パンクラスには、さまざまなテーマが存在する。一つは、ケージ(金網)を導入した“世界標準”の闘い。最近では女子王者の朱里、ウェルター級王者の阿部大治がUFCとの契約を果たしている。
その一方でRIZINにも選手を派遣。バンタム級GPにはチャンピオンの石渡伸太郎を送り出す。多様な活躍ができるからこそなのか、パンクラスには数多くの強豪が集い、それだけタイトル争いも激しいものに。
AbemaTVでも生中継される8月20日のディファ有明大会では、マモルvs仙三のフライ級タイトルマッチ、室伏シンヤvs小塚誠司のストロー級次期挑戦者決定戦がラインナップ。元ライト級王者のISAOはアメリカのカイル・アグオンと対戦する。加えて、この大会ではライバル団体と言えるDEEPとの対抗戦も決まった。
ランカー、タイトルマッチ経験者が並ぶ中、大将戦として行なわれるのは佐藤光留vs桜井隆多の一戦だ。
プロレスラーに憧れ、パンクラスでもプロレスラーとして育てられた佐藤はDDTなどで活躍後、現在は老舗の全日本プロレスを主戦場にしており、青木篤志とアジアタッグ王座を保持している。同時にUWF系ルールの大会ハードヒットをプロデュース。そして「プロレスラーの強さ」を証明するため“生まれ故郷”であるパンクラスでも試合を続けている。
佐藤は2014年の大晦日にDEEPに参戦しているが、この時には対抗戦ではないカードだった。今回は大将戦。パンクラスの代表としてアジアタッグ王者がケージで闘うという、佐藤光留にしかできない闘いでもある。
対する桜井は、元DEEPミドル級王者。45歳にして現役バリバリの“鉄人”であり“ミスターDEEP”とも呼ばれる。年齢を重ねても、そのファイトスタイルは真っ向勝負型。しつこくタックルで食らいつき、グラウンドに持ち込んで殴り、そして極める。シンプルだからこそ気持ちが伝わる闘いだ。そんな桜井をして「対抗戦はテンションが上がる」というのだから期待も高まるというもの。
実は、桜井もかつてプロレスラーを目指し、アメリカで修行した経験がある。今年3月にはハードヒットのグラップリングタッグマッチで佐藤とも対戦(佐藤&藤原喜明vs桜井&青木)。今回は舞台とルールを変えての闘いで、これも両者のキャリアを考えれば必然だったのかもしれない。
2人を長く見ているファンには感慨深いこのカード。しかし現役ファイター同士の潰し合いであり、対抗戦で最も重要な大将戦でもある。そのシビアさがどんな光景を生み出すかも、大きなポイントだ。
文・橋本宗洋