東アフリカに位置する共和制国家・ケニア。路上で生活している子どもたちは数万人を超え、その95%以上がシンナー中毒者だと言われている。多くの子どもたちは食べ物よりも安く済むシンナーに手を出し、飢えを紛らわせようとするのだ。
日本の小・中学生と同じ年齢くらいの子どもたちは、スワヒリ語で「拾う」を意味する「チョコラ」と呼ばれている。「チョコラ」たちは資源ゴミを拾い、回収業者に売ることで生計を立てている。しかし、その僅かな収入では空腹を満たすこともできない。そこで空腹を満たすために、シンナーに手を出してしまうのだという。
そんなケニアで、子どもたちを救おうと奮闘する１人の日本人女性がいる。松下照美さん（72）だ。ケニアの子どもたちの実情と松下さんの活動を追いかけたドキュメンタリー映画『チョコラ！』には、ストリートでもたくましく生きる子どもたちの姿が描かれている。
「シンナー返してよ」と泣き喚く子ども。「あなたはどうしたいの」と聞かれると「まだパンもらってない」と涙を流す。
わずかな金を大事そうに守る路上の子供たち。映画ではそんな厳しい現状が描かれている。
「夫を亡くし愛する者を失った私の中に、愛される事を求めている子どもたちが、本当にジグソーパズルが合うような感じでスポッと入ってきたんですね。だから支援に行くというより出会っちゃったみたいな」。松下さんは、子どもたちと接したときに芽生えた感情をそう表現する。
「エイズで両親を失った子もいます。また、シングルマザーの方がすごくスラムには多いんですね。例えば５人兄弟で全員お父さんが違うというのも結構あるケース。そうなると１人では育てきれないし、お金を得るために娼婦になる。お客さんが来ている時は、子どもたちは外に出される。ある程度大きくなると、子どもは自活せざるを得ないような状況に置かれますね。ケニアでは大学卒業でも３割しか就職できない状況。加えて政治の腐敗もあります」。
松下さんは、そんな貧困の中でも夢や希望を持って生きる子どもたちとの生活を楽しんでいるそうだ。
「将来はパイロットになりたいです」
「将来は外科医になりたいです。そして、他の子どもたちを支援したいと思います」
そう夢を語る「チョコラ」たちとともに、幸せそうな表情をする松下さん。
「私はアフリカへ行って23年になるんですが、1999年にNGOを立ち上げました。ケニアに行ったのは1996年。今は6歳から16歳までの子供たちが19名ホームにいます。半分ほどはストリートで出会いました。泥酔のような状態にまでなってしまうシンナー中毒の子供たちが多かったです」。
松下さんのもとから巣立ち、自立した子どもたちもいるという。
「ある子は洋裁の技術を身につけて、ある子は電気配線の技術を身につけて、ある子は料理を身につけて。そして知的障害があった子はうちで働いてもらって、お給料を出しています」。
だが、自立を継続するのは並大抵のことではない。4人のうち2人はうちに帰ってきてしまった。
「洋裁の技術を身につけた子は、マリファナに溺れてしまって、今警察です。何回も機会を与えたんですけど、どうしても薬がやめられなかったみたいです。その子が警察から出て来たらもう一度、農園の方で再生を図っていくという風に考えています」。
そんな松下さんがいつも子供たちに言っていることがあるという。それは「あなたがたがどういう状況で生まれようとも、あなたがたの両親はあなたがたを愛しています。私は保護者にはなれるけど親にはなれません」という言葉だ。
「虐待されていたとしても、親を悪く言われるのは嫌なんですね。そのことを認めてあげることが大切。そして、彼らが死にそうになっている時には助けてあげて、自立させるまでが私の仕事だということ。怪我の時、病気の時、何か本当に苦しい時はここは門を開いているあなたのお家なんだから、いつでも帰って来ていいよ、と言って送り出しています」。（AbemaTV/AbemaPrimeより）
