8月8日新日本プロレス「G1 CLIMAX 27」横浜文化体育館大会で、Bブロック、オカダ・カズチカが鈴木みのると30分ドローの死闘を繰り広げた。勝ち点13点で単独首位で、優勝決定戦進出を決めるケニー・オメガとの12日両国大会での一騎打ちとなるが、ここへ来てEVILに敗戦、鈴木みのるにドローと過酷なトーナメントの疲労の蓄積が最強オカダを襲いはじめているが、受けに受け凌ぎきる絶対王者の戦いへのこだわりには美学すら感じられる。
過去に2度のG1制覇を達成してきたオカダカズチカ。2017年の夏は過去の最年少優勝となったカール・アンダーソン戦(8月15日(火)19:21~AbemaTVで放送)や中邑真輔戦(8月10日(木)21:00~AbemaTVで放送)の時とは全く違う風景で戦い続けている。
全勝通過を宣言し「強すぎてすいませ~ん」と観客に対して敵対するようなアピールする余裕をみせていたオカダ。実際どの試合でも難攻不落のIWGP王者にブーイングが飛び、それに対して不敵な笑いを浮かべる場面が増えていた、そんなファンの期待をよそに相手の攻撃を十分に受けてからの逆転勝利にはやや余裕すら感じられるものがあった。
しかし8月5日の大阪での対EVIL戦で、1年間続いたオカダの無敗バブルが弾けることとなる。この試合では場外で積極的な仕掛けをみせたEVILが試合のペースを握り、中盤イスを束ねてダークスフォールズで首に大ダメージを与える。この攻撃が後半での両選手の大技の応酬で差を生み出しレインメイカーに対して最後にEVILで絶対王者からカウントスリーを奪った。
そして迎えた横浜文化体育館大会、幾つかあるプロレスの聖地で鈴木みのるとの戦い。EVIL戦の首のダメージは当然ながら癒えずに痛々しくテーピングを巻いた姿でリングにあがったオカダは、前半鈴木軍の介入、そして試合を通して鬼気迫る、鈴木みのるの執拗な首への攻撃を30分耐えきった。今年IWGPのベルトを巡り幾つもの名勝負を繰り広げきたオカダだが、今回の鈴木戦はまさに死闘といえる内容だった。
鳴り止まない「みのるコール」に応え、49歳鈴木が全てを出し切るパフォーマンスは心を打つものがあったが、真っ向から受け続けるオカダの姿はさらに印象的だった。特に残り5分からの、両者が笑顔を浮かべた壮絶な張り手合戦には、IWGPのタイトル戦、G1公式戦といった名目を全てを超越した凄みが感じられた。
星取り表を見ると、ケニー・オメガが12点、オカダが13点とドローでも決勝進出は可能だ。しかし試合後には「全勝だと言ってEVILに負け、このベルトが一番だと、見せつけると言ってNEVERチャンピオンと引き分けて、それ以下何がある? さんざん、このG1で伸びてた鼻折ってもらったよ。ただな、こんなんで調子乗ってるのをやめることはできないから。あとはオメガに勝って決勝優勝して、改めてオカダの素晴らしさを見せつけてやる」とコメント。
この言葉からは、あくまでこの大会一環して見せてきた徹底的に受けながらも勝利する「王者らしいG1での戦い」というテーマを貫徹する強い意思が感じられた。
早々とケニー・オメガが止めるのか、はたまた内藤哲也と棚橋弘至の勝者が一矢報いるか?正直なところ、かなりの数のファンが「強すぎるオカダ」の敗戦を期待して両国大会に足を運ぶことになることが予想される。ここまでくると「最後の敵」はオカダ王朝へもの申すファンかもしれない。そんな人々の心をへし折った先で自身が放った「オカダの素晴らしさ」を見せられるのか?オカダカズチカはプロレスの歴史上でも最大級の難題に挑んでいるように思える。
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