6月17日、「UFCファイトナイト・シンガポール」が開催される。五味隆典、佐々木憂流迦、井上直樹ら日本人ファイターが多数参戦することでも注目を集めている大会だが、この試合に再起をかけているのが元女子バンタム王者、ホリー・ホルムだ。
2015年秋「ロンダ・ラウジーをKOした女」として一躍スターダムに登りつめたホルム。しかし翌年3月のミーシャ・テイト戦に敗れ王座陥落、その後もヴァレンティーナ・シェフチェンコに敗戦、さらにフェザー級に階級をかえ挑んだ王座決定戦となったジャーメイン・デ・ランダミーとの戦いにも判定で敗れ現在3連敗中。今回対戦するベチ・コヘイアはバンタム級ランキング11位と中位ランカーということもあり、この試合に敗れるといよいよ後が無い重要な試合となる。
ホルムが不幸だったのは、あくまでも彼女の王者としての最初の目標が「ロンダ・ラウジーとの再戦」にあったことだ。
まだ女子MMAのスタイルが確立されていない黎明期ということもありキックボクシングをベースとしたホルムが柔術をベースにしたラウジーの顔面を蹴り上げKOしたシーンはセンセーショナルだったが、裏を返せば寝技への適応力へのクエスチョンを残したままキャリアは続いていった。実現の可能性を探りながら「ホルムVSロンダ2」は結局実現しなかった。代わりに対戦したテイトのリアネイキッドチョークに沈むという悲劇により僅か4ヶ月でホルム帝国は崩れ去る。
ここからは泥沼だ。バンタム級のトップランカー、ヴァレンティーナ・シェフチェンコに判定で敗れ、続いて不可解な階級を1階級あげ臨んだジャーメイン・デ・ランダミー戦では2R終了後にランダミーの右ストレートを貰い大きなダメージを負った。接戦とはいえ何とも後味の悪い形で元王者は3連敗を喫した。
今回のファイトナイトを前にホリー・ホルムは「今でもロンダ・ラウジーとの再戦を待っている」とリングにいない相手にラブコールを送った。「お金のためじゃない、情熱のために戦う。例え多くの人がビジネスのことしか考えなくても」、ロンダ・ラウジーという大きな目標を失い歯車が完全に狂ってしまった元王者ホルムの再起をかけた試合がまもなく始まる。