
先月、鈴木宗男氏の長女、鈴木貴子衆議院議員が第一子の妊娠を報告したことに対し、「任期中に妊娠なんていかがなものか」「自覚がない」「職務放棄か」といった批判が出る事態となった。なくならないマタニティハラスメント、いわゆるマタハラ。妊娠・出産を理由にした肉体的、精神的な嫌がらせのことだ。また、経済的な問題など、将来の不安を理由に、産まない選択をする女性も増えている。妊娠・出産は、年々ハードルが高いものになっているというのが実態だ。
そんな中、今年第1子となる女児を出産、自身が感じた不安を先輩ママにぶつけ、得られた回答を書籍にまとめたイラストエッセイストの犬山紙子さん(35)。犬山さんも、もともとは子どもを欲しいとは思っていなかったのだという。
「結婚したら子どもは欲しいよね、みたいな感覚で話してる子が周りにいたけど、私はしっくりこなかったというか、結婚=子ども欲しいとは思えなかったし、不安がめっちゃあるって感じで、少数派なのかなと思っていた」。
■「幸せはアピールしてはいけないものという意識がある」
AbemaTV『AbemaPrime』では、現役多摩美術大学学生でデザイナー・実業家のハヤカワ五味(21)さんと犬山さんによるトークイベントを取材した。
自分と同じ20代の女の子たちに、ヒアリングを行ったというハヤカワ五味さん。「2極化していると思った。仕事と出産を一緒には考えられないという子、関心の無い子。ただ、就活で会社のことを知るのと同じように、若いうちから妊娠・出産についても知ることが大事なのではないか」と話す。

「どちらかというとネガティブなイメージをもってる子が多いんだと感じましたね。これだけ自分で食べていくのは大変なのに、子供まで養えるだろうかっていう心配だったり、仕事と両立できるのだろうかっていう心配だったり。周りの友達の意見を聞いていても、出産=時間のロスだと考えてる人がすごく多くて、本当に仕事ができなくなる期間があるのかどうか、出産後どれくらい休むべきなのか、というような、自分のキャリを組み立てる上での参考になる情報が欲しいなって思います」(ハヤカワ五味さん)。
「パートや時短で稼いだお金と、子育てにかかるお金がトントンだったとしたら、何のために働いてるの?ってなりがちなんですが、将来を見据えた先に、子どもが手が離れた時にその経験が生きてきたりするので、赤字覚悟で良いんだと思います」(犬山さん)

結婚・出産に関して後ろ向きになっている若者たち。その大きな原因となっているのが、ネットに溢れる出産に関するネガティブな言葉だという。
犬山さんは「ネットを見た時に『こんだけ辛い』って情報がすごく出てくるから、私も結構それを真に受けてて、産む前まではめちゃくちゃ大変なんだろうなって思っていた」と振り返る。ハヤカワ五味さんも、「のろけちゃいけない、幸せはアピールしてはいけないものという意識がある」と指摘する。

「不安な時に助けられたのは、"つわり いつまで"とかで検索して出てきた、同じ思いをしている人たちブログだった。そういう情報も、もちろん必要だと思うんです。でも、そういう心の叫びに対して、『子育てが楽しい』とか『仕事と両立、なんて幸せなんだろう』ということは、インターネットではとても言いにくいんですよ。私自身、仕事が効率化されてよくなったと思っているし、新しい仕事が入ってくるようになった。お酒が大好きなのに、飲みに行くこともできないし、諦めたこともあるけど、新しくやりたいことも増えた。今、子どもと散歩しているだけで、ずっと幸せな状態。ジャッジするためにも、そういう話を妊娠・出産前に知っておきたかった」(犬山さん)。
■「家族留学」で子育て体験をする学生たち
「家族留学」という、子育てを身近に感じていない若者たちが将来の出産や育児のため、子どものいる家庭に"1日留学"し、育児を実体験するという取り組みがある。参加している若者の多くが大学生で、参加者の7~8割が女性。しかし、最近では男性の参加者も増えてきているという。
今年2月に「家族留学」を経験した男子大学生は「まさにこんなお父さんになりたいなと思った」「結婚生活のロールモデルって自分の親くらいしか見るところがなくて、他にもこういう生き方があるんだなっていうのを実際に見てすごく参考になった」と、刺激的な経験になったと教えてくれた。

パートナーと一緒に参加した女子大学生は「自分がバリバリ働きたいので、もし結婚する人もすごく働いていたら、どうやって子育てする時間を取るのか気になっていて。やっぱり女性1人だけで考えてもしょうがないから、男の人にも考えてほしいと話す。一緒に参加した男性は「うちの母親は専業主婦だったので、専業主婦、家庭にいるという形しかわからない。共働きってどうなるのかなって」と不安を口にした。

2人の子どもを育てる家庭に"留学"した2人。「月に1人10万円くらいかかる」と、認可外保育園の費用が予想以上に高いことなどを知り、新たな不安も生まれた。しかし、「父さんもお母さんも子どもたちも、みんなすごく幸せそうだから、不安もあるけど、前向きになれる」と話していた。
この事業を始めたのは、若者のキャリアプランニングを支援する任意団体manmaの代表、新居日南恵さん。慶應義塾大学の大学院に通う23歳だ。新居さんは「誰かと力を合わせて新しい世代を作っていくということの素敵さとか、楽しさとか、温かさみたいなところをわかってもらって、それを選びたいと思う人が選べるような状態にしていくとことが大事」と話す。家族留学の参加費は保険料込みで、学生1500円、社会人3000円、食事代は別途500円だ。

多くの女性にとって高い妊娠・出産のハードル。犬山さんは、「確かに、生活が苦しい方、夫の理解が無い方は本当に苦しいと思う。全員が子ども産んだほうがいいとは思わないが、要らないと思う人が、『子供は?』と言われて悩まないような社会が良いと思う。自分の人生をしっかり尊重して、こういうふうに生きていきたいという気持ちがあれば、どの選択肢を選んでも幸せになれる」と話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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