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テレビ朝日「けやき坂スタジオ」の副調整室"けやき坂サブ"で(撮影:弘田充)

 テレビ朝日とサイバーエージェントと共同で展開しているAbemaTV。アプリを立ち上げてすぐ目に飛び込んでくるのが、AbemaNewsチャンネルだ。

 24時間ニュースチャンネルとして、定時のストレートニュース「AbemaNews」のほか、"テレビクオリティ"を保った複数のオリジナル番組(いずれも生放送)を制作・放送。テレビ朝日報道局のネットワーク力・取材力と、サイバーエージェントのウェブサービス運営・開発ノウハウを活かし、全国各地の事件・事故現場や記者会見の生中継、そして昨年4月の開局直後に発生した熊本地震など、自然災害情報を視聴者に届けてきた。

 AbemaTVには20以上のチャンネルがあるが、AbemaNewsチャンネルに関しては、株式会社AbemaTV同様、テレビ朝日とサイバーエージェントの合弁会社である「株式会社AbemaNews」が制作している。

 今回、AbemaTIMESでは、テレビ朝日からAbemaTV(AbemaNewsチャンネル)に参画しているプロデューサーたちにインタビューを行い、挑戦への手応えや今後の課題などを率直に語ってもらった。第一回は、『けやきヒル's News』(月曜~金曜12時~)のプロデューサー、平元真太郎氏(33歳)に話を聞いた。

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■本当に自分が行くのかとびっくりした

ーーAbemaTV(AbemaNews)に参画されるまで、テレビ朝日でどのようなお仕事をしていたんでしょうか。


平元:2006年にテレビ朝日に入社し、最初に配属されたのが朝の番組『スーパーモーニング』でした。そこでAD、ディレクター、中継リポーターなどを経験した後、2010年からは政治部に4年間いました。ちょうど鳩山政権の末期から、自民党が政権に返り咲いてから1年間くらいの期間になります。


ーー政治部ということは、国会の前庭などから中継リポートなども?


平元:そうですね。政治家の横でICレコーダー持っているような囲み取材などもしていました。それから『報道ステーション』に異動して丸2年。去年の7月から、AbemaNewsに携わっています。


ーー『けやきヒル's News』での役割はどのようなものでしょうか。

平元:肩書としては「プロデューサー」ですが、小さい所帯なので、地上波のプロデューサーのように全体を俯瞰しているだけでなく、デスク業務もやる、ネタによってはディレクター業務もやる、いわば"プレイングマネージャー"のような感じですね。

 VTRを作るのは担当ディレクターにお願いしているので、私が取材に出かけて行くことはあまりないのですが、特に政治のネタに関しては以前取材をしていた政治家や霞が関の方々に話を聞きに行くことはあります。出演者の方々にリアルな空気感を説明して、お話の"行間"として番組に反映したいなと。

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ーーお仕事の一日の流れを教えてください。


平元:朝6時に起きて、家で『グッド!モーニング』を見ながら、そこから番組で扱いたいなと思うものがあればチェックして。朝8時には出勤しています。放送が正午からなので。

ーー早いですね(笑)。お昼の番組ですからね。


平元:それから新聞各紙に目を通し、地上波のニュースデスクとも話をして、番組のラインナップを決めていきます。そうこうしているうちに、あっというまに午前9時になり、テレビ朝日全体の報道の会議に出て全体の動きを把握し、9時15分ごろから『けやきヒル's News』全体の打合せ、各ディレクターへ取材の指示をしていきます。そして午前10時から、MC(月・火・金は柴田阿弥、水・木は徳永有美)と、日替わりのコメンテーターの方、デスク、そして全体統括と一緒に打ち合わせをすると。みっちり2時間くらい、地上波よりも長いくらいやっていますね。番組は午後1時には終わりますが、オンエアを終えてからのミーティングなどもありますし、突発的に事件・事故、災害が起これば、報道局のスタッフ同様、その後も対応しつづける場合があります。

ーー株式会社AbemaNewsへの異動(出向)は、自ら手を挙げて?


