■ネット上では「こんなショボい容疑で逮捕するんだな」との声も
6日、指定暴力団・神戸山口組の井上邦雄組長(68)が携帯電話の詐欺容疑で逮捕された。4年前、神戸市灘区の携帯電話販売店で、自分で使うことを隠し他人名義で機種変更契約をした疑いが持たれている。
井上組長は1948年生まれの68歳。3代目山口組と2代目松田組の間で起きた大阪戦争にて対立組員2名射殺の首謀者として懲役17年の刑に服した。2015年8月末に6代目山口組から離脱、神戸山口組を結成し、組長になった。その神戸山口組は今年4月に分裂、任侠団体山口組が誕生している。
警察はこの「3つの山口組」の動向を警戒、先月30日には、神戸山口組の二次団体・山健組の本部に虚偽の申請で健康保険証を騙し取った疑いで家宅捜索を行ったほか、警察庁の坂口正芳長官が5日に開かれた全国の警察本部長を集めた会議で組織の幹部を検挙するよう訓示していた。
今回ポイントになるのは、井上組長が携帯を別人の名義で機種変更したという、いわば"微罪逮捕"だったという点だ
もし一般人であれば、ここまで厳しい取り締まりはされないとの見方もあり、ネット上では「こんなショボい容疑で逮捕するんだな」「どんどん追い込んでいくな!なんか喫煙者みたいだ!」といった声が上がっている。弁護士の田上嘉一氏も「本来なら逮捕はしないケース。携帯会社に実質的な損害もないため、早めに身柄は保釈されると思う」と話す。
首都大学東京の木村草太教授(憲法学)は「いわゆる暴力団排除条例で構成員の日常生活を制限しているが、平成25年の最高裁判決で、"暴力団の方は公営住宅から出ていってくれ"という請求が合憲だと判断されている。構成員には人権があるけれど、暴力団は暴力的不法行為を助長する団体なので権利を制限しなければいけない理由があるし、抜けようと思えば抜けることもできるというのがその理由。もちろん個別の事例で、この団体を暴力団と認定していいのかという争い方はあるだろうし、あまりにもひどい制限については違憲という判断が出る可能性はある」とした。
■"山口組3分裂" 仁義なき戦いの今後は
では、井上組長の逮捕にはどのような意味があるのか。
「今の時期だからだと思う」と話すのは、元北海道警の高橋博志氏。「本来なら身柄を抑える犯罪ではない。今後も厳しい取り締まりをしていくという社会に対するアピールと、何をやっても身柄を取っていくぞという所属組員に対するアピールだ」と指摘する。
元山口組系組長で、井上組長とも面識があるという猫組長は、「特にトップの方は基本的に悪いことはやっていないし、捕まえても意味がないということは警察の現場もわかっている。ただ、組織なので、上に対するアピールも必要だし、トップを捕まえることは有効。今回の逮捕がいわゆる"別件逮捕"ということでもない」と話す。さらに猫組長は「神戸山口組には影響はほとんどない。逮捕は事前に分かっているし、組織が弱体化することはない」と断言した。
では今後、「3つの山口組」はどうなるのだろうか。
猫組長は、井上組長の不在によって「今だったら使用者責任や教唆犯といった形で組長の責任が問われないので、抗争の一つのきっかけにはなりうる」と話す一方、「もし抗争をすれば死人が毎日出て、いずれ両組織が共倒れになることも分かっている。この状態で消耗戦に入れば、ヤクザの自体存在も危うくなる」として、抗争に発展する可能性は低いと見方を示す。
さらに「(神戸山口組の中核をなす)山健組から出ていった任侠団体山口組の問題については、あくまでも山健組内の出来事とみなされている。6代目山口組もこれを認めるわけにはいかないし、無視するだろう。将来的には一つになろうという動きになっていくと思う」と話す。
高橋氏も「特定危険指定暴力団に指定され、ほぼ壊滅状態となった九州の工藤會のように、警察は山口組についても法律で勢力を削ぎ取っていきたいと考えているのではないか」と推測、「山口組が繁栄するとは考えづらい」とした。(AbemaTV/AbemaPrimeより)