2016年7月26日、神奈川県相模原市の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」が元施設職員の男に襲撃された事件が起こってから1年を迎える。
24日夜放送のAbemaTV(アベマTV)『AbemaPrime』では、“障害者施設の現状”を考えるべく、障害者施設の現場に取材を行った。
■赤字にならない“スレスレの運営”
特定非営利活動法人ShiningPOPOは、知的障害や重症心身障害などをもつ人をケアする施設だ。職員、ヘルパーとともに12人の障害者をみている施設長の赤石澤由紀子さんは、「心身ともに大変な仕事だと思います。例えば食べる介護、飲ます介護。1カ月も2カ月もかかってやっと出来るようになる。慣れきてもそこに危険がともなう。食べ物が気道に入らないまでも、手前まではあるので」と話す。
朝は7時に出社し、朝食を済ませたらスタッフ3人がかりで必ず外に買い物などに出かける。赤石澤さんは「お買い物なんかも、同じ所に行ってるとレジの人が声をかけてくれる。皆さんによく知られてきた実感はあります。そういうのが大事で、直接なにかしてもらうんじゃなくても、障害を持った方たちが自然に自分たちと同じような行動をしているということを知ってもらうことが第一」と、外出する理由を説明した。
しかし、商業施設などに遊びに行った際に傷つくことがあるという。「デパートで、車いすの方が2人、職員が2人ついてコーヒーを飲んでいたとき、男性が『ここはお前たちのような人が来る所じゃない』とボソっと言って通り過ぎて行った」と明かした。
また、24時間365日の介護体制を保つには国のサポートが「全然足りない」と訴える。「とても国からのお金では賄いきれない。工夫をして赤字にならないようすれすれの所で運営している状況です」と赤石澤さんは話した。
■植松被告の主張には全く共感できない
新宿区にある「シャロームみなみ風」は、知的及び身体に障害を持つ人々の生活介護や自立訓練を行っている。現在の入所者は約45人で、常勤60人ほどのスタッフで日夜介護を行っている。
介護の仕事を始めて3年目の青木瑠美さんは、同い年の従姉妹が自閉症を持っており、障害者の問題には幼い頃から関心があったという。青木さんに“仕事のやりがい”を聞いてみると、「時間を守るのがちょっと苦手で、でも以前より全然守れるようになって、どんどん成長していってるんで、よかったなって。そういうときにやりがいを感じます」と答える。
仕事がとても楽しいという青木さん。一方で、腹が立つこともあるという。「おしゃべりできる人は自分の気持ちをはっきり言えるじゃないですか。こっちも人間なので、なんかイライラするなとか、そういう風に思っちゃうときもあります」と明かした。
しかし、青木さんは植松被告の「障害者は人の幸せを奪い、不幸をばらまく存在」という主張には全く共感できないという。「人を元気にさせる人が多いです。みんな元気にさせてくれるっていうか。いてくれて嬉しいです。とっても」と話した。
■「職員の処遇・待遇改善が必要」
シャロームみなみ風の施設長である廣川美也子さんは、世間に訴えたいこととして「障害者支援の仕事が、やりがいのあるいい仕事であること」と話す。
一方で、業界全体の問題として、人手不足や未払いの時間外労働手当てなど労働環境も指摘されている。廣川さんは「対人援助の仕事というのは、キリがなくて、終わりがない部分がある。やればやるだけ新しい課題や、やりたいことが見えてきてしまう部分もあるんです。一方で、業務として決まっているルーチンで行うものもあるので、その業務を人数、時間内でできるようにシステムをしっかりしていくことが大きな課題だと思っています」とコメントした。
この問題に対して、国や行政は何をすべきなのか。廣川さんは「障害者の施設で働き続けられる、働いていくことに生きがいを持てるような職員の処遇や待遇改善」を指摘する。加えて、「障害のある人が地域で暮らしていたり、施設の中で暮らしていたりすることは当たり前で、障害のある人が『障害』というひとくくりの架空の存在ではなくて、名前を持った1人の人として捉えていくことが大事だというようなしっかり教育の現場とか、社会の中で理解を進めていくことが重要」とも訴えた。
事件を起こした植松被告に関しては、「非常に大きなショックだった。障害者の差別をする人や、優生思想を持っている人がいるということは知っていましたが、そういう人が障害者支援施設で働くというイメージがなかったですね。障害者と心を通わせることで自分の心も満たされていく経験があるが、そういったことができない人がいて、行動(事件)に移すことが衝撃だった。喜びみたいなものを確認して、お互いにフィードバックする仕組みをつくっていかないといけない」と話した。
(AbemaTV/『AbemaPrime』より)