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 〝次世代ロボットクリエイター〟として注目を集める若者がいる。

 1995年生まれの21歳で、慶應義塾大学環境情報学部の4年生・近藤那央さんだ。「生きているロボットを作りたい」という、斬新な発想で未来のロボット像を描く彼女は、今月、科学や教育分野で活躍する新進気鋭の科学者たちに贈られる「ロレアル―ユネスコ女性科学者・日本特別賞」を受賞した。同賞はこれまで現代アーティストのスプツニ子!さんや、モデルで国連WFPの日本大使を務める知花くららさんが受賞してきた。綿密な設計が求められる難易度の高い水中ロボットに挑戦する近藤さんの姿勢や将来性が高く評価された。

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 授賞式では「高校生の頃からペンギン型水中ロボットを開発してきた。宇宙が好きで、東京工業大学附属高校に入学して機械を勉強していました。卒業研究としてこのロボットを作り始めたのがきっかけです」と語った。

 近藤さんが開発したそのペンギンロボット〝モノペン〟は、玉川高島屋S・Cで開催されている「南極・北極展」で見ることができる。まるで生きているかのようなしなやかな動きで来場者を驚かせており、子どもたちも「本物のペンギンだと思って最初はびっくり仰天しちゃった。毛が生えている感じもしたし、すごい」と目を輝かせる。

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 子どもたちが揃って口にする"本物みたい"という言葉。ペンギンらしさを追求するため、水中ロボットによく用いられるスクリューではなく、しなやかな羽の動きのみで動くことにこだわった成果だ。

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 「羽ばたきだけで泳いでいるのがかっこいいなと思って。子どもたちが触っても安全なので、触ってもらえる展示ができる」と近藤さん。実はこのモノペンを動かしているのは、ペンギンのぬいぐるみだ。このコントローラーのぬいぐるみには羽と胸に動きを捉えるセンサーが仕込んであり、Bluetoothでモノペンの背中についているアンテナに信号を送信、ロボットの動きをコントロールしている。

■高校時代に仲間たちと工房を結成

 仲間と訪れた水族館でペンギンに心を掴まれてから5年。ロボット製作は高校時代に同級生5人と結成したロボットいきもの工房「TRYBOTS」というチームで行い、電気系統・構造設計・デザインなどを分担し、近藤さんは全体を統括している。TRYBOTSでは、水族館の協力を得てペンギンの観察・研究を行い、実際にモノペンを水族館の水槽で泳がせたこともある。

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 「見たときに『おもしろいな』『新しいな』って思えるようなもの、見てくれた人がびっくりするようなものを作れた時が楽しい」と話す近藤さん。「思い描く、動いている彫刻のようなものを作るにはロボット技術が必要」という考えからロボット製作に踏み出したという。ペンギンロボットは、今のモノペンで8代目になる。最初のペンギンロボットは10分ほどしか泳ぐことができず、ジップロックなどで防水していた。

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 そんな近藤さんの活動拠点は、東京・秋葉原にある、DMMが運営するモノづくりのためのシェアオフィスだ。好奇心が掻き立てられるこの場所には、新しく事業を立ち上げようとする人のためにプロ仕様の設備が揃えられており、世界のアーティストから絶大な支持を受ける、光をコントロールするスニーカー「Orphe-オルフェ-」や、“俺の嫁召喚装置”として一躍話題になった、3Dキャラクターと一緒に暮らせる「Gatebox-ゲートボックス-」など、様々なプロダクトが生み出されてきた。

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 DMM.make AKIBA テック技術顧問の阿部潔さんは「スタートアップの皆さんは、最終的にベンチャー企業を立ち上げて製品を販売してお金を儲けることを目指している。アップルコンピューターも、若者が3人くらい集まって何やら怪しげなものを作っていたのが始まりだった。私どもは、第2、第3のアップルコンピューターを目指す方を支援している」と話す。

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 AbemaTV『AbemaPrime』の取材班がこのシェアオフィスを取材したのは、モノペンを披露する「南極・北極展」開催の4日前。

 作業中の近藤さんは「"10分動けばいいロボット"と"1ヶ月動いて欲しいロボット"は要求が全然違う。ちゃんと動かすには部品の選定だったり、見えない部分の隙間をないようにしたり、平面をどれだけ出すか工夫したり、学ぶことが多い」と話した。

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 近藤さんがとにかくこだわってきた、"羽ばたき"だけで進む仕組み。より自然に、より速く泳がせたいと改良を重ねてきた結果、現在、そのスピードは本物のペンギンが泳ぐスピードの約半分の毎秒1メートルまで実現できた。

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 「本物のペンギンを観察するというのは絶対に必要だと思う。長さとか柔らかさとか、触ってみて作ってはいるが、実際もうちょっとしっかり研究すれば速いものが作れると思う」とさらなる改良へ向上心を覗かせる。

■「その辺の生き物の変わりになるようなロボットがあってもいい」

 近藤さんがライバルとして挙げるのが、番組にもレギュラー出演するペッパーだ。

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 モノペンに触れた子どもたちを見て「ペッパーよりも楽しそうだった」と話し、「ペッパーは一対一のコミュニケーション。技術的にうまく会話のキャッチボールできない。でも、ペンギンロボットは喋らなくて良いので、人間が勝手に『かわいい』ってなる。"超高速インタラクション"が勝手にできている」と説明する。

 近藤さんは今、次なるロボットの製作にも着手している。ロボットの名は「にゅう」。"息ができる"ロボットがコンセプトで、本物の生き物のような体の動きで、呼吸をしているように見せている。製作のきっかけは「普通のロボットは、やりとりをする時はずっと待っていて、何かを言われたら『はい!』と反応する。けど、それは普通じゃないなと思って、自分でどこかに動いたり、近くに寄ったら『おーっ』ってなったりするような表現をしたかった」と話す。

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 近藤さんは「今のロボットは、あまりにも人間の方を向きすぎている。もちろん、人間のために何かをするためのロボットがメインストリームだと思うが、その辺の草とか、生き物の代わりになるようなロボットがあってもいい」と考えている。

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 「コミュニケーションとかホームアシストだったら、わざわざでっかくて高いロボットを置かなくても、GoogleやAmazonが開発している音声スピーカーで十分、という感じになってきている。ロボットに求められているのは、"いきものらしさ"なんじゃないかな」。

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 カテゴリーに縛られず自由な発想を大事にする近藤さんは、今後の進路について「地続きにステップアップしなくていいかなって。技術というよりはデザインとかプランナーのほうが好きだなと思ったので、そういうことが勉強できるような環境に行こうかなと考えている。企業からクリエイター向けの奨学金を採択していただいたので、今年はお金をいただきながら、未来のロボットが含まれているブランドみたいなものを考えてみようかなと。最後に個展をやりたいなと思っている」と野望を明かした。(AbemaTV/『AbemaPrime』2021 未来のテラピコより)


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