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 東京・山手線沿線にある「提灯殺し」がなくなる可能性があり、ネット上で話題になっている。

 JRが2020年の開業を予定し、工事をすすめている「品川新駅」。山手線と京浜東北線が乗り入れる予定だ。周辺は大規模な再開発が予定されており、完成すると新駅を中心に商業施設やホテルなどが立ち並ぶ東京の一大拠点として生まれ変わる。その一角にあるのが、「提灯殺し」と呼ばれる山手線のガードだ。

 「提灯殺し」の特徴は高さ制限1.5mという低さにある。さらに、山手線をはじめ、車両基地や新幹線の下などを一気に通過するため長さは250m近い。中は薄暗く幅も狭いため、人とすれ違うのもやっとだ。また、ガードの途中から天井がさらに低くなり、より圧迫感が感じられる。実際に測ってみると、このポイントの高さは166cmほどしかなく、タクシーの表示灯もスレスレの高さだ。かつて、個人タクシーの提灯の形をした表示灯が天井にぶつかって壊れてしまったという話が広まり、それが「提灯殺し」の名前の由来になったという。

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 タクシーの運転手は「あんまり通りたくない。スピードが出せないし狭いし、薄暗いので」「雨が降ると冠水する可能性がある」と話し、好んでは通りたくない道のようだ。

 さらに、歩行者も首を曲げて歩かなければならないほどの低さで、頭をぶつけてしまう人もいる。いかにも不便なガードだが、JR線を横断できる道が近くにないため、地域の生活道路として定着している。

 しかし、なぜこのような低すぎるガードができたのか。

 それを解くカギとなるのが、ガード入り口のすぐ横にある運河跡のようなものだ。通る人はほとんど気づかないが、この地が昔どのような場所だったかを示す手がかりになる。

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 今から140年以上前の明治時代初期、このガードがある場所は海の中だった。現在の国道15号線(旧東海道)の目の前まで海が迫っており、現代の地図と比べると沿岸線が大きく異なる。1872年、日本で初めて鉄道が開通した当時の錦絵「東京名勝之内 高輪蒸気車鉄道全図」によると、この付近は陸側に線路をひく用地がなく、やむなく海の上に線路を通した様子が描かれている。そのため、線路によって海から隔たれた細い運河ができ、船が海へ出るための水路が線路の下に作られたという。

 そして、大正時代以降にその一帯は埋めたてられ、水路跡はそのままガード下の道路になったため、低いガードが生まれたそうだ。

 一見すると不便な「提灯殺し」のガードは、日本の鉄道史をいまに伝える“生き証人”と言えるのかもしれない。現在進行中の再開発計画には、「提灯殺し」のガードとほぼ同じ位置に広い道路を作り直し、JR線をまたぐ動線の改良が盛り込まれている。

 鉄道ジャーナリストの梅原淳氏は、「独特の風情があり、残念ではあるが、今後の地域の利便性向上のためには仕方がない。工事によって貴重な遺構などが出てきた場合はぜひ保存を」とコメントした。

AbemaTV/『原宿アベニュー』より)

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