1年ほど前まで、将棋で「藤井」と聞かれれば、藤井猛九段(46)のことを誰もが連想していた。藤井猛九段といえば、新たな戦術「藤井システム」を考案しタイトルを獲得、将棋界を席捲した名棋士だ。そんな藤井猛九段に、歴代最多タイとなる28連勝を達成した藤井聡太四段(14)について聞くと「いきなり完成品を出されちゃうと、直しようがない」と独特の表現で評価した。独自の戦術で道を切り拓いた“元祖・藤井”には、日本中の注目を集める中学生棋士は、どう映っているのか聞いた。

 真っ先に口を突いたのは、藤井聡太四段の完成度の高さだ。「本当に強いし、隙がない。将棋が大人。もっと突っ込みどころが欲しいぐらい」と笑った。本来10代から20代前半ぐらいまでは、非凡なものも持ちつつも荒削りな分、負けることもある。経験を積み、学び続けることで、成熟した棋士になる。ところが14歳の天才棋士は、十分に磨かれている。「この年齢でこの強さを身につけた人はいない。いきなり完成品を出されちゃうと、直しようがない」という。むしろその完成度の高さゆえに、独自のシステム考案者としては「この将棋は藤井四段のもの、とわかるような個性がついてほしい」と願うくらいだ。

 実は藤井システムは1度、藤井聡太四段に勝っている。羽生善治三冠(46)が非公式対局で藤井聡太四段と対戦した際、藤井システムを採用し快勝した。「羽生さんは過去にもシステムでいっぱい指しているし、自然に指せる。対局はすごく盛り上がったし羽生さんの完勝だったから、ちょっとだけ自分が勝った気持ちになりました」とはにかんだ。プロ入りから5年目で初めて採用した藤井システム。ボツとなった戦術も多数あった中、苦労の末に編み出したものが、公式戦無敗の中学生棋士に、非公式戦とはいえ通用した。

 独特の勝負感、将棋感を持つ藤井猛九段にすれば、自然体で連勝を続ける藤井聡太四段の精神状態が驚きだ。「私なら、10連勝ぐらいの時に自分で(連勝を)閉じてしまうかもしれない。そろそろ止まると自分で暗示をかけてしまう」と思いを明かした。「あれだけ勝つということは、普通と違う感覚なのでは。自分でブレーキをかけていない。ただ一生懸命やっているだけ。もしかすると恐ろしいほどに“天然”なのかもしませんね」と、ほほ笑んだ。勝負の世界には「怖くなるほど調子がいい」と表現する人は多いが、天才棋士にはそれがない。周囲が大騒ぎするほど、当の本人の心は騒いでいないのかもしれない。

 いずれは実現するであろう「藤井対藤井」について聞くと、「私は負けることが予想される相手とは指したくないんです。だから正直、藤井四段とは今は指したくないですね」とニヤリとした。とはいえ「それで盛り上がるファンもいて、期待は感じるし、声には応えたいです。非公式戦だったら、私は藤井システムを指すことになるはずです」と宣言した。

 新旧の「将棋の藤井」が対決するのは、どんな舞台になるのか。対局だけならず、藤井対談なども聞いてみたいところだ。

(C)AbemaTV

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