという。四国を治めた戦国武将・長宗我部元親の家紋もカタバミだ。
人とゆかりの深い雑草は他にもある。「オオバコ」という雑草は「踏まれるのが大好きな雑草」だという。
稲垣教授はその理由について、「種が水に濡れるとベタベタくっつく。で、踏まれた時に靴にくっつく。あと、車のタイヤとかにもくっつくんで、踏まれることは耐えることや克服することではなくて、踏まれたくてしょうがない」と語った。
「なんでこんなところに生えているんだろう」と思う雑草だが、その場所に生えていることにはそれぞれ意味があるという。
また、雑草がいない地域について、稲垣教授は「雑草って結局、競争に弱い。たくさん植物があるところはダメ。だから森の中とか実はいない」と意外な事実を説明してくれた。
例えば、タンポポの種などが森の中に入ったとしても、タンポポは生きていくことができないそうだ。稲垣教授曰く、「西洋タンポポは雑草の中でもさらに競争に弱い。だから、割と都会に暮らしている。公園みたいなところに行くと、意外に西洋タンポポはいない」という。
■雑草は“一番重要な変化しないもの”に合わせて変化する
稲垣教授は雑草について、「雑草はどうあるべきかは全然わからない。図鑑に書いてあるのと全然違う姿や違う時期に咲いていて、それが間違いかというと間違いではない。雑草の世界はバラバラでもっと自由だ。なんで変化できるかというと、変化できないものがあるから。それは何かというと種を残すこと。そこはブレない。種を残すためには、どういう成長をしたっていい。だから雑草は必ず花を咲かせて種を残す。別に小さくてもいい、縦に伸びなくてもいい、そこはどうでもいいけど種を残すというところはブレない。“一番重要な変化しないもの”に合わせて変化していく」と、弱い植物と言われた雑草の強さを熱く語った。
また、稲垣教授曰く、生き物が生きていくうえでの条件が3つあるそうで、「競争に勝つこと」「忍耐すること」、そして「柔軟に変化すること」だという。
雑草の“強さ”には、現代人が幸せになるヒントが隠されているのかもしれない。(AbemaTV/AbemaPrimeより)