これまで数々のドラマを生み出してきた新日本プロレス・G1クライマックス両国国技館大会で、今年も新たな名場面が生まれた。

今年が最後のG1出場と公言していた大ベテラン・永田裕志は、Aブロック公式戦最終日となる11日、バッドラック・ファレと対戦。ここまで、勝ち星がわずかに一つと苦しい闘いを強いられてきた永田だが、練習量に裏打ちされたコンディションのよさはやはり健在。蹴りの一発一発に魂を込めたような闘い方でファレを追い込んでいった。

結果はスリーカウント奪われての敗北。グラネードからのバッドラックフォールという必殺技2連発を食らっては耐え切れなかった。だが、プロレスは試合の結果がすべてではない。勝ったファレは、永田に深々と一礼。外国人選手だが新日本でプロレス人生をスタートさせたファレにとって、永田は師匠とも言える人物。新人時代は永田率いる「青義軍」に所属し、永田と組んでタッグリーグ戦に出場したこともある。

「最後の相手がファレでよかった」という永田は、ファレに思いを込めた敬礼ポーズ。観客は大「永田」コールを送った。場内を「永田」ボードが埋め尽くす場面もあり、勝ち負けのかかわらず、永田がどれだけ観客に愛されているかがあらためて感じられたG1だったとも言えるだろう。

そしてメインイベントでは、勝ち点12で並ぶ棚橋弘至と内藤哲也が対戦。内藤は棚橋の傷めた腕を狙い、棚橋はドラゴンスクリューなどで足を殺しにかかる。一点集中攻撃から大技の攻防になっても、やはり一歩も引かない両者。それでも今の勢いは内藤にあるのか。最後は得意のデスティーノを連発してフィニッシュ。27分41秒のロングマッチを制し、Aブロックからの決勝進出を決めた。

それでも内藤は「だから何」と何食わぬ顔。なぜなら「優勝しないと意味がない」からだ。優勝して“制御不能”になる以前、ファンから認められなかった悔しさを晴らさなければいけない。そして優勝の先には、東京ドームのメインでのIWGPヘビー級王座挑戦がある。前回、優勝した時にはファン投票で王座戦が最終試合から降格させられる屈辱を味わった。

G1優勝、そしてドームのメインで、ファンからの「手の平返し」の喝采浴びてこそ、内藤のブレイクは完成する。ここでは立ち止まっていられないのだ。

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