■苦境を吐露したTweetに大きな反響

 日本の食卓に欠かせない食材の一つ「納豆」が今、安売りの嵐で危機に瀕している。

 「【悲報】緊急融資断られるorz いよいよ資金繰りが辛くなってきた\(^o^)/」。Twitterでそう吐露した、家族3人で営む小さな納豆メーカー・内藤食品工業(北海道室蘭市)をAbemaTVが取材した。

 1955年の創立以来、地元民はもちろん、北海道物産展などで着実にファンを増やし、親しまれている内藤食品工業。社長の内藤孝幸氏は、朝5時に主力商品「おらが街」の仕込みに入る。前日から水に浸している大豆をひとつひとつ選別するのだ。

 「気になって、割れた豆を取っている。割れると殻も出てきて、食感が悪いかなと思って。他の納豆屋さんはしてないと思うんだけど」。

 およそ30kgの大豆を大きな釜で蒸した後、納豆菌を振りかける。60年間、納豆を作り続けた末に、オリジナルの味を生み出したという。

 「昔、中国産大豆を使っていた時はスーパーさんに週1回ずつ特売していただいて、売り上げもすごく上がった。ただ、大手の納豆屋さんだけがシェアを広げていって、太刀打ちできない」

 大手スーパーでの価格競争を諦め、販売価格が上がっても、100%北海道産大豆のみのこだわりぬいた納豆で勝負することにした。「おらが街」は多くの賞を受賞、地元では有名な商品となった。

 ところが2015年12月、度重なる赤字続きに、ついに銀行から見放されることになった。売り上げを重視した商品作りを提案した銀行は、今年1月には緊急融資も拒否。しかし、このままでは終わらなかったのが広報担当の長女・高橋幸恵氏。

 内藤食品工業の公式アカウントは「【おかんの怒り】銀行さん来訪。どうやら銀行さんは私達に売上を上げるため売上重視の品質低い納豆を作らせる気です。そーですか、そーですか。よくわかりました。『うちらに品質落とした売上重視の納豆を作れってかい!バカ言ってんじゃないよ!皆よ立ち上がれ!銀行を見返すんだ!』#オンボロ商法」とTweet。

 「その当時は潰れるまで時間も迫ってきてるから、いつ潰れてもいいように、やっちゃえと思って自虐ネタで投稿した」。幸恵氏が半ば"やけくそ"で投稿したTweetは反響を呼び、「廃業させてはならない」と全国からおよそ500件の注文が殺到した。製造が追いつかず、一時、ネット販売を停止させたほどだ。

 「資金面は今も厳しい。大手メーカーなりの適正価格、地方のメーカーなりの適正価格、それぞれあるってことを知ってもらいたいなと思う。例えば週に一度でもいいから、地方の納豆屋さんの納豆を手に取ってもらえたら」(幸恵氏)

■"1個で100円儲ける商売"に切り替えっていった日本一高級な納豆専門店

 秋田県・二代目福治郎が製造している「鶴の子納豆」は、日本一高級な納豆として知られている。価格は30g・2パックで540円(税込)と高額だ。しかし、昔から高級路線だったのかというと、そうではないという。

 「安売り競争で、うちも2000年ごろから経営が疲弊して、何か次の一手を打たなくてはいけないということになりました。周りはみんな安売りしてる時に『うちは高級路線で行こう』ということで、今から15、16年くらい前から高級納豆をコツコツ作って販売している」(古谷和久社長)

 古谷社長は「当時は、このままいったら会社が無くなるのは明白だった。昔は一山売って100円が儲かるような商売だったが、小さな納豆屋の強みでもある美味しい納豆をとにかく提供することに特化して、1個で100円儲ける。そういう商売に切り替えっていった。また、"ファン作り"をしてなかったら今うちの会社はない」と話した。

 「一番の違いはタレをつけなくても食べられるということ。塩とかそのままで召し上がっていただきたい」(古谷社長)

■原料、包装材の価格は上昇しているのに、納豆は昔よりも安くなっている

 農産物流通コンサルタントの山本謙治氏は「納豆は豆腐などと同じく、庶民の生活に非常に結びついていて、かつ鮮度も大事なので、毎日配送しなければいけない日配食品。そうなると、小売業者が客寄せのために安く売る商品になりやすい」と話す。

 その一方で、原料である大豆の価格推移を見てみると、11年前、国産大豆は60kgあたり6931円だったのが、3年前には1万4168円と、2倍近くになっていることがわかる。

 山本氏によると、国産の大豆は生産量も少なく、気候の変動で収穫量が乱高下してしまうのだという。にもかかわらず、「豆腐と同じで、納豆の販売価格は上昇していない。普段よく目にする3つが1パックになっている商品は、20年ぐらい前だと158円ほどで売られていたのが、今はタレとからし付きで70円前後で売られている店舗もある。プライベートブランド品になると58円とかもたまに見かける。」として、「包材の価格も上がっているはずなのに、昔と同じ価格、もしくは昔よりも安くなったかもしれない。これはちょっとおかしい」と指摘した。

■消費者が価格差の意味を認識することの重要性

 山本氏は、安ければ安いほどいいというわけではなく、手間暇をかけた内藤食品工業の納豆のような商品に適正な価格を付け、それが流通することの重要性を指摘する。

 「一番重要なのは、消費者がちゃんと納豆の価格差に意味があると認識すること。安い納豆が悪いというではなく、ちょっといい値段のする納豆にはそれだけの価値があるということ。何回かに1回、地方の納豆に手を伸ばしてみる、それでいいと思う。5回に1回くらい、いつもの納豆ではなく、違う価格帯のものに手を伸ばしてみる。『味違うね、よかったね』っていう風に、みんなが安いものばかり買っている状況では、スーパーは安いもの以外はいらないんだなと判断して、あとを全部ごっそり切っちゃう。そうならないようにするためには、消費者の努力も必要だと思う」と訴えた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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