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 ネット通販大手のAmazonは7月10日、「プライムデー」を有料会員向けに行った。開始直後はホームページに繋がりにくくなるほどの盛況ぶりで、売り上げは30時間で推定2000億円以上(前年比60%増)となった。

 一方、百貨店は年々売り上げが減少し、2016年には最盛期の3分の2以下まで落ち込んでいる。かつては“小売りの王様”とも呼ばれ、賑わいをみせた百貨店。当時の魅力について、「一番新しいものがあるというイメージがあった」(70代・男性)、「見に行くだけでも楽しいので、ぶらぶらしに行く感じもあった」(50代・女性)との声があがる。

 百貨店に打撃を与えたのは、巨大な郊外型ショッピングモールやファストファッションの台頭。さらに追い討ちをかけたのがネット通販だ。「実店舗で物を確認してネットで買う」(40代・女性)という人のほか、「店員さんがすごく熱く(接客を)してくれるけど、それが『買わなアカン』みたいな強迫観念に感じてしまって、逆に『あそこの店員さんがアレやからやめとこ』みたいになる」(20代・女性)と、接客を理由に百貨店に行かない人もいた。

 百貨店の“お客を大事にするサービス”はもう時代に合っていないのか? 18日夜放送のAbemaTV『AbemaPrime』では議論が展開された。

■渋谷ザニー氏「日本は百貨店の開発がとても遅れている」

 日本の百貨店の現状について、自身のファッションブランドを持ち、上海伊勢丹や銀座松屋でポップアップストアの展開をしてきた、ファッションデザイナーの渋谷ザニー氏は、「新宿伊勢丹もリニューアルしてキレイになったが、それを改革したのは数年前。日本は百貨店の開発がとても遅れている」と指摘する。

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 一方で、流通経済大学教授の矢野裕児氏は、「私たちの世代は、百貨店に行くのは相当特別でドキドキ感、ワクワク感があった。品物も百貨店にしかないということもあった。それが、色々なところに同じようなものがあって、ここしかないというものがなくなってきた。もちろん百貨店の品揃えは豊富だしブランドもあるが、それを生かしきれていない」との考えを示した。

 また、渋谷氏はギンザ シックスに出店している「フェンディ」を例に挙げ、「2階、3階からはアクセスできない。1階からしか入れないということは、いわば独立型。世界観という部分では(フェンディが)切り離したいと思っている」と、ブランド側の力が強くなっていることを説明した。

 百貨店の売上高は1991年をピークに右肩下がりを続けており、2016年には36年ぶりに6兆円を割り込んでいる。

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 500カ所以上の百貨店を訪れたという百貨店マニアの放送作家・寺坂直毅氏は、「見た目は普通のビルだが、中に入ると一個一個が街みたいになっているっていう、玉手箱といいますか、宝箱ですね」と百貨店の魅力を熱く語る。

 「アイアム・テラサカ」と名づける“理想の百貨店像”までも考えている寺坂氏だが、「今のままじゃ“絶滅危惧種”になるかもしれない。実際にもう各地方には1軒しかない。やっぱりその価値観。お客さんが足を運んで、包装紙に包んでもらって、紙袋で持って帰るっていうデパートの価値観をもっと皆さんがわかれば」と、百貨店の厳しい現状を訴えた。

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 渋谷氏は、「百貨店に出店すれば海外のお客さんも見てくれる。松屋、伊勢丹のクレジットがつくことによって、僕の商品・作品の信頼度が増す。だけど、今の百貨店は団地の大家さんのような状態で、要は(テナント料の)回収。バイヤーは、セレクティングして、それをデパートの価格として提案するものだと思う。今はバイヤーという肩書きにも疑問を感じる。大家という表現をしたが、それだったら古いビルを新しくするべき」と、自身の立場を踏まえ疑問を呈した。

■在庫リスクを負わないビジネスモデルにデメリットも

 大型ショッピングモールの拡大やファストファッションの台頭によって、百貨店は“オワコン”化してしまうのか。

 渋谷氏は、ショッピングモールも百貨店も「面白い場所に変わりはない」としたうえで、「面白い消費場所として百貨店を求めていたのが、大型ショッピングモールなどに移っていった。東京ディズニーランドの隣にショッピングモールのイクスピアリがあるが、それは高揚した気持ちをそのまま消費に回している。そういう意味では、今の日本の百貨店は何か面白みを見つけないといけない」と話す。

 一方、矢野氏は、小売業界全体でアパレル系にかける比率が減ってきているなかで、百貨店では食品の比率が上がっていることを紹介し、「アパレル系でもデパ地下のように興奮するものを作っていく必要がある。今の消費者は物が欲しいだけではない」との考えを示した。

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 さらに、矢野氏は“委託仕入方式”によるデメリットも指摘する。委託仕入方式とは、百貨店が店内の一角を一時的に無料で仕入れ先(テナント)に貸し、仕入れ先はそのスペースを使って商品を販売。百貨店は商品が売れた分だけ仕入れ先に計上する、百貨店が在庫リスクを負わないモデルだ。

 百貨店にとっては「売れない時のリスクがない」が、矢野氏は「自分の商品ではないので、『どうしても売らないと』という意識がない。百貨店ではなく委託先の出したい商品を並べるので、どの百貨店売場も画一化する。委託先は返品コストを考えて売るので、高い値段で売っている。結果的には、百貨店自らが商品開発をしたり、商品を見つけたりする力が弱まる」ことを懸念した。

 この委託仕入方式は、百貨店ブランドが確立されていることが前提となっているビジネスモデルのため、凋落が囁かれる今の時代においては仇になってしまうという。

■流通経済大学教授・矢野裕児氏「真価が問われているからこそ伸びる可能性がある」

 インターネット通販市場は、2010年の約7兆7800億円から2016年には約2倍の約15兆1000億円に伸びている。このような状況で、百貨店が生き残るために取るべき策とは。

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 渋谷氏は、大阪の大丸が内外装を変えたことで、フランスのあるブランドが路面店を閉めて大丸に出店を予定しているという話を紹介し、「内装・外装を変えるのは、百貨店生き残りの最大のポイント」と指摘した。

 矢野氏は「品揃えが多いという意味ではネット通販も同じ。だが、百貨店だと商品にフィルターをかけて、いいものを集める。そこに価値をつけるということが重要。そして物だけでなく、百貨店という空間を活かして価値付けすることを考える必要がある」との考えを示した。

 最後に矢野氏は「今、真価が問われている。だから伸びる可能性がある」と期待を寄せた。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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