7月21日、後楽園ホールで開催された「G1クライマックス」(開幕戦は7月25日(火)21:00~AbemaTVで放送)。Aブロック第2戦で、棚橋弘至が、バッドラック・ファレにリングアウト勝ちを収め、初の勝ち点2を挙げた。
初戦、ザック・セイバー・ジュニアにまさかギブアップ負け、上腕二頭筋の負傷も癒えないままG1に突入したエースだが、圧倒的なパワー差のある相手に負傷した右腕を痛めつけられながらも、2連敗は免れた。
この試合での棚橋の戦術は今までの彼からは想像できないものだった。サミングや足踏みといった決してフェアじゃない攻撃や、いきなりの丸め込みといった奇襲なども見せた。試合中盤からはファレのパワー系の技を受け凌ぎ、場外へリスク覚悟のハイフライ・アタック。さらにエプロンで放ったスリングブレイドで、ワンテンポ棚橋がリングに上がりリングアウト勝ちを拾った。
試合後「今の俺でどうやってファレを倒すか、そればかり考えていた」と試合を振り返った棚橋。その後の言葉がさらに印象的だった「勝ちへのアプローチは一つじゃないから。枯れた技術の水平思考、幾らでも勝ち方がある、それを俺がヤングライオンのときに目指していた姿でした」
「枯れた技術の水平思考」とは任天堂のゲーム&ウォッチやゲームボーイ、ファミリーコンピューターの十字キーを生み出した横井軍平の言葉である。
最先端の技術ではなく、枯れてしまった技術も水平に考えたときにアイディアが出て来る。要約すると、過去の蓄積されたノウハウで棚橋は、このG1クライマックスを乗り切るという覚悟の言葉でもある。
普段であれば彼がリングアウト勝ちを好んで選択することはないのかも知れない、目潰しや足踏み、相手のスキをついた奇策も然り…
G1は負けも含めて全戦をどう戦い抜きポイントを稼ぐか?が最大のテーマ。休場してもおかしくない右腕の爆弾を抱えながら、若手のように勝利に貪欲な棚橋弘至は、このシリーズで、奇策に秘策と次々と勝ちに拘る面白いプロレスをみせてくれそうだ。