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■価格は185万円!

 日本の「全自動衣類折りたたみ機・ランドロイド」が世界を驚かせている。大きな冷蔵庫のような黒いボディの下段に乾燥した洗濯物を突っ込むと、自動でたたみ、仕分けした状態で出て来るという優れモノだ。価格は185万円と少々高額だが、世界のトップクラスのテクノロジーが搭載されている。

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 「洗濯物をたたむ」という、誰もが"面倒くさい"と思っていた家事を代行してくれるこの家電の登場は、世界中でニュースになった。しかも発明したのは大手メーカーではなく、とあるベンチャー企業。この「セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ」社を率いるのが阪根信一だ。阪根は今年2月、優れた技術を開発した企業に送られる第3回日本ベンチャー大賞・技術革新賞を受賞した。

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 ニュースになったのはそのユニークな着想だけではない。開発にかかった数十億円の費用、そして足掛け12年にもおよぶ壮大な開発期間も驚きを与えた。

■「徹底した秘密主義」

 兵庫県芦屋市に生まれた阪根は、技術系サラリーマンだった父が土日もものづくりに明け暮れている背中を見て育った。そんな父の教えは「人の真似はするな」だった。勉強ができる少年時代で、小学校のときには学級委員長を務めた。「勉強が生きがいだった」というほど勉強にのめり込み、友達はゼロの状態だったという。

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 そんな阪根に転機が訪れたのは大学時代だった、スポーツに打ち込もうと一念発起して入部したスキー部で、先輩から執拗に「人生は目標設定だ」と叩き込まれた。食事の席でも、合宿中でも常にその先輩から「目標設定だ」と言われ続けたことで"勘違いしてしまった"と振り返る。

 このまま目標もないまま大企業に入っていいのか、と自問自答を繰り返すうちに阪根が選んだのが、アメリカ留学だった。「現地で世界中の天才たちが集まる様子を見て、こういう研究者たちが集うラボみたいなところがあればいいな、と思うようになった」。

 のちに阪根がセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズを生み出す原体験だ。

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 今や社員数360人、グループ会社を含む売上高は42億円にまで成長した「セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ」では、「全自動衣類折りたたみ機械」以外にも、「いびき解消装置」など、ユニークな発明をしてきた。軽くて丈夫なゴルフのカーボンシャフトは、プロゴルファーのジャンボ尾崎が契約するほどの完成度の高さを誇る。

 世界を驚かせる家電を作ることを目標に掲げる阪根は徹底した秘密主義。人材募集でも、何を作っているかを明かすことはない。入社するまでは完全な秘密なのだ。

 「(ランドロイドの開発中は)製品が何もないわけですから。『入社して何をするんですか』と言われても『言えません。秘密です』だけ。これで入社してくるわけですから、変人が多いですよね。でも『自動洗濯物折りたたみ機』であると当てられたことは一度もありません(笑)」。

■妻の言葉が開発のきっかけに

 「ランドロイド」の開発にあたって、阪根はあるポリシーを掲げた。それは「世の中にないものであること、人々の生活を豊かにするもの、技術的に難しいもの」という3つの条件だ。

 ところが、この3つの条件を満たすものはほとんど無かったのだという。

 特に「世の中にないもの」の条件を満たすものがなかなか見当たらなかった。思いついたアイディアの多くが論文や特許として大学や研究機関が実現させていた。

 自宅に帰って妻に話をしてみると「洗濯物折りたたみ機でしょ」と即答された。調べてみると、誰も研究していない。シャツを所定の位置にセットすれば畳んでくれる機械は、クリーニング店向けの業務用としては存在するが、洗濯物の山の中からキレイに分別し、たたむ家電は未だ存在しない。

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 阪根は狙いを「自動洗濯物折りたたみ機」の開発に照準を定めた。

 しかし、「最初は5年で行けると思った。でも全然ダメでした。まさか12年もかかるとは思いませんでした」と阪根が苦笑するとおり、そこからが苦難の連続だった。

 開発資金を調達しようと、銀行や投資家に出資依頼の行脚をしたが、資金が集まらない。

 「研究開発型で製造業のベンチャーって、一番カネがかかる最悪の業種なんですよ」。

 プロトタイプすら完成していなかったため、資金提供のメドも立たなかった。さらにリーマンショックも追い打ちをかけた。経理担当者から「今月が乗り越えられないかもしれない」とSOSが上がったこともあった。なんとか60億円を調達、首の皮一枚つながるというギリギリの経営状態だった。

■ 最初のメンバーたちは次々と退職

 難航する開発、厳しさを増す経営…。愛想をつかし、最初のメンバーたちも次々と辞めて行った。

 「最初からいるのは僕ともう一人だけですね」。

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 「その一人」が北川宏司だ。「彼がいなければランドロイドは生まれていなかった」と言うほど、阪根が厚い信頼を寄せる。

 北川は「どういう装置にしたらいいのか、まったく参考になるものがなかった。だからひたすら洗濯物を畳んで、どういう装置にしたらいいのか考え続けた日々だった」と話す。

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■さらに"世界を驚かせる製品開発"も進行中

 「ランドロイド」の仕組みは、洗濯物の山の中から人工知能が衣類の形状を「認識」し、形状が異なるものをきちんと「掴み」、ロボットアームが「折りたたむ」という3つの段階によって成り立っている。中でも一番難しかったのが「認識」だ。人間であれば、洗濯物の山のなかから一部だけはみ出しているパンツを「パンツ」と認識できるが、AIはそうはいかず、何度も学習させる必要があるのだ。こうした難関を「トップシークレット」の技術でついに乗り越えた。

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 将来的に、ランドロイドは仕分けしてたたむだけではなく、自宅のクローゼットまで運ぶところまで進化させるという。さらに「その次」の"世界を驚かせる製品開発"も進行中だというが、もちろんどんな商品なのかは「すべて秘密です」とのこと。阪根の挑戦は続く。(AbemaTV/『創業バカ一代』より)

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