2013年の「G1 CLIMAX 23」(8月12日(土)00:00~AbemaTVで放送)の決勝戦。まれに見る大混戦を制し決勝へと勝ち上がってきたのは棚橋弘至と内藤哲也。
十字靭帯断裂という大怪我を乗り越え涙の中でG1初優勝を果たした内藤哲也は、棚橋弘至に感謝の言葉と共に次なるステップでの対戦に目を輝かせてこう語った。「棚橋さん、あなたと優勝決定戦戦えて良かった。あなたに勝て優勝できたことを凄え誇りに思います。次はもっと大きい舞台でやりましょう」
あれから4年、今の内藤にとって棚橋は「俺の眼中にない、過去のレスラー」と言い放つ。2017年の内藤は、棚橋弘至との望まない抗争を繰り広げて来た。1.4東京ドーム大会で、棚橋に完勝し、IWGPインターコンチネンタル王座防衛に成功。その後もこのベルトの存在意義を否定しながら、提案も通らず自身が望まない防衛カードをこなして来た。5月に再びIC王座の次期挑戦者に再び棚橋弘至が決定。しかも米国遠征中の負傷を理由に棚橋が前哨戦となるシリーズ全ての欠場を発表すると、不満を爆発させシリーズを通しベルトを蹴りながら入場、放り投げる、あげくは鉄柱に叩きつけ破壊という暴挙に出た。
タイトル戦に至るまで、お互いの感情をリング外でぶつけ合いながら突入した、6月の大阪城ホールでの棚橋と内藤のリマッチは、テキサスクローバーホールドで内藤が屈辱のギブアップ負け。ここまでが2017年の内藤と棚橋の因縁ストーリーである。
ここまで6勝2敗の両者。G1に突入してからは、棚橋は6月に発覚した右上腕二頭筋腱遠位断裂は本来は固定3ヶ月の大怪我ということもあり、当然ながら満身創痍の状態で大会に臨み、初戦ザック・セイバー・ジュニアに一本取られる黒星スタート。その後は頭脳プレイや、怪我を押しながらも徐々にパフォーマンスを上げ、敗れた飯伏戦でも紙一重の試合を見せた。
内藤は前半こそ大本命に相応しい横綱相撲を見せたが、その余裕が裏目に出た。バットラック・ファレ戦、石井智宏に土をつけられたが、順当にトップをキープしてここまで来た。現在直接対決を前に、内藤と棚橋どちらが有利かと言ったら圧倒的に内藤だろう。右腕に爆弾を抱えながらここまで来た棚橋は見事だが、静岡での石井戦を見る限りでは、満身創痍で試合後恒例のエアギターも出来ないほど消耗していた。しかし、そんな棚橋だからこそ怖さもある。
一方の決勝にすでに目を向けている内藤にも、口ほど慢心はないように思える。どうしても「内藤のG1」といえば前回のG1クライマックス優勝から、2014年の東京ドームでのメイン剥奪という黒歴史が頭を過る。どんなタイトルよりも内藤が欲しがっているものは2018年のドーム大会でのメインということは、過去の発言からも感じられるし、メインを奪ったその棚橋を倒し、2度目のG1制覇でトップに立つ。そんな皮算用はとっくに頭の中にあると思う。
結果論ではあるが、オカダカズチカとケニー・オメガ、内藤哲也と棚橋弘至、紛れもなく今の新日本プロレスの「ビッグ4」が今年の「G1」最後の4人となった。「新日本の中心に再び戻るんだ」というメッセージを発している棚橋にとっては、内藤戦の勝利で久々のチャンスが訪れるかもしれない。
一方内藤にとってはタイトル戦線こそ足踏みした感はありながらも、2017年の新日本プロレスを牽引して来た自負がある。内藤か棚橋か?勝敗がどちらのルートに行くかで、2017年の秋から2018年の東京ドーム大会の主役争いのストーリーは大きく変わる。そのような意味でも非常に重要な大一番となりそうだ。