現在の総合格闘技の世界で誰が最強か?というのは、多くのMMAファンの間でしばし議論になるトピックの一つだ。一つは階級を超えた「パウンド・フォー・パウンド」という指標もあるが、「やはりヘビー級が最強」という意見も少なくないだろう。そのような意味では現UFCでヘビー級王者スティーペ・ミオシッチは、「現世最強の男」という表現がふさわしい1人かもしれない。
レスリングやボクシングなど、総合格闘技の世界に各分野の格闘技エリートが名を連ねるようになって久しいが、ミオシッチの経歴を見ると、アマチュアボクシングの頂点の一つゴールデングローブの王者で、レスリングとムエタイの経験者、さらに高校時代は野球、フットボール、レスリングでスポーツ賞を獲得するという、本当の意味でオールラウンドのスポーツモンスターといえる存在だ。
そんなミオシッチの強さを強烈に感じさせたのが先日のジュニオール・ドス・サントスとのヘビー級タイトル戦だ。2014年の対戦では判定で敗れたドス・サントス相手に、常にプレッシャーをかけ続け、強烈なローを突破口に右の一発で楽々仕留め次元の違いを見せつけた。
ジュニオール・ドス・サントスにリベンジを果たし、オーフレイム、ヴェウドゥム、アルロフスキー、マーク・ハントと軒並みヘビー級の大物を倒してきたミオシッチにとってすでに同階級で敵なしという印象だが最後にクリアしなければならない壁は、ケイン・ヴェラスケスだ。ここ数年度重なるケガからタイトル戦の延期を重ね、統一戦では ファブリシオ・ヴェウドゥムに完敗し王座から陥落。
そのヴェウドゥムを倒したのがミオシッチだが、やはりインファイトでの一発で仕留める破壊力を考えると、ヴァラスケスに勝つことで本当の意味での最強の称号が与えられることとなる。またもう1人、成長著しいフランシス・ガヌーがミオシッチを止める可能性のあるファイターといえる。現在ランキング5位、UFCで負け知らずということで、この2人によるヘビー級タイトル戦も実現が待たれる。
そんなミオシッチだが、対戦相手としてイギリス人ボクサーのアンソニー・ジョシュアとの対戦を熱望しているといビックニュースが流れた。4月にウラジミール・クチチコにTKO勝ちし、IBF王座の防衛と共にWBA、IBO王座を獲得したもっか地上最強のヘビー級ボクサーである。
この真の意味での世界最強決定戦となるカード、実現にこぎつけるにはどのようなハードルが待っているのか想像もつかない。もはやファンタジーの域ともに言える対戦カードだが、あまりにも「UFCに敵なし」という状況が続けば、ひょっとするとミオシッチがマクレガーに追随し、ボクシング界に乗り込むという選択肢も生まれるかもしれない。
これまでUFCのヘビー級王者の歴史で2度以上防衛したチャンピオンは存在しない。一発で決まる不確定要素に加え、コンディションをつくりあげる段階で脱落していった王者や薬物問題でその座から降ろされたものなど様々だが、これまでで最も完成度の高いヘビー王者であるミオシッチが、次戦で大台の3度目の防衛に成功するか、そしてその先に何があるのか?大注目である。