階段の手すりを“極め”にかかるミノワマン。目に入るものすべてを練習に活かす
現在のパンクラスはケージでの“世界標準”ファイトをテーマに、MMAの本場アメリカでの活躍を目指す選手が多数、参戦している。そんな中、7月2日のディファ有明大会(7月2日(日)15時~AbemaTVで生中継)では異色とも言えるカードが組まれた。
かつてパンクラスに所属し、フリーとなってPRIDEやDREAMで活躍したミノワマンが、14年ぶりに古巣に参戦。しかも対戦相手は、同世代の人気選手・近藤有己だ。
近藤もPRIDE出場を果たしているが、所属としてはパンクラス一筋。ミノワマン、近藤ともに41歳。リング&掌底の時代からグローブ着用、そしてケージと時代が移り変わる中、立場は違っても闘い続けてきた。ミノワマンと近藤の対戦は、なんと20年ぶり(2度目)となる。
パンクラス出場、そして近藤戦のオファーについて、率直に「嬉しかった。(パンクラスでやるなら)あの方しかいない、と思いましたね」とミノワマン。闘いのテーマは“歴史”だと言う。
しかし、それは単に歴史を振り返る、同窓会マッチという意味ではない。「パンクラスの歴史、格闘技の歴史、自分の歴史、近藤さんの歴史、見る人の歴史」に刻み込むだけでなく「未来にこの試合の動画を見る人」の心に残る試合をしたいという。つまり歴史を振り返るのではなく、未来の歴史に残る試合をしようということだ。
囲み取材では、無駄のない体の使い方など格闘技に対する独自の境地を語った
ルールについても、あくまで「金網で、今のルールでやるのがいいですね。時代にそう形で」とミノワマン。パンクラスの歴史を感じさせる対決ながら、今を生きるファイターであることを「今からバブルの時代には戻れない。江戸時代にも戻れない」と、ミノワマンらしい言葉のチョイスで強調した。
「マット界でも、金曜夜8時(にテレビでプロレスが中継されていた時代に)戻るっていう意見もありますけど」それは違うと考えている。今はネット動画によって、世界中で試合が見られる。その、今ならではのよさを意識しているそうだ。
「猪木vsアリの映像も、何回も見てしまうじゃないですか。そういう試合になれば」
また、ここ数年のミノワマンは練習に対する取り組み方も変化しているという。6月26日の公開練習は、パンクラス事務所の階段を使ってのもの。ダッシュや踊り場でのスクワットなどを繰り返し、最後はアームロックの要領で手すりを“極め”にかかった。
「今の自分は、地球が練習場なので」
そう語ったミノワマン。ジムで体を動かすことだけが練習ではなく、たとえば睡眠もなんなる休息ではない。「寝る姿勢を作って、頭の中を整理して寝る」。そして朝、起きるのも、MMAでは大切なグラウンドから防御しながら立ち上がる動きにつながる。「毎日寝て起きるわけですから、その練習が1年で365回できることになります」。
ジムでのトレーニングにも無駄なものがある、逆に普段の生活が練習になる。生活すべてが強くなるために使える。そう考えることで練習の効率が上がったというミノワマンは「だから今も、試合まであと5日しかない、じゃないんです。24時間×5日で、え~......何時間ですかね。ちょっと計算はお任せしますけど、かなりの時間がある」とも。
ミノワマンは結婚し、新しい家族ができたことで未来志向になったようだ。また家族のために建築・リフォーム関係の仕事も始め、その作業を通じてより効率のいい体の使い方を意識するようになったという。
「最高の歴史的な試合、奇跡的な試合がしたい」
それが今のモチベーション。決して過去を振り返らず、常に変化することによって、ミノワマンはミノワマンらしくあり続けている。
文・橋本宗洋