平元:そういうわけではないのですが、会社を挙げての取り組みですし、すごく興味はありましたね。先に参加していた先輩からも面白いと聞いていました。いざ異動が決まると、本当に自分が行くのかとびっくりしましたが(笑)。

ーーネット企業と仕事するのはいかがですか?サイバーエージェントは業界の中でも若いイメージがありますが(笑)。


平元:六本木のテレビ朝日本社での番組制作業務がメインなので、あまり渋谷のサイバーエージェントさん側と接することは多くないのですが、驚きはありましたね。柔軟性だったり、午前中に"やる"と決めたら、午後にはもう着手するようなスピード感だったり。テレビ朝日側の責任者のカウンターパートになるサイバーエージェントさんの責任者が、僕よりも年下の方だったりしますから(笑)。テレビ朝日って新しいこともやっているようでも、開局から60年くらい経つ会社ですから、堅い企業になっているんだなと再認識しました。

■いいサイクルが生まれ始めている

ーーおそらく、多くの方が興味を持っていると思うのですが、テレビ朝日本体や地方局との協力はどのくらい円滑なのか?と。


平元:基本的にはマンパワーや映像を含めたリソースをテレビ朝日で担っています。また、全国に系列局がありますので、地方での話題であっても素材をテレビ朝日に送ってもらうことができます。

 正直言って、異動する以前の私自身もそうだったのですが、「AbemaTVやってるけど、具体的に何をやってるのかわからない、協力しろって言われても、何をどうすればいいの?」という感じだったんです。ですから、"非協力的"というよりも、協力できるけど、何をすればいいかわからないと。

 でも、各部の部長や顔見知りのデスク、先輩記者にお願いし、番組に出演してもらう中で、"こういうことなのか"という理解は確実に深まってきています。テレビ朝日の名村晃一元アメリカ総局長や政治部の細川隆三デスクはお願いするとすぐに出演して解説してくれますし、私が勝手に"Abemaファミリー"と呼んでいる人たちが増えてきましたね。なにか起きた時、すぐにテレビ朝日が抱えている記者やデスクをどんどん活用して、解説をお願いできる。そういう機動力が付いてきています。

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 それだけでなく、各部の記者やディレクターたちからも「こういう企画や、取材した素材があるんだけど、地上波のニュース番組には間に合わなかったから」とか、「尺に収まらなかったVTRがあるんだけど、よかったらAbemaで使いませんか」と声をかけてもらって、実際にオンエアに結びついたケースもあります。取材をした人たちにとっても嬉しいですし、地上波で見るとちょっと長いかなと感じてしまうようなものでも、AbemaTVなら違和感なく見られます。

 あるいは、SNS上では1分間にわかりやすくまとめたニュース動画が人気ですよね。お昼のニュースがイメージしやすいと思いますが、最初にラインナップが並んで、一つずつ紹介していくタイプの番組があります。「ショートニュース」といわれる、あのVTRは基本的に1分で作っているんです。そういう意味では、親和性や見やすさの点で、テレビ局のノウハウをネットに活かせる部分があるのではないでしょうか。

 先の都議選で、AbemaNewsチャンネルは『みのもんたのよるバズ!』(毎週土曜20時~)の選挙特番を放送しました。この時も"AbemaTVが特番をやるなら、テレビ朝日報道局としても情報を入れていこう"という空気になっていましたね。何かが突発的に起きた時に「Abemaではどう展開するの?」と聞かれるようになりましたし、いいサイクルが生まれ始めているという実感があります。

ーとりわけ選挙報道、災害報道などは地方にもネットワークのあるテレビ局にしかできない部分ですよね。


平元:はい。現時点では独立系のネットメディアにはない強さだと思います。直近では九州豪雨の報道の事例があります。未だに行方不明の方もいらっしゃるという大きな災害でしたので、系列のKBC(九州朝日放送)さんに協力頂き、放送地域である九州限定で流していた特別番組をAbemaでそのまま流す許可を頂きました。天候が回復してヘリが飛ばせるようになった際には、上空から見た被害の状況を私が担当している「けやきヒル's News」でお届けしました。県外の方も、KBCさんが撮った映像で現地の被災状況を知ることができる。AbemaTVの強さだなと実感しました。

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■どんな指標を軸に番組作りをするか模索中

ーーテレビには「視聴率」という指標がありますが、AbemaTVの場合はウェブサービスとして、様々な指標があります。番組制作の上で、それらをどのように見ていますか。


