現在のマット界で最も勢いを感じさせる団体の一つが、DDTグループの東京女子プロレスだ。興行はこのところ超満員、チケット完売が続き、6月4日の新宿FACE昼興行は、夜のDDTを観客動員で上回った(興行数が違うため単純比較はできないが)。
(1回戦で山下に勝つと、2回戦では辰巳vsまなせの勝者と闘うことになる坂崎(左端)。王者として成長が問われるトーナメントだ)
その新宿大会で、絶対王者と言うべき存在だった優宇を下してTOKYOプリンセス・オブ・プリンセス王座を獲得したのが坂崎ユカだ。キャッチフレーズは“魔法少女”。王者=プリンセスとなったから“魔法のプリンセス”か。
体は小さいが小気味いい動きは団体随一、必殺技マジカル魔法少女スプラッシュは、スワンダイブ式で飛び、そこから旋回して相手の逆サイドに着地するボディプレス。見たら誰もが呆気にとられること確実、マジカルと魔法で言葉が被っているのも納得の大技である。
昨年はスランプに陥り、「自分が嫌いだった」という坂崎。戦線離脱し、「魔法の国」に帰って鍛え直してきた。その結果、魔法というよりもむしろ打撃の打ち合いにも負けない気の強さを武器に加えた印象がある。
坂崎はチャンピオンとして「ベルトを手放さず、しっかり育てて海に帰したい」と謎の目標を掲げる。王者としての第1戦となる6.24王子大会でもマジカル魔法少女スプラッシュで快勝、「このベルトは魔法のアイテム。持っていると強くなれる」と独自の表現で手応えを語った。
(正統派の強豪からアイドル、“闘う屍(ゾンビ)”と個性派多数の東京女子プロレス)
そんな坂崎にとって、試練となるのが東京女子プロレス恒例、夏のトーナメントである『東京プリンセスカップ』だ。総勢13名がエントリー、7月2日の新宿村スタジオ大会で開幕し、7.15横浜で2回戦、7.30新宿FACEで準決勝&決勝が行なわれる。
抽選の結果、坂崎は初代王者の山下実優と1回戦で闘うことに。シード権もなく、チャンピオンながら最も厳しいと言える枠に入った。「無敗の女(優宇)に勝ったと思ったらこれ。なんの陰謀ですか。でも優勝カップはほしい。勝ってベルトとカップを海に帰したい」
坂崎は昨年、山下のタイトルに敗れ、それが出直し修行の大きなきっかけにもなっている。ここで山下に勝つことは成長の証明。とはいえ、できるだけ楽に勝ち上がりたかったというのが本音のようだ。まして山下は、エースながらトーナメント優勝経験がなく「勢いのある坂崎に勝って優勝したい」と意気込んでいる。
さらに2回戦に進出すると、まなせゆうなvs辰巳リカの勝者と対戦することに。坂崎は昨年、辰巳にも敗れており、後輩に借りを返すことも今トーナメントの大きなテーマだ。“筋肉アイドル”才木玲佳やLinQ卒業が決まった“闘うクビドル”伊藤麻希、プロレスを通じて結婚を目指す婚勝軍など個性豊かすぎる面々が登場する東京女子プロレス。しかしこのトーナメントに関しては、勝ち負けが特に大きな意味を持つ。
8月26日には今年2度目の後楽園ホール大会も控えており、そのマッチメイクもトーナメントの結果が反映されるはず。トーナメント優勝争い、新王者・坂崎をめぐる闘いの中で選手たちの力が問われ、そこから東京女子プロレスの新たな流れが生まれてきそうだ。