もはや単なる総合格闘技の選手というよりは世界的なアスリートとしてその一挙手一投足が注目されている、現UFCライト級王者であるコナー・マクレガー。
現在育児休暇ならぬパートナーの出産休暇でリングを離れて長期離脱中。表舞台にも登場していない状況だが、フロイド・メイウェザーやマニー・パッキャオとったボクサーとの対戦の噂など、休暇中とは思えない頻度でメディアでその名を目にする状態が続いている。改めて「コナー・マクレガーの何が凄いのか?」検証してみたいと思う。
■僅か1年4ヶ月で前人未到の2階級制覇
昨今では、長年マクレガーがUFCを席巻しているという錯覚を持たれている人もいるかもしれないが、実は頭角を現して人々に認知されたのは僅か2年前のことだ。MMA大会「Cage Warriors」でフェザーとライトの2階級を制し、2013年にUFCでデビュー、2戦目でマックス・ホロウェイ(現フェザー級王者)と対戦した際に勝利するも負傷し1年間の戦線離脱など、参戦当初は決して順風満帆ではなかった。
しかし、2014年の復帰後は中位ランカーを1R~2RでKOし続け5連勝。当時の王者ジョゼ・アルドとの対戦かアルドの怪我で流れると、チャド・メンデスとのフェザー級暫定王者決定戦に挑み勝利する。
本当の意味でのブレイクは、フェザー級王者ジョゼ・アルドとの統一戦での衝撃の13秒KO勝ちだろう。10年以上負けなかった絶対王者を一撃で沈め、一躍スターダムにのし上がったマクレガーは、フェザー級王座を一度も防衛せずに、ネイト・ディアスとの「階級を超えたケンカマッチ」2戦でマスメディアを巻き込んだ盛り上がりを作りあげ、チャンピオンなりたてのエディ・アルバレスのライト級タイトルを難なく奪還。僅か1年4ヶ月で前人未到のフェザー、ライトの2階級制覇をやってのけた。
■実力と売上がぶっちぎりでNo.1
総合格闘技の世界で「実力と売上」の両方で一位になることは非常に難しいが、マクレガーは誰も成し遂げなかったことをいとも簡単に成し遂げた。これまでUFCで連続防衛を記録してきた実力者、例えばジョゼ・アルド、デメトリアス・ジョンソン、アンデウソン・シウバ、ジョン・ジョーンズ、ジョルジュ•サンピエールといった名前が挙げられるが、その全員がアメリカでの有料放送PPVのセールスでトップ10圏外という結果だ。
それに対してコナー・マクレガーは、トップ5の中4試合で2015年12月から8月の僅か9ヶ月で75億円近くの売上を記録している。女子MMAの代名詞だったロンダ・ラウジーでさえTOP10圏内では8位ということを考えればマクレガーが「UFCの経営陣に俺を加えろ」と要求するのも納得である。
■実はとんでもない山師かもしれない
今では「最強」の名を欲しいままにしているマクレガーだが実はクエスチョンの部分もある。例えば一度勝った相手のリマッチには応じない。特に13秒で勝利したジョゼ・アルドとのリマッチはタイトルを返上してまで最後までやらなかったこと。暫定王者決定戦の相手、チャド・メンデスが試合までの準備期間僅か2週間での暫定タイトル戦で一方のマクレガーは3ヶ月きっちりキャンプしての勝利で、その後のメンデスの再三におよぶリマッチ要求にも結局のところ応じなかった。
その後のハファエル・ドスアンジョスとの階級を超えた対戦が流れて、プロレス的な舌戦もふくめMMA史上最も興行成績を生み出した「マクレガーVSネイト・ディアス」の2度の対戦、急な対戦者変更で12キロもの体重差の試合はマクレガーにとってはノーリスクの試合だった。
強烈な左パンチと回転系の蹴りに代表される立ち技と打撃一辺倒で、倒された時の能力が未だに未知数という指摘もある。しかしマクレガーが今後自分に不利になりそうな相手との対戦を望まないしUFCもそのような試合を組まないと予想される。エディ・アルバレスから奪ったライト級タイトルにしても防衛戦は組まずに長期休業に入り、今後通常の防衛戦に臨むのかも不明だ。
いよいよフロイド・メイウェザーとの夢の対決が実現となると、このままUFCのリングには2度と戻らずに「伝説」になる可能性もある。過去にも「史上最強」とうたわれたファイターは数多く存在したが、その多くがやはり引き際の部分を見誤り失意のなかオクタゴンを去っている。一連のメイウェザー戦の駆け引きをみるとすでにコナー・マクレガーは「勝ち逃げで幕引き」というエンディングを粛々と進めているようにも感じられる。