平元:テレビの「視聴率」は、みんなが共通で使っているシンプルな物差しなので、わかりやすいと言えばわかりやすい。一方、インターネットテレビであるAbemaTVの番組作りにあたっては、どんな指標を軸に考えるのか、むしろそこから模索する必要があると感じています。例えば、1分でも見てくれた人を優先するのか、それとも、10分間じっくり見てくれた人のことを狙っていくべきなのか。


ーースマホで外でも見られる分、記者会見などリアルタイムの情報へのニーズは高いですよね。


平元:そうですね。スマホで見たいものと、家のテレビで見たいものとの間には、やはり違いがあるんだろうと。藤田社長が発表していたように、AbemaNewsの緊急ニュースで上半期に一番見られたのは、狩野英孝さんの謝罪会見でしたし、次に見られたのは、小林麻央さんが亡くなられた際の市川海老蔵さんの記者会見でした。基本的に、地上波でもみなさんが注目しているものについてはリンクさせているのですが、ネット独特というか、地上波とはやはり違うなという感覚がありますね。

ーー地上波との違いで戸惑うこともあると。


平元:ネタ選びは特にそうですね。例えば『けやきヒル's News』で扱ったのですが、Nintendo Switchソフトの『スプラトゥーン2』発売の際にビッグ ビックカメラの前にできていた行列を撮りに行って流したんです。地上波のニュースではあまり扱っていなかった切り口ですが、やはりこういうのをやると、とても興味を持っていただけました。

ーーその一方で、地上波における視聴率の問題と同じように、"ネットっぽいネタ"というか、"売れ筋"みたいなネタに偏りがちになりすぎてもいけないのではないでしょうか。ニュースのチャンネルとして、伝えるべきところは伝えると。


平元:私自身、政治部や報道ステーションのような堅いニュースを扱う部署にいたこともありますし、そういうニュースが好きだということもあるのですが(笑)、政治のニュースは有権者が投票する時の判断にも関わってくる以上、意義があるし、伝えていきたいという思いがあるんですが、そればっかり押し付けていても…という葛藤がありますね。たとえば共謀罪のニュースなど、賛否両論あって、それらがちょっと込み入った話になってくると、なかなか(笑)。試行錯誤中です。

ーー『けやきヒル's News』を放送している12時台は、地上波でも全チャンネルではないにせよ情報番組があって、食堂なんかでは上の方に置いてあるテレビで、食べながらチラチラと見ている。その置き換えのような感じでしょうか。そうした番組を意識してもいるんですか?


平元:地上波とバッティングしている感覚はあまりないですね。どちらかと言えばNHK速報してきたような大きなニュースには番組中でも追いつきたいですね。その意味でも、前日からネタを仕込めばクオリティは上がっていくのですが、新しいものをなるべく出したいので、放送ギリギリに来たものでも「これで行きます!と」。

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ーーAbemaTV=スマホ=若い人、という中では、なかなかニュースそのものに関心を持ってもらいづらいですよね。


平元:10代、20代の方々にたくさん見ていただけたらと思ってはいるのですが…。まずは、お昼休み、働き盛りの方々がご飯を食べながらが見てくれて、午後から上司や先輩、取引先と話をするときに、「こういう情報、見方もありますよ」と使ってもらえるような視点を提示することはできないかなと考えています。


ーー平元さんも含め、出演者のみなさんの人選も若いイメージがありますが。


平元:そうですね。コメンテーターの方も若い方を中心にお願いしていますね。スタッフも、地上波の人たちが見たら若いと感じるでしょうね。


ーー現時点で感じている課題、これから『けやきヒル's News』、そしてAbemaNewsチャンネル全体で取り組んでみたいことは何ですか。


平元:番組に関しては、もっと多くの方に見ていただける、地上波に負けないものを作れている自負はありますので、まずは視聴者をもっと獲得しなければいけません。お昼といえば、かつては"なんとなくタモリさん見ちゃおう"という"視聴習慣"があったように思います。『けやきヒル's News』も、ついつい立ち上げて見ちゃうんだよねという存在になれたらいいですね。

 チャンネル全体としては、ニュース番組がスマホでこれだけ手軽に見られるメディアは他にないですから、何か起きたらAbemaTVをとりあえず立ち上げようと思ってもらえるような、CNNのような24時間ニュースチャンネルにしていきたいですね。


▶『けやきヒル’sNEWS』は毎週月~金曜日 12:00~13:00「AbemaNews」チャンネルにて放送!

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