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■警視庁管内における平成の「三大未解決事件」

 『覚えていますね』

 日本を震撼させた「八王子スーパーナンペイ強盗殺人事件」が未解決のまま、22年が経過しようとしている。今、事件現場となった東京都八王子市にあったスーパーナンペイ大和田店の跡地には当時を偲ばせるものは何一つ残っていない。あるのは、情報提供を求める立て看板だけだ。

 AbemaTV『AbemaPrime』では、発生当時からこの事件を追い続けてきた所太郎氏と、事件を振り返った。

 1995年7月30日。住宅街の中にある小ぶりなこの地域密着型スーパーで、パート従業員の稲垣則子さん(当時47)、そして高校2年生のアルバイト・前田寛美さん(当時16)とその友人の矢吹恵さん(当時17)の女性3人が射殺された。

 事件発生当日は、わずか60メートルの距離にある公園で盆踊り大会が行われており、当日非番だった前田さんは、矢吹さんの終業後、一緒に参加するために事務所を訪れていたところだった。

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 現場となった2階の事務所では、前田さんと矢吹さんが中央付近に倒れた状態で、稲垣さんは奥の壁に寄りかかった状態で亡くなっていた。放たれた銃弾は5発。稲垣さんは頭部に2発、前田さんと矢吹さんは粘着テープで手を縛られた上に口を塞がれ、頭部を撃ち抜かれていた。3人とも至近距離から銃撃されており、犯人にためらった形跡はみられなかった。当時、スーパーではバーゲンを開催していて普段の倍以上の売り上げがあったが、金庫には銃弾の痕があったものの鍵はかかったままで売上金は無事だった。

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 事件後に特別に事務所内部の取材を許された所氏は「思っていたよりも意外と狭い。あれだけの狭さの中で女性3人が…。2人の女子高生はいきなりピストルを向けられて、どれだけ怖かっただろうか。悔しさ、悲しさ、どんな思いを噛み締めていたのだろうか」と話す。

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 警視庁の捜査によると、事務所から北東20m地点にいた2人の高校生が銃声のような物音を聞いていた。事件発生時、すでに盆踊り大会は終了していたが、会場にはまだ賑やかさが残っており、公園では花火を上げていた若者もいたため、その喧騒に紛れて拳銃を発射した可能性も指摘されている。

 使用された拳銃は、米コルト社のものそっくりに作られたフィリピン製のコピー銃、スカイヤーズビンガム38口径だと判明した。鍵となったのは、現場から見つかった弾丸に付いていた傷「線状痕」だ。しかし当時、暴力団関係者などに出回っていたスカイヤーズビンガムをコルトだと思いこんでいる人も多かったため、正確な情報が集まらず、凶器の線から犯人に迫ることはできなかった。

 また、住宅街での犯行にも関わらず、目撃証言はほとんどなかった。犯人の侵入から逃走まではわずか10分と推測され、複数犯との説も浮上したが、犯人のものとみられる足跡は1種類のみで、単独犯説も捨てきれない状況のまま、事件は迷宮入りした。

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 女子高校生2人を含む3人の一般市民が銃殺されるという凄惨な事件。所氏は「わが国の銃犯罪のターニングポイントになった事件」だと指摘する。事件が起きた1995年は、1月に阪神淡路大震災が発生したほか、3月に地下鉄サリン事件と国松警察庁長官狙撃事件とオウム関連の時間が続き、世情が騒然としていた時期だったため、本件についても「オウムによる犯行」という憶測も飛び交っていたという。

■関係者「いつか事件が解明される日がくると信じてる」

 犯人の足取りが掴めぬまま時効を迎えようとしていた2010年4月、刑事訴訟法が改正された。

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 重大犯罪の時効が廃止され、1996年の上智大女子学生殺害事件(上智大学の女子学生が東京葛飾区の自宅で殺害、放火され全焼した事件)や2000年の世田谷一家殺害事件(東京世田谷区の宮澤みきおさん一家4人が殺害された事件)と並んで、スーパーナンペイ事件は警視庁管内における平成の「三大未解決事件」とされ、捜査が続けられることになった。

 2008年には実行犯を知る中国人男性の存在が浮上、2015年には女子高生が縛られていた粘着テープから採取された指紋が、その10年前に病死した男性のものと酷似していることが判明するなど、手がかりが全くなかったわけではないが、いずれも決定的な証拠にはならず、今も解決には至っていない。

 この22年間を、関係者はどのように過ごしてきたのだろうか。

 当時、被害者の矢吹さんが通っていた桜美林高校で学年主任を務めていた伊藤孝久さんは「本当に昨日のことのように思える。学校生活も楽しい頃ですよね。非常に活発で、彼女の周りにはいつも生徒が集まっていた。保育士を目指し、ピアノかオルガンを習いに行って、一生懸命頑張っていたようだった」「本当の話なのかどうか、なかなか結びつかなかった。何をどのようにしても理解ができなかった」と話す。

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 事件後の一時期、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のような状態になってしまった伊藤さんを立ち直らせるきっかけとなったのは、生徒たちの声だったという。

 「『先生しっかりしなさい』という言葉が出ていた。子どもたちが、先生それではいけない、と。矢吹さんがなぜ亡くなったのか、もっともっとその事実をしっかり知るべきだと。周りに知らせるべきだと」。

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 伊藤さんは矢吹さんの死を無駄にするまいと、生徒たちとともに「銃器根絶を考える会」を結成、学園祭などで銃犯罪についてのレポートを発表したり、事件が発生した7月30日が近づくと、妻となり、母となった同級生たちと、学校で追悼行事を開催したりしてきた。

 「もう犯人が憎いとかそういうことを通り越して、真相を知りたい。やっぱり真相を知ったら憎しみが出てくるかもしれないが、今はとにかく知りたい。犯人は名乗り出て欲しい。いつか事件が解明される日がくると信じてる」。

 専従捜査員20名の体制で捜査を継続する警視庁。捜査一課の前田裕司管理官は「将来のある女性3名が拳銃で無残に殺害された事件だ。この無念を晴らせるのは、我々捜査官だと自負している。引き続き、事件捜査に邁進して被疑者を見つけ、真相究明することに力を注ぎたい」と話す。噂やまた聞きのような情報でも構わないとして「拳銃に関する情報、犯行をほのめかしているような人の情報。そして目撃の情報。大別するとこの3つについて、幅広く情報を求めていきたい」と、引き続き情報収集、捜査にあたる決意だ。

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 「求む情報!」。事件現場には今も掲げられた立て看板。

 「何度も何度も訪れたが、あの場所っていろんな思いが籠もっている感じがする」と話す所氏。「現場の跡地の立て看板を見て欲しい。冒頭に『覚えていますね』と書いてある。ここに私は捜査員の並々ならぬ思いを感じた。ぜひ、粘り強く捜査をしていただきたいなと。この看板が晴れて撤去される日が来て欲しいなとつくづく思った」と語った。

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 番組には視聴者から「もし今も生きていたら、38歳と39歳、大学を出て就職して結婚して出産して…と思うと悲しい」「この事件は風化させちゃ駄目だろう。所さん、ありがとう」といったコメントが寄せられていた。

 スーパーナンペイ事件に関する情報の提供先は、警視庁八王子警察署特別捜査本部、電話番号は042-646-4240だ。